映画と本の『たんぽぽ館』

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「邪悪 上・下」 パトリシア・コーンウェル 

2017年01月25日 | 本(ミステリ)
ひりひり感がつらい・・・

邪悪(上) (講談社文庫)
池田 真紀子
講談社


邪悪(下) (講談社文庫)
池田 真紀子
講談社


* * * * * * * * * *

ハリウッド大物の娘の死を警察は事故と判断しているが、
州検屍局長スカーペッタは疑念を抱く。
それはさながら誰かが彼女だけにわかるよう、
死体に証拠を残しているかのようだった。
FBIの家宅捜索など様々な妨害に遭いながら
事件の背後にある秘密を明らかにしていく一方、
愛する姪のルーシーに危険が迫る。(上)

最愛の姪ルーシーをつけ狙う元FBIの女にフロリダ沖で太腿を撃たれ
瀕死の重傷を負った州検屍局長スカーペッタ。
2ヵ月後、復帰した殺害事件現場で不審な動画メールを受け取る。
それはFBIインターン中の若きルーシーの部屋を盗撮した邪悪な映像の数々だった。
宿敵キャリーの執拗な魔の手が再び忍び寄る! (下)


* * * * * * * * * *

早くもあれから一年たちまして・・・。
コーンウェル「検屍官シリーズ」の最新作です。
物語では、前作からおよそ2ヶ月後ということになっています。
スカーペッタは前作で、大腿部に重症を負い、その傷もまだ癒えてはいません。
しかし、相変わらず忙しく仕事をしているスカーペッタですが、
その日、ハリウッド大物の娘の死亡事故現場に赴いた彼女のもとに、
不審な動画メールが届くのです。
それは、過去1997年、まだFBIにいた姪のルーシーを盗撮した動画です。
20年近くを経て、なぜ今頃こんなものが、誰によって・・・?
スカーペッタにはすぐに想像がつくのですが、
それはすでに死んだとされている危ない凶悪犯のキャリー・グレセン以外にはありえません。
その動画は、一度再生するとそのまま消えてしまい、
後で人に見せることもできないのです。
そんなものが送られてきたという証拠も何もありません。
スカーペッタは、ルーシーのことが心配でいてもたってもいられなくなり、
連絡の付かない彼女の元へ急ぎます。


やはり、ついに蘇ったキャリー。
強敵です。
それにしても、スカーペッタの神経がすり減るような杞憂と、
まだいえない傷の痛みに、こちらの神経が参ってしまいそうになります。
そして基本的に彼女は誰のことも信じられないようなのです。
FBIという仕事に忠実にあろうとする夫ベントンや、
我が子のように思い愛している姪のルーシーにすら危惧を感じている。
長年の仕事のパートナー、マリーノにも若干の壁がある
(それはムリもありませんが・・・)
こういう感じに、最近少し疲れを感じてしまう私なのでした。
もう少し、ノーテンキになれないもんでしょうかね。
いえ、そうした少しの油断が命取りだというのはわかりますが。
でも、キャリーの出現により、まだまだこのヒリヒリした感じは続きそうです・・・。
やれやれ。


そんな中で、私が好きなのはスカーペッタのアシスタントであるブライス。
通常CFCにいて、よくスカーペッタとの連絡窓口になったりします。
彼は非常におしゃべりで、
スカーペッタの急ぎの用事のときでも電話口で長々と冗談を交えて余計なおしゃべりに興じます。
スカーペッタは多分にイライラするわけですが、私は好きですねえ・・・。
ここで緊張が緩んで、ホッとします。


このシリーズでは常に最新の"社会にとっての脅威"が示されるのですが、
今回は"データ・フィクション"。
つまり、ハッキングなどによって電子データが知らないうちに改ざんされたりすること。
そんなことになれば、私たちはニセのデータに踊らされ、
通常の市民生活さえおぼつかなくなってしまうかもしれません。
何もかもコンピュータに頼っている今だからこそ、
ありそうなことで怖いですね・・・。


とりあえず、来年の新作のときには
スカーペッタの怪我だけでも全快していてくれるといいな・・・。

「邪悪 上・下」パトリシア・コーンウェル 講談社文庫
満足度★★★☆☆


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