映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

真夜中のピアニスト

2009年12月20日 | 映画(ま行)
真夜中のピアニスト DTSスペシャル・エディション [DVD]

ハピネット・ピクチャーズ

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殺伐と静謐の同居

           * * * * * * * *

トムは、不動産業についています。
といっても実は犯罪スレスレの裏ブローカー。
でも彼はそんな仕事とは裏腹に、
亡き母と同じようなピアニストになりたいという夢を抱いている。
オーディションを受けることに決め、
仕事の傍らピアノのレッスンに通うことにします。
レッスンの教師は中国から来たばかりの若い娘。
お互いに言葉が通じず、音楽だけが二人の交流となる。

薄汚れた裏社会の殺伐とした仕事。
一方、クラシックピアノという精神世界。
この二つを行き来し、揺れ動くトムの心。

いよいよ明日がオーディションという夜、また、危ない仕事の呼び出しがかかります。

ピアノという怖ろしくデリケートな精神世界は、現実を映し出してしまうのですね・・・。

崇高な芸術の世界というのは、きわめて細い糸の上で危ういバランスを保っている。
身の回りの些末ないろいろなことが、その糸を揺らす。
そのように考えると、成功したコンサートなどはほとんど奇跡に近いような気がしますね。

また、意外な結果に落ち込んでゆくラスト。
やはり、非情な現実がどこまでもトムの足を絡め捕っていたのか。
芸術と現実。
同居は難しいものなのかなあ・・・。
そこまで崇高な芸術と縁が無いというのは、むしろ幸せなことなのかもしれません。

殺伐さと静謐さの同居。
不思議に心にしみる作品です。

2005年/フランス/108分
監督:ジャック・オディアール
出演:ロマン・ディリス、ニール・アスルトラップ、オーレ・アッティカ、エマニュエル・ドゥボス



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