映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「女中譚」 中島京子

2013年04月09日 | 本(その他)
知的でチャーミングな女中・・・???

女中譚 (朝日文庫)
中島京子
朝日新聞出版


              * * * * * * * *

90歳を超えるばあさんは「アキバ」のメイド喫茶に通い、
かつて女中をしていた若かりし頃の思い出にふける。
いつの世にもいるダメ男、わがままお嬢様、変人文士先生につかえる、奥深い女中人生…。
直木賞受賞作『小さいおうち』の姉妹小説。


              * * * * * * * *

「小さいおうち」と姉妹小説というのに釣られて読んでみましたが、
主人公が"女中"という職業のほかは特につながりもなく、
またテイストも異なるので、ちょっとやられた~という感じです。
まあ、だからといってつまらないわけではありません。
とは言うものの・・・


アキバのメイド喫茶に現れた90すぎの老女。
彼女が誰にともなく語る、自身の昔話です。
時は昭和初期。
日本は軍国主義へとひた走り、次第にきな臭くなってくる時代。
そんな時代背景を置きつつ、
すみは女中をしたりダンサーをしてみたり、女一人生きていくために必死だったのです。
そんな中で彼女が見聞きした3つの物語。

「ヒモの手紙」ではダメ男を見下しながらも、自身も次第に彼にとりこまれていってしまう女。
ちょっぴり女の底意地の悪さや残酷さをのぞかせながら、
男女の愛憎の複雑さを語っていきます。

「すみの話」は、令嬢と女中のレズビアンのような関係を描きます。

「文士のはなし」では、洋館に住む文士がすみをモデルに小説を書くというお話。

面白くなくはないですが、特別なものもないような・・・と、
読み終えて、解説を読んでぎょっとしました。


この3作はかつて書かれた「女中小説」を下敷きにしているというのです。
林芙美子「女中の手紙」、
吉屋信子「たまの話」、
永井荷風「女中のはなし」。
そういえばもともと中島京子さんは古い作品のリサイクル(?)を得意とする方だったのですね。
・・・とはいえこの3作、私が読んでいるはずもなし。
たぶん、多くの読者の方も同様と思います。
そういう「本歌」を知らない者にとって、この作品の意味は・・・?
なんだか釈然としないのです。
なにも知らずに読んだとして、正直な感想は前述のごとし。
無知がバレバレの感想でしたけどね。


それにしても本の帯にある
「知的でチャーミングな3つの女中の物語」
というのは全然違うだろ!と思います。
この言葉で変な先入観ができてしまったために
余計楽しめなかった気もします。

「女中譚」中島京子 朝日文庫
満足度★★☆☆☆



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