映画と本の『たんぽぽ館』

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ヒトラーの忘れもの

2017年01月26日 | 映画(は行)
極めて一方的な理不尽な任務



* * * * * * * * * *

第二次大戦後のデンマーク、史実に基づく物語です。
実はこの日は他の映画を見る予定だったのですが、
ふいに予定が狂ってそちらには間に合わなくなってしまいました。
代わりに、こちらも見たいとは思っていたものですが、
ピンチヒッターとして拝見。
でもたぶん、こちらを見て正解だったと思いました。



ナチスドイツの敗退で、独立を取り戻したデンマーク。
しかし、海岸沿いに無数の地雷が残されていたのです。
ドイツ軍が連合軍の上陸を阻止するために、無茶苦茶に埋めまくったようです。
さて、その海岸に、捕虜となった元ナチスドイツの少年兵たちが連れてこられます。
彼らはほんの即席の訓練を受けただけで、
地雷撤去に当たることを強制させられました。
彼らの監視役ラスムスン軍曹は、
ナチスを憎むあまり彼らに非常に厳しい態度をとります。
ろくに食料を与えなかったり、
具合が悪い者にも休むことを許さなかったり。

一つ間違えば命を落とすこの緊張の作業を、
少年たちは黙々と続けます。
棒一本で地雷を探り当て、素手で信管を外すのです。
しかしやはり事故は起こります。
爆発で瀕死のある少年は、「家へ帰りたい」と泣き叫ぶ。
彼らはまだ子供なのだと、あらためて認識するラスムスン。
そして、無垢な彼らを見、共に行動するうちに、
次第に彼らを不憫に思う心が芽生えてきます。
まるで父親のように・・・。



ラスムスンの気持ちの変化こそが、本作のテーマです。
戦争で敵対したものでも、ひとりひとり向き合って話せば、
そこに憎しみなどはない。
いつも語られる戦争の愚かさはそこにあります。



ナチスに罪はあるが、この少年兵に罪はない。
デンマークにとっては恥部的なこんな物語を、よくぞ作品にしたものです。
本作自体はフィクションなのですが、
ラスムスン軍曹の最後の行為が、私たちの心を少しすくい上げてくれます。
ある意味、そうだったいいな・・・という願いのような終わり方ですが。



「ヒトラーの忘れもの」
2015年/デンマーク・ドイツ/101分
監督:マーチン・ピータ・サンフリト
出演:ローラン・モラー、ミケル・ボー・フォルスガード、ルイス・ホフマン、エーミール・ベルトン、オスカー・ベルトン
歴史発掘度★★★★★
理不尽度★★★★☆
満足度★★★★★


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