映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「愛なき世界 上・下」三浦しをん

2022年01月15日 | 本(その他)

脳内ドラマが渦巻く

 

 

 

 

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恋のライバルが人間だとは限らない!
洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。
殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、
サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、
個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――
本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。
小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……
風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。

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いつもながら三浦しをんさんの小説は、
冒頭からぎゅっと心をつかまれて物語に引き込まれてしまいます。
本作、「愛なき世界」という殺伐とした題名とは裏腹に、
実に愛に満ちた物語なのでした!!

洋食屋の見習い料理人・藤丸は、
デリバリーのため、すぐ近くの国立T大学の植物学研究室に出入りするようになります。
そしてそこの大学院生・本村に恋してしまう。

親しく話をするようになって少し経った時に、
藤丸は本村に告白するのですが、ことわられてしまうのです。
彼女の愛情は「植物」に向けられているので、人と恋はできない、と。

とはいえ、2人の関係は親しい知り合い、くらいのところで続いていきます。
藤丸は、ひたすら「シロイヌナズナ」を育て、研究に励む本村の応援団です。
気さくな藤丸は研究室の他のメンバーとも話をし、親しくなっていきます。
研究内容は全く理解できずとも、そのことをリスペクトし、
興味を持って話を聞こうとする、さっぱりとしたイイ奴なのです。
仕事も真面目で熱心だし。
オススメなのになあ・・・。

 

まあそんなわけで、本作、男女の恋愛はなくとも、友人愛、隣人愛、研究愛、
そして植物愛に満ち満ちていて、
なんだかほんのり幸せな感じのする作品なのであります。

三浦しをんさんは、本村の研究内容にかなり深く踏み込んでいまして、
その描写はかなり学習しないとできるものではありません。
正直私は読んでも、藤丸くんと同程度の理解しかできなかったのですが、
さすがT大の大学院ともなれば、
これが分からなければしょうがないというレベルなわけですね・・・。

 

さて、私は藤丸くんの「~ッス」という口調や、
本村に対して丁寧言葉を使うあたりで、
どうしても杉野遥亮さんを思い出してしまい・・・。
となれば、本村は杉咲花さん? 
いや、研究に夢中で恋している場合じゃないという感じは、本田翼さんか。
いやいや、私的好みで言えば、ちょっとほんわかさを入れて新垣結衣さんではどうか・・・
などと1人で脳内ドラマを繰り広げてしまいました。

いつかテレビドラマ化映画化になって欲しいです。
あ、松田教授は、松田つながりで松田龍平さんね。

 

「愛なき世界 上・下」三浦しをん 中公文庫 

満足度★★★★.5



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