兄弟の絆と、歌への愛
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南仏の海辺の町。
14歳の少年ヌールは、古ぼけた公営団地に母と3人の兄たちと暮らしています。
母は、寝たきり昏睡状態で、兄弟達が自宅で介護をしているのです。
町が観光客で賑わう夏休み。
ヌールは家計を助けるためバイトに明け暮れます。
夕方、母の部屋の前にスピーカーを置いて、
母が大好きなオペラを聴かせてあげるのも日課の一つ。
兄たちは、そんなことをしても当人には聞こえていないというのですが・・・。
ある日、教育矯正の一環として校内のペンキ塗りをしていたヌール。
近くの教室からオペラ曲が聞こえてきます。
そこをのぞき見たヌールは歌のレッスンをしていた講師サラと出会い、
歌のレッスンに加わることに。
ヌールは歌に夢中になっていきます。
4人兄弟の末っ子、ヌール。
家の生活は楽ではなく、お母さんの介護のために費用もかかります。
ヌールはまだ中学生だけれど、学校なんかやめてしまいたいと思う。
家計を守る長兄は、仕事をさぼって歌のレッスンに通うヌールを忌々しく思っている。
気持ちの優しい次兄は女性観光客を騙してお金を巻き上げるのが商売だし、
すぐ上の兄は悪い連中と付き合い始めて麻薬に手を出したりもしている。
でもこの兄弟はなんとしても自宅で母を看取りたいと思い、
叔父がまるで人さらいのように母を病院へ連れて行ってしまったときには、
力を合わせて病院から母を奪還したりもする。
家族の絆を大事にする兄弟達なのであります。
その母と亡き父が、オペラを通じて知り合い結婚したこと。
だから母がオペラが大好きで、ヌールもオペラをよく聞いていた、
ということが分かってきます。
ヌールは楽譜も読めないし、これまで人前で歌ったこともないけれど、
講師サラは彼の歌の才能に気づくのです。
生きることに精一杯のような状況でも、
時に音楽や芸術はその生きることに力を貸してくれたりもするものなのですね。
決してお金持ちの暇つぶしやステータスの印などではなく。
南仏の海辺の町の光景がまたステキです。
<WOWOW視聴にて>
「母へ捧げる僕たちのアリア」
2021/フランス/108分
監督・脚本:ヨアン・マンカ
出演:マエル・ルーアン=ベランドゥー、ジュディット・シュムラ、
ダリ・ベンサーラ、ソフィアン・カーメ、モンセフ・ファルファー
音楽の楽しさ★★★★☆
家族の絆度★★★★☆
満足度★★★★☆
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