映画の特殊効果に情熱を捧げる女たち
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戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。
脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、
現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。
CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。
特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。
その愛と真実の物語。
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今日の映画には欠かせないものとなっている「特殊効果」。
本作は、その映画における特殊効果に携わる女性たちの物語です。
戦後間もないハリウッド。
「特殊造形師」のマチルダ。
映画に登場する怪物の造形や、俳優の特殊メイクに関わっています。
まだまだこうした仕事では女性は希少。
当時の映画のスタッフロールでは、
特殊メイクなどは請け負った会社名が出るくらいで、名前までは出てきません。
それでもマチルダは、いつかは自分の名前がそこに載って、
映画の中にほんの少しでも自分の爪痕を残すことができれば・・・と思っているのです。
ところが、そのころから登場し始めたのがCG。
出始めのコンピュータは、巨大でしかも処理に時間がかかり、
とても絵を動かすことができるなんて考えつかないような代物でしたが、
瞬く間に進化していきますね。
出始めのCGを見たマチルダは、こんなものには負けないと思うのですが、
もうしばらく後に、とあるCGによるアニメーションを見て、
大いにショックを受けるのです。
実際に手作業で作り上げる特殊効果に、未来はないと絶望し、
映画界から逃げ出してしまうマチルダ。
さてそこから30年ほどが過ぎた現代のロンドン。
今度はCGアニメーターのヴィヴィアンの物語になります。
今や、映画におけるCG使用は当たり前。
けれど、「CGなんか偽物じゃないか」という批判も多いのです。
ある程度周囲から才能を認められているヴィヴィアンなのですが、
そうした批判を受けて、今ひとつ自分の仕事に自信が持てないでいるのです。
そんな時、あの「マチルダ」が創り上げた怪物Xの登場する
往年の名作映画をリメイクする話が持ち上がり、
しかも今度はCGによるものとして、ヴィヴィアンのいる会社に依頼が来た・・・!
現実にはあり得ないものを、いかに現実であるかのように見せるか、
そうしたことに情熱をかけて取り組んでいる人々にスポットを当てた力作ですね。
最近私自身は、CGを使った派手な作品を見なくなってきているのですが、
でも一番初めに「ジュラシックパーク」をみた時の感動は忘れられません。
そしてスタッフロールも、今はイヤになるくらい長くて膨大な人名が流れていきますが、
でもこれこそが一人一人の頑張りの証しということなんですね。
映画好きにとっては、実に興味深い作品でした。
<図書館蔵書にて>
「スタッフロール」深緑野分 文藝春秋
満足度★★★★☆
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