映画と本の『たんぽぽ館』

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銀河鉄道の父

2023年05月09日 | 映画(か行)

やさしい悲しみに満ちている

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門井慶喜さんの直木賞受賞作の映画化。
私は原作をとても面白く読みまして、
しかも本作は宮沢賢治を菅田将暉さんが演じるということで、これは見逃せません!

岩手県で質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)の長男、賢治(菅田将暉)。
家業を継ぐ立場ですが、賢治はそれを拒み、学校卒業後は農業大学へ進学。
人工宝石の製造を夢見たり、宗教に傾倒したり、我が道を突き進みます。
政次郎は厳格な父でありたいと思いながらも、つい甘やかして許してしまう。

やがて、妹のトシ(森七菜)が病で寝込むようになり、
それをきっかけに賢治は物語を書き始めます・・・。

かの宮沢賢治の話なのですが、本作は父・政次郎の視点で描かれているところがミソです。

原作は宮沢賢治の伝記ともいえるくらいに
詳しいいきさつが描かれていたかと思うのですが、
本作は賢治の細々した事情を省き、父と子の有り様を中心に描かれています。
そしてそこがみごとに成功。
約2時間という枠の中で、エピソードを詰め込みすぎずに、
賢治と父の絆のエッセンスを凝縮して現していると思います。

親バカ全開の父。

真面目なバカ息子。

そしてしっかり者の妹。

当時としては豊かな家ではあるのですが、
それはそれで、自分のやりたいことができない不自由さに、がんじがらめになっている。
そしてまた、当時の医学ではどうにもならない病。

基本、悲しい出来事の続く物語ですが、
ちょっとユーモラスでもある父と息子のありようがやさしく胸に迫ります。
全編が「やさしい悲しみ」に満満たされているような気がしました。

それは、私が宮沢賢治を知っている(そう、深くはないけれど)からかも知れませんが、
菅田将暉さんと役所広司さんが並び立っているからこその雰囲気なのではないかと・・・
そんなすごさを感じました。

<シネマフロンティアにて>

「銀河鉄道の父」

2023年/日本/128分

監督:成島出

原作:門井慶喜

脚本:坂口理子

出演:役所広司、菅田将暉、森七菜、豊田裕大、坂井真紀、田中泯

やさしい悲しみ度★★★★★

満足度★★★★★



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