映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ソウル・キッチン

2011年04月11日 | 映画(さ行)
ジタバタして生きてる人たちに元気づけられる



               * * * * * * * *

さほど期待をしていたわけではなかった作品ですが、
とても面白くて、何だかとっても得した気分です。

ハンブルクの郊外、青年ジノスが経営するレストラン、“ソウル・キッチン”。
建物は廃線となった駅舎。
そこを買い取って、彼が自分で改装。
そこそこ広くて、なかなかいい空間です。
ジノスはオーナー兼シェフ。
でも、冷凍物中心のあまり手のかからない品を出す、ごくごく庶民的レストラン。
そんな彼が一人の天才シェフと出会います。
彼は何とも頑固な職人気質。
半端な料理は作らない。
日本にもそんな頑固な板前さんがいそうな気がしますが、
さすがドイツ。やっぱりいるんですねえ、そういうおじさんが。
何だか親しみを感じてしまう。
きちんとした料理など食べたこともない店の常連たちは、
初めのうちそんな料理には目もくれないのですが、
次第にそのおいしさが評判になり、店は大繁盛。



それからまた、ジノスの兄、イリアスも登場します。
なんと彼は刑務所から仮出所。
弟を身元引受人として頼ってやって来たのです。
この兄弟、もちろん演技上の兄弟ですが、どことなく似ていて顔が濃い!! 
この日、この作品の前に「ザ・ファイター」を観たのです。
どちらも男二人の兄弟で、兄がムショ入り。
また、変な符合になってしまった・・・。
でも、この兄弟はいい感じに仲がいいです。
きっと小さい頃は二人して近所のガキ大将として暴れ回っていたに違いない。
そのイリアスはこの店で働いているウエイトレス、ルチアに心惹かれ・・・。
イリアスは仮出所のことを内緒にして欲しいとジノスに頼みますが
つい言葉の端をルチアに気づかれて「白状」するハメに。
ばれてしまったことをイリアスは怒るのですが、
刑務所にいることを「俺は恥じているんだ・・・」とポツリ。
ちゃらんぽらんなようだけれど、こんな風に普通の感覚を持っているところで
すごく身近に感じられます。


一方、当のジノスの恋人ナディーンは仕事で上海に赴任。
スカイプでの会話も味気なく、
彼は店を誰かに託して上海に行こうと思っているのですが・・・。



それぞれの登場人物がそれぞれにジタバタしながら生きていている。
特にジノスは、ロックを愛し、自分の店を愛し、恋人を愛し。
変にしらけずにとにかく一生懸命なところがいい。
でも、それなのに、
腰は痛めるし、恋人には怪しい男の影。
あげくに店は乗っ取りの危機。
さあ、どーなる!!

それぞれの登場人物が微妙に絡み合い、
きちんとラストの収束につながっていくところも楽しいのです。
この作品はドイツが舞台ですが、
今や世界の状況はどこも変わらないと思わせる。
これがアメリカでもロシアでも日本でも、中国の話であってもそのまま通用しますね。
まさに現代を映しながら、変わらず自分なりの生をがんばって生きる、
そういう姿に元気づけられる気がします。

いやいや、皆さんこれはホントに、掘り出し物です!
◎のオススメ。

2009年/ドイツ・フランス・イタリア/99分
監督:ファティ・アキン
出演:アダム・ボウドウコス、モーリッツ・ブライプトロイ、ビロル・ユーネル、アンナ・ベデルケ



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