熱血お仕事小説・・・?
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北海タイムス物語 |
増田俊也 | |
新潮社 |
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平成2年。
全国紙の採用試験にすべて落ち、北海道の名門紙・北海タイムスに入社した野々村巡洋。
縁もゆかりもない土地、地味な仕事、同業他社の6分の1の給料に4倍の就労時間
という衝撃の労働環境に打ちのめされるが…
会社存続の危機に、ヤル気ゼロだった野々村が立ち上がる!
休刊した実在の新聞社を舞台に、新入社員の成長を描く熱血お仕事小説。
『七帝柔道記』の"その後"を描く感動作。
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「北海タイムス物語」。
なんだか地味―な社史か何かの本かと思えば、そうではなくて、
まあ、熱血お仕事小説。
著者が実際にこの北海タイムス社で働いていたことがあり、
おそらくその時の体験が元になっていると思われます。
平成2年。
全国紙の採用試験に全て落ち、かろうじて受かった北海道タイムスに入社した野々村。
はじめての北海道。
4月とはいえまだ雪の舞う寒々しい入社式の日から物語は始まるのですが・・・。
研修期間を終えて彼が配属されたのは「整理部」。
颯爽とした新聞記者を夢見ていたのに・・・。
同期採用のうち一人だけこんな地味なところに回されて、
彼はすっかりやる気を失ってしまいます。
しかもじきにわかってきたのは、とんでもない低給料に、長時間労働。
平成2年の話なのでブラック企業という言い方はまだないのですが、
まさに、ブラックもいいところ。
さて整理部というのは、紙面の割付とか見出しをつけたりするような仕事らしい。
それはそれで、熟練にはとてつもなく時間と経験を要する、
そしてもちろん欠くことのできない仕事なのですね。
ところが野々村の担当についた先輩・権藤は、
野々村を叱るばかりで何一つ教えようとしない。
やるせなく、一人トイレで涙を流す日々・・・。
生活は給料だけでは足りず、サラ金でカバー。
東京の彼女とも別れることになり・・・。
うーん、どんどん読むのが辛くなってきました。
このワーキングプアーぶり、辛いと言うよりは私の中では憤りとなってきます。
というのもこの会社がフィクションではなく、実在したものなので・・・。
創立時はいかにも華々しく、北海道の文化をすら支えた面もあったようなのですが、
様々な事情から大赤字を抱えたこのころ、
内情がそんなふうだとは私も全然知りませんでした。
本作中ではそこまで描かれていないのですが、
結局北海タイムスは1998年に休刊(実質上廃刊)となっています。
物語はあるきっかけを経て、野々村が真摯に仕事に取り組み
急成長を遂げていくわけですが、実のところ給料も労働時間も変わるわけではないのです。
そしていかにもな体育会系のストーリー。
根性だけでは世の中は回らないぞ・・・と私は思ってしまい、
手放しで感動はできませんでした・・・。
図書館蔵書にて
「北海タイムス物語」増田俊也 新潮社
満足度★★★☆☆
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