映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

かそけきサンカヨウ

2022年04月09日 | 映画(か行)

野の花のように、かそけく、けれど凜として。

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幼い頃、母の佐千代(石田ひかり)が家を出て、
父(井浦新)と二人で暮らしていた高校生の陽(志田彩良)。
父が再婚し、義母となった美子とその連れ子、4歳のひなた、
4人の新しい家族の生活が始まりました。
そんな戸惑いの気持ちを、同じ美術部の陸(鈴鹿央士)に打ち明ける陽。

ある日、陽は実の母の水彩画個展を陸と一緒に見に行きます。
自分のことに気づいてもいないような母にショックを受けて、すぐに帰ってしまった陽。

一方陸は心臓に問題があって、激しい運動ができず、他に何か熱中できるものもない。
家はいつも海外出張で不在な父と、不和な祖母と母。
身の置き所のない感情を持て余しています・・・。

 

繊細でみずみずしい感情に揺れる高校生、陽と陸。
それぞれに抱えた、やっかいな問題。
問題といってもそれは通常の生活に困るようなことではないし、
あくまでも自分の気持ちの問題なのだと本人たちは理解しているのです。
そして2人は互いにそんな悩みを打ち明けることもしない。
そして特別に大きな事件が起こるわけでもありません。
それは日常の中でいえばほんの小さな波くらいのもの。
でも若さなのでしょうね。
2人はそれぞれしなやかに乗り越えていく。

サンカヨウというのは白くて可憐な野草ですが、
雨や露にぬれると花びらが透明になって美しい。
まさに「かそけき」と表現するにふさわしい花です。
そんな花みたいに繊細な陽。

でも野草は本来たくましいものでもありますね。
繊細でありつつもしっかりと凜と咲く陽を、
陸は少しまぶしく感じているようです。

そんなみずみずしさに、心洗われるような気がする一作。

 

「かそけきサンカヨウ」

2021年/日本/115分

監督:今泉力哉

原作:窪美澄

出演:志田彩良、井浦新、鈴鹿央士、西田尚美、石田ひかり

 

青春のみずみずしさ★★★★☆

満足度★★★★☆

 



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