作中作で二度おいしい
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『カササギ殺人事件』から2年。
クレタ島でホテルを経営する元編集者のわたしを、英国から裕福な夫妻が訪ねてくる。
彼らが所有するホテルで8年前に起きた殺人事件の真相をある本で見つけた
──そう連絡してきた直後に娘が失踪したというのだ。
その本とは名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』。
それは、かつてわたしが編集したミステリだった……。
巨匠クリスティへの完璧なオマージュ作品×英国のホテルで起きた殺人事件!
『カササギ殺人事件』の続編にして、至高の犯人当てミステリ! (上)
“すぐ目の前にあって──わたしをまっすぐ見つめかえしていたの"
名探偵アティカス・ピュント・シリーズの『愚行の代償』を読んだ女性は、
ある殺人事件の真相についてそう言い残し、姿を消した。
『愚行の代償』の舞台は1953年のイギリスの村、事件は一世を風靡した女優の殺人。
誰もが怪しい事件に挑むアティカス・ピュントが明かす、驚きの真実とは……。
ピースが次々と組み合わさり、意外な真相が浮かびあがる
──そんなミステリの醍醐味を二回も味わえる、
ミステリ界のトップランナーによる傑作! (下)
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アンソニー・ホロヴィッツによる「カササギ殺人事件」の続編です。
その時から2年後。
編集者だったスーザン・ライランドは、
クレタ島でパートナーのアンドレアスとともにホテル経営をしています。
そこへ英国から彼女を訪ねてきた夫妻が、
彼らが所有するホテルで8年前に起きた殺人事件と、
最近の娘の失踪について調べて欲しいというのです。
どうやらこれらは、スーザンが編集者として担当していた
アラン・コンウェイのミステリ「愚行の代償」にヒントが隠されているらしい。
スーザンは依頼を受け、一人英国へ旅立ちます。
ということで、前作と同様に、ここにも作中作が登場するのです。
一通り、この度の事件の周辺が語られた後に、
「愚行の代償」という、全く別の話が挿入されているのです。
これが、名探偵アティカス・ピュントの登場するしっかりとしたミステリ。
ほんと、これだけでも十分楽しめます。
でもそれを堪能した後に、元のストーリーに戻ることになるので、
その時に前のストーリーの記憶が曖昧になってしまっていた・・・、
というのは私だけかな?
でも読み進むうちになんとか思い出しましたけれど。
「愚行の代償」では終盤の名探偵による謎解きシーンは、
関係者全員が集まって、探偵が一人一人の動機や犯行の可能性を揚げていきながら
最後に真犯人を指名するという時代がかったやり方。
スーザンはこの手法は大げさすぎるのでは?と作者アランに意見したことを思い出したりします。
ところが、今回の事件、スーザンは別に探偵ではないのですが
なんとか事件を解き明かして、
関係者全員の前で説明することになってしまうのです。
こうした仕掛けも面白いですね。
そしてまた、スーザンはこの度英国に戻ってきたことで、
アンドレアスとはパートナー解消した方が良いのでは?という思いに駆られるのですが、
このラブストーリーの行方はいかに?という別の楽しみもあって、
実に興味のタネがちりばめられた本となっています。
「ヨルガオ殺人事件 上・下」アンソニー・ホロヴィッツ 創元推理文庫
満足度★★★★☆
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