あるべき自分と、ありのままの自分
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ドイツ作品にして、樹木希林さん出演の初めての海外制作作品、
そして樹木希林さんの遺作ということになります。
なかなか貴重です。
ミュンヘンに暮らすカール(ゴロ・オイラー)は
酒に溺れ、仕事を失い、妻は子どもを連れて家を出てしまっています。
絶望と孤独の縁にいるカール。
そんな彼のもとにユウ(入月絢)という日本人の女性が訪れます。
彼女は10年前、東京を訪れていたカールの父・ルディと親交があったのです。
二人でルディの墓参りに行ったりするうちに、
カールは次第に彼女に惹かれていきますが・・・。
ネタバラシではありますが、ユウはどうやら生身の人間ではないらしい、
と、私たち視聴者もカールも気づいていきますね。
けれど怖さはない。
でも、カールの孤独な心がユウを呼び寄せたのであり、
彼女と親しくなることはやはり危険なことではあったのです。
そうして、カールの身の上に大変なことが起こる・・・。
カールの絶望の根源は、彼自身が「~でなければならない」「~であるべきだ」
という理想像に、がんじがらめになっていたためだったわけです。
全くそういう理想像になれない自分。
それは家族との関係で余計に際立ちます。
でも彼は彼自身の体の変化で、「あるべき自分」と「ありのままの自分」に
折り合いをつけることができるのです。
一段落ついたところで、カールは日本を訪れ、
やがてユウの祖母だという女性と出会うことになります。
それが樹木希林さん。
いや、サスガにこの風格。
普通の気さくな老婆のようで、
しかし、あるところでの感情の表出の仕方がタダモノじゃない。
もし、カールが“変化”しないままこの地を訪れていたなら、
彼はそのまま茅ヶ崎の海に沈んでいたかもしれませんね・・・・
本作に描かれる日本は、少し謎めいた江戸の風土が残っている日本。
日本人にはできない発想かもしれません。
ユウが浴衣と洋服を重ねてきていたのもユニークなのですが、
カールの着る浴衣もなかなか良いですよ。
<シアターキノにて>
「命みじかし恋せよ乙女」
2019年/ドイツ/117分
監督:ドーリス・デノエ
出演:ゴロ・オイラー、入月絢、フェリックス・アイトナー、フロリアン・ダニエル、樹木希林
不思議の国日本度★★★★☆
満足度★★★★☆
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