映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

そして、私たちは愛に帰る

2011年04月29日 | 映画(さ行)
ドイツ・トルコ、それぞれの親子愛



            * * * * * * * *

「ソウル・キッチン」に魅了された私は、
さっそくまたファティ・アキン監督作品を見てみました。
監督はドイツのトルコ移民2世。
そういう出自の事情が色濃くこの作品に現れています。



ここには三組の親子が登場します。
年金暮らしの父アリ。
トルコからの移民です。
なんと彼は娼婦(彼女もトルコ人)イェテルと同居を始める。
その息子ネジャッドは大学の講師で、
娼婦と暮らし始めた父に驚きあきれるけれども、
特に彼女に偏見がないのはいい感じです。
彼女は学生の娘アイテンに仕送りをするためにお金を稼いでいるというのですが、
現在、その娘からの音信が途絶えているのが気がかりだという。

さて、場面は変わって、その娘アイテンの方です。
彼女はトルコで反政府運動に加わっていて、
危険を逃れるためにドイツにやって来ました。
母を頼ってきたのですが、その母も娘に靴屋で働いているなどと偽っていたために、
探し当てることができません。
お金もなく困り果てていたところをドイツの女学生ロッテに救われる。

そのロッテの家にすまわせてもらうことになったアイテンですが、
ロッテの母スザンヌはそれが気に入らない。
ところが密入国がばれたアイテンはトルコに強制送還され、
反政府運動に加わったことでトルコの刑務所に収監されてしまう。
アイテンを心配したロッテはイスタンブールへ・・・。



トルコとドイツを行き来しながら、
それぞれの愛のあり方を浮かび上がらせていきます。
突然にあっけなく訪れる人の死。
そして、もつれていく人物関係。
もどかしいすれ違い。
けれど、描写は実に淡々としていて静か。
その淡々とした描写の中から、
次第に人が人を思う強い気持ちがにじみ出てきます。
親が子を思う気持ち。
子が親を思う気持ち。
それは憎しみにも勝る。
どことなく感じる無常感は、日本人のそれに通じるような気もしました。



2007年、カンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞受賞。
うなってしまうような登場人物の交差。
変にうまくまとまらない妙。
うん、さすがです。

そして、私たちは愛に帰る [DVD]
ファティ・アキン
ポニーキャニオン


「そして、私たちは愛に帰る」
2007年/ドイツ・トルコ/122分
監督・脚本 ファティ・アキン
出演:バーキ・ダブラク、ハンナ・シグラ、ヌルセル・キョセ、トゥンジェル・クルティズ


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