映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

灼熱の魂

2012年03月14日 | 映画(さ行)
呪詛なのか。祝福なのか。



                   * * * * * * * * * *

こ、これは・・・!
以前から私は年末に「マイベスト映画」なんて企画を立てたりはしないのですが、
もし、やるとすれば、早くも“ベスト1決定!”というくらいの衝撃作でした!!!


今作は、レバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドによる戯曲を映画化したものだそうで、
そちらの舞台劇の方も気になりますが、まずはこの映画。




周りに心を閉ざして生きてきた、中東系のカナダ人、ナワル・マルワン。
彼女は、彼女の双子の姉弟、ジャンヌとシモンに不思議な遺言を残して亡くなります。
彼らの兄と父を探しだして、手紙を渡すようにというのです。
父は早くに亡くなったと聞かされ、また、兄の存在など聞いたこともなかった二人は、
呆然としながらも、母の母国を訪れ、
母の数奇な過去をたどり始めます。
そこで初めて知った母親の過去。
実は母は、ある場所で“歌う女”と呼ばれ語り継がれるほどの女性だった。
その国の内乱の中で、信念を貫き、強く生き通したのち、カナダに渡ったのです。
そして姉弟二人の出自が判明するところも、かなりの衝撃なのですが、
その先に更に驚嘆に値する事実が待ち構えています。


この作品は、最後に明かされるその真実を追う“ミステリ”。
しかし、通常のミステリで謎が解き明かされた先には、
大団円なり、カタルシスなり、なんらかの心の落ち着き先がありますよね。
ところがこの作品の“答え”は、私達の意識を混乱の渦に巻き込むのです。
愛なのか。憎しみなのか。
神の采配か。運命のイタズラか。
悲劇なのか。祝福なのか。
こんなことが・・・・。
その答えだけを取り上げれば、あまりにも陳腐かもしれません。
けれど今作は、そこに至るまでに大変に痛く重い歴史と人生が横たわっている。
そこがうまく描かれているからこそ、私たちは結末でリアルに心うごかされるのです。
感動と言うよりは驚愕。
・・・しかし、深い。



「灼熱の魂」とは、よく言ったものです。
結局は、たぐい稀な強く熱い魂を持ったナワル・マルワンの物語です。
彼女の“憎悪と暴力の連鎖”を断ち切ろうとする祈りが聞こえます。
決して派手に宣伝されない作品ですが、
少しでも映画が好きと思う方は、ぜひご覧下さい。
映画ってやっぱり面白い!! 
未だに改めてこんなふうに思えてしまう。
映画の世界は奥が深いですね。

「灼熱の魂」
2010年/カナダ・フランス/131分
監督・脚本:ドゥニ・ビルヌーブ
出演:ルブナ・アザバル、メリッサ・デゾルモー=プーラン、マキシム・ゴーデット、レミー・ジラール


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