映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

バトルシップ

2013年08月11日 | 映画(は行)
見所満載。楽しめます。



* * * * * * * * * *

ユニバーサル創立100周年記念と銘打って公開されたこの作品。
鳴り物入りだった割に、評価が低かったような記憶があります。
見ようと思っていたのですが、
そんなわけで見ないで終わってしまっていました。
それでこの度レンタルで見たわけですが・・・、
意外と面白かったな、というのが正直な感想です。



ハワイ沖で世界各国合同で艦船の訓練が行われていました。
そこに突然エイリアンの母船が出撃し侵略を開始。
連合艦隊VSエイリアンの壮絶な戦いが繰り広げられる、というわけです。
まあ、そこら辺のアクションは、私としてはあまり興味は感じられないながら、
ハリウッド映画らしい単純でわかりやすい人物関係が、
気楽に見るにはうってつけ。
スクリーンで見るには物足りなかったかもしれませんが、
お茶の間で見るには上出来。
そんな感じです。


主人公となるアレックス・ホッパー(テイラー・キッチュ)は、
出来のいい兄にコンプレックスを持っています。
能力はありながら、それをうまく使うことができないふうで、
何をやっても順調には行きません。
ナンパしようとした彼女が「チキンブリトー」を食べたいといえば、
閉まった店に無理やり侵入してもそれを手に入れようとする、
そういう常識はずれで、無茶苦茶なところがあるのです。



その彼女の父は米艦隊の提督で、
落ちこぼれの彼は、結婚の承諾を父親の前で口にすることもできない。
まあ、そんなダメ男が、
この戦闘で思わぬ力を発揮していくというところがミソ。
又、彼のライバルは日本の海上自衛隊指揮官ナガタ(浅野忠信)で、
二人は反発し合いながら次第に友情を深めていく、というのもいいです。
浅野忠信、カッコイイです。

また、洋上で奮闘するアレックスと並行して、
陸では彼女のサマンサが、また別の戦いをしているというのもいい。



レーダーが使えないまま、手探りのような戦いを繰り広げていくのもけっこう面白いです。
このシーンでは、子供の頃に遊んだボードゲームを思い出したのですが、
なんのことはない、その「バトルシップ」ゲームこそが
本作の発想の元だったようです。
なるほど、納得、納得。
そしてまた、最後には「展示品」の大昔の戦艦ミズーリを
退役軍人たちの力を借りて動かす、といったところも面白い。




ほんと、十分面白いんですけどね。
詰め込みすぎでしょうか?

バトルシップ [DVD]
テイラー・キッチュ,浅野忠信,リーアム・ニーソン,リアーナ
ジェネオン・ユニバーサル


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テイラー・キッチュ,浅野忠信,リーアム・ニーソン,リアーナ
ジェネオン・ユニバーサル


「バトルシップ」
2012年/アメリカ/130分
監督:ピーター・バーグ
出演:テイラー・キッチュ、アレクサンダー・スカルスガルド、リアーナ、ブルックリン・デッガー、浅野忠信
メカ、エイリアンのデザイン★★★☆☆
わかりやすい人物関係★★★★★
満足度★★★★☆


「人生教習所 上・下」垣根涼介

2013年08月10日 | 本(その他)
変わらない自然。変わりゆく人々。

人生教習所(上) (中公文庫)
垣根 涼介
中央公論新社
 
人生教習所(下) (中公文庫)
垣根 涼介
中央公論新社


* * * * * * * * * *

新聞に不思議な広告が掲載された。
「人生再生セミナー 小笠原塾」。
実態は謎だが、そうそうたる企業が後援し、
最終合格者には必ず就職先が斡旋されるという。
再起をかけて集まってきた人生の「落ちこぼれ」たちは、
期待と不安を胸に抱き、はるか小笠原諸島へと出航する!
迷える大人たちのための、新たなエール小説。


* * * * * * * * * *

「人生再生セミナー」などというと
やや宗教めいて怪しい感じがしてしまうのですが、
その点では本作は全然心配ありません。


このセミナーに応募し、本作の中心人物となるのが、
次のようなメンバーです。

森川由香(29歳)フリーライター。
マイナー思考で仕事と対人関係に悩む。
体重超過気味。

柏木真一(38歳)かつて、暴力団の筆頭若頭。
背中に派手な彫り物・・・。
現在無職。

浅川太郎(19歳)東京大学2年。
今は休学し、実家に引きこもっている。


研修場所は小笠原諸島父島・母島。
彼らはそこで、人生を生きるコツ、人と付き合うコツなどの講義を受けると共に、
この島の歴史を学んでいくことになります。


小笠原諸島といえば、2011年に世界自然遺産に登録されたということで、
その独自の植生や生き物たち、美しい風景などは盛んに紹介されていましたが、
お恥ずかしい話、私は歴史については何もわかっておりませんでした。
太平洋戦争で、随分翻弄された島であったのですね。
もともと日系、欧米系、色々な人達が住んでいたようなのですが、
戦争が始まると皆一時退去。
戦後島はアメリカ海軍占領下で、
欧米系の人のみ帰島が許可される。
文化的にはほとんどアメリカで、
一般的にも英語を話していたといいます。
島が日本に返還されたのは昭和43年。
その時から、日系人も島に戻り、
突然、文化も日本へ急旋回。
学校でも日本語で、日本式の教育を受けることになる。
その時の急激な変化で、
戸惑い、又不満を感じた人たちも多かったとか。


今、島はもともと住んでいた人たちと、
島に憧れ、よそから来て住み着いた人、
住み着こうとは思うけれど仕事もなくバイトしながらなんとなく過ごしている人、
そんな具合に分類されて、
これまでにない、新しい島の文化を築いているといいます。


美しい自然をたたえた島は変わらずにそこにあるけれど、
人々の様子は時代とともにどんどん移り変わっていくという・・・。
大変興味深いことでした。
このことを知っただけでも、意義があります。
これを踏まえて、是非一度は訪れてみたい・・・という気持ちになりました。


さて、セミナーの受講者たちは、
受講内容によってというよりも、互いの付き合いの中で
色々なことを得ていくように思われました。
始めは全然打ち解けなくて、
お互いに近寄りたくない人・・・というような印象を持っていたりしたのです。
けれども、日々共に過ごしているうちに
いろいろな事が起こります。
お互いを知り、仲間意識が芽生え、
相手のいいところが見えてくるとともに、
自分のダメなところも見えてきますね。
まさに、人としての教習所です。
大事な話を非常に楽しく読めてしまう。
やっぱり垣根涼介作品でした。

「人生教習所 上・下」垣根涼介 中公文庫
満足度★★★★☆

終戦のエンペラー

2013年08月09日 | 映画(さ行)
ハリウッドに日本史を学ぶ



* * * * * * * * * *

1945年8月、日本が連合国に降伏。
激烈な戦争の終結です。
ダグラス・マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)元帥率いるGHQが日本に置かれ、
米軍統治が始まる。
日本文化を研究していたボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)准将は、
太平洋戦争の真の責任者は誰なのか---
つまりそれは天皇なのではないか---
調査に当たるよう、マッカーサーから司令を受けます。



史実を元にした作品で、
終戦後の天皇の処遇について、このような経緯があったというのは事実なんですね。
68年を経た今、リアルタイムで当時のことを知る人も少なくなってしまいました。
私とて、戦後の生まれですので、
当時の天皇へ向ける日本人の思いというものを
本当に理解しているかどうかあやしい。
だから本作は、日本人をよく知らないアメリカ人を対象に作られたものでありながら、
同時に戦後の日本人へ向けたメッセージであると言っても良い気がします。


「耐え難きを耐えよ・・・」その天皇の言葉で、
日本人は皆抵抗することなく米軍を迎え入れた。
しかし、ここで天皇を戦争責任者として処刑などしたら、反乱が起こるに違いない。
日本を知るフェラーズはそう確信します。
そのため関係者の話を聞き、
「天皇が戦争の首謀者ではない」証拠を探そうとします。
日本人は何事も白黒付けたがらない。
すべてグレーである、と、彼は言います。
その言葉の通り、誰も天皇を責任者と指差すことはない。
どちらとも言えない・・・。
よくわからない・・・。
このような中で、フェラーズが出した結論というのは
やはり日本的なものであった、
というところが面白いですよね。


今作はフェラーズがここまで日本に思い入れをする理由を、
日本人の恋人アヤ(初音映莉子)の存在として語っています。
二人は学生時代にアメリカで出会ったのですが、
エキゾチックな東洋の美人に惹かれていくフェラーズ。
過ぎた恋の思い出は美しいですねえ・・・。



というわけでまあ、カビ臭い歴史だけではなく、
見どころもあるので、女性でもOKですよ。
常には珍しく、中高年の、しかも男性が多い場内でした! 
やはり、歴史ですね。
それにしてもマッカーサーの降り立った東京の光景。
見渡す限り焼け野原です。
色々な映画作品を見てもやはりこんなふうですね。
それから68年。
よくぞここまでになったものです。
やはりこの8月に見るのにピッタリの作品でした。



2013年/アメリカ/105分
監督:ピーター・ウェーバー
出演:マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、初音映莉子、西田敏行、片岡孝太郎
歴史発掘度★★★★★
恋愛度★★★★☆
満足度★★★★☆

マリー・アントワネットに別れをつげて

2013年08月07日 | 映画(ま行)
シドニーが王妃に向ける視線の意味は?



* * * * * * * * * *

マリー・アントワネットの朗読係、シドニーの物語です。
1789年7月14日。
往年の「ベルばら」ファンとしては忘れもしない、
フランス革命の発端となったバスチーユ監獄へ民衆による襲撃があった日、
ちょうどこの日から物語は始まります。
しかし、その朝、
マリー・アントワネットはいつものように退屈を持て余し、
ベッドに横たわったまま、
シドニーを呼びつけて本を読ませたり、
ドレス生地の見本帳を見ていたりします。
危機的情報が入るのはあまりにも遅く、
又本人にも危機意識がまるでない・・・、
まあ、そういう世界です。



しかしさすがに、次第に緊張を呼ぶ情報が入り始め、
王宮関係者へ「ギロチンリスト」が突きつけられるに及んでは、
宮廷中戦々恐々となってきます。
そのころ、マリー・アントワネットはポリニャック夫人に夢中。
リストには王妃はもちろんのこと、ポリニャック夫人の名前も上位に入っています。
そこでマリー・アントワネットは、
シドニーに、ポリニャック夫人の身代わりとなるよう命を下しますが・・・。



興味深い時代の物語なので見てみました。
華やかな王宮の裏側に、
使用人たちが忙しく行き来する通路があったりするのが興味深いですね。
屋敷の屋根裏部屋が使用人たちの居住区となっているというのは、
他の色々な作品にも出てきます。
当時のお屋敷やお城ははじめからそのような二重構造で作られていたのでしょう。
もっとも、私が見たことがないだけで、
今もデパートやホテルなど、
完全にお客側とスタッフルームがわかれているわけですよね。
裏側を映し出す作品がめったにないというだけのことか。



シドニーは頭も良くて、ちょっと冷めた眼でマリー・アントワネットを見ているのかな?
と思えていたのですが、
どうも設定としては、王妃を敬愛し恋焦がれている、ということだったようです。
・・・なんだか釈然としません。
ポリニャック夫人などと色恋沙汰を起こしている王妃のどこがそんなに好きだったのか、
どうして憧れるようになったのか、
そういうところをもう少しきちんと語って欲しかったような気がします。
・・・そう思うのは、
「ベルばら」ファンとしてもマリー・アントワネットを
ちっとも好きになれなかった私なので、しょうがないかな。
ただ王妃で、美しいから、ではねえ・・・。



とはいえ、ラストは、息詰まるような緊張感があり、
なかなか良かったです。
アントワネットの哀れなその後について、
あえて触れなかったのもよろしい。

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「マリー・アントワネットに別れをつげて」
2012年/フランス・スペイン/100分
監督・脚本:ブノワ・ジャコー
原作:シャンタル・トマ
出演:レア・セドゥー、ダイアン・クルーガー、ビルジニー・ルドワイヤン、グザビエ・ボーボワ
時代表現★★★★☆
満足度★★☆☆☆

「モルフェウスの領域」海堂尊

2013年08月06日 | 本(その他)
SFファンタジーっぽい桜宮ストーリー。でもやっぱり論理の応酬。

モルフェウスの領域 (角川文庫)
海堂 尊
角川書店
 

* * * * * * * * * *

桜宮市に新設された未来医学探究センター。
日比野涼子はこの施設で、
世界初の「コールドスリープ」技術により人工的な眠りについた少年の
生命維持業務を担当している。
少年・佐々木アツシは両眼失明の危機にあったが、
特効薬の認可を待つために5年間の"凍眠"を選んだのだ。
だが少年が目覚める際に重大な問題が発生することに気づいた涼子は、
彼を守るための戦いを開始する。
人間の尊厳と倫理を問う、最先端医療ミステリー!


* * * * * * * * * *

ここに登場する佐々木アツシくんは
以前のストーリーにも登場していました。
といういか、海堂作品はすべてがつながっているので、当然ではありますが。
なんとそのアツシが「コールドスリープ」で5年間の眠りについている。
深海のようなひっそりとした場所で、ひたすら彼を見守り続ける涼子。
何やらSFファンタジーめいた光景ですが、
やはり海堂作品なので、
その裏では利権やらなにやらが絡んだ一部の者の思惑が蠢き、
まるで罠のような論理の応酬が繰り返されています。


その論理の応酬部分は私にはついて行き難いところもあるのですが、
そこは目をつぶって、
人々の感情の揺れを注視していくと、
とてもステキなストーリーとなります。
(女性としてはこういう読み方をしてしまうわけです・・・。)
最後に涼子がアツシを守るために下す決断とは・・・!
いや、驚きます。


それでようやく私の中でつながったのですが、
今作に続編があって、「アクアマリンの神殿」ですが、
これは我が家で購読している新聞に連載されていたのです。
頭脳明晰才能あふれる少年が
眠り続ける誰かを見守るというストーリーで・・・。
(でもそのコミック調イラストと学園ドラマっぽくなってきた所でいやになって、
途中から読むのをやめてしまった!!)
文庫化されたらまじめに読むことにします・・・。


田口医師や如月看護師も登場するので、
海堂ファンとしてはやはり見逃せません。

「モルフェウスの領域」海堂尊 角川文庫
満足度★★★☆☆

SHORT PEACE

2013年08月05日 | 映画(さ行)
これぞ、ジャパニーズスピリッツ



* * * * * * * * * *


私はこの日、本作と「風立ちぬ」、アニメ2本立てでした。
こちらは日本アニメの巨匠が結集したという感じで、
「日本」をテーマとしたアニメ短編オムニバス。
オープニングアニメ+4本。
どれも見応えがありました。
・・・やはりこんなふうにオーバーな前宣伝がない方が、素直に心に入っていきます。
まあ、それにしても、「風立ちぬ」と比べるとあまりにも人の入りが少ない。
作品の善し悪しと観客動員数は全く連動しない(!!)ですね。


「九十九」脚本・監督:森田周平
深い山中で、雨に振られ道に迷った男が、
雨宿りのために古びた祠で雨宿りをします。
すると、捨てられた傘やら着物やらの、もののけが出没。
古い道具は100年経つと心を持つという・・・。
捨てられた古い道具たちが、人に襲い掛かろうとする、迫力の一作です。
この男、剛気で無骨なのだけれど、手先は器用。
いい感じです。
 
 

「火要鎮」(ひのようじん)脚本・監督:大友克洋
のぞまぬ縁談を持ちかけられたお若。
実は幼なじみの松吉に思いを寄せています。
火消しの松吉への募る想いが高じて・・・、
ある夜、恐ろしい事件が起こります。
日本画を見るような画面割。
のどかな「静」から終盤一気に「動」へと変化していく様が見事。
八百屋お七とか、振袖火事などという江戸の物語を思い起こします。
町を燃やし尽くす業火。
それを引き起こした女の思いの深さ、悲しさ・・・。
知らず、涙がこぼれていました。
ものすごく力のある作品です。
  


「GAMBO」監督:安藤裕章
鬼を対峙する白い熊、ガンボの話。
ホッキョクグマじゃありませんよ。
白い色をしたヒグマ(?)。
その正体はわからないままなれど、
長いストーリーの一部を切り取ったというふうの今作は、そこが又面白い。
  


「武器よさらば」監督:大友克洋
他の3編は、みな江戸時代等、いにしえの日本が舞台ですが、
本作だけは近未来。
廃墟と化した東京が舞台です。
プロテクションスーツをまとった小隊が、ある任務を帯びてやってくる。
そこで無人兵器との戦闘が繰り広げられるが・・・。
男性が好きそうな作品です。
メカなど全くニガテな私ですが、ディテールのしっかりした装甲車やスーツ。
さすがにかっこいいなあと思いました!! 
ちょっと意外なラストもナイス。
  


日本のアニメはまだまだ大丈夫。
そしてジブリばかりがアニメじゃないよ・・・と。

「SHORT PEACE」
2013年/日本/68分
監督:大友克洋、森田修平、安藤裕章、カトキハジメ、森本晃司

「日本」度★★★★★
バラエティ★★★★★
満足度★★★★★

メモリーズ・コーナー

2013年08月03日 | 西島秀俊
予想外



* * * * * * * * * *

えーと、フランス作品?
そうなんですよ~。ちょっと異色。
題材は阪神淡路大震災。
西島秀俊さんはフランス語通訳の役、ということで、
主役女性とフランス語との会話が多い。
ひゃー、役者さんも大変だねえ。


それにしても今作はちょっと肩透かしというか、
思っていた方向と違ったので結局アレ???
というままに終わってしまった感じ。
ストーリーとしてはですね、阪神淡路大震災の15年後。
記念式典の取材のため神戸を訪れた女性ジャーナリスト、アダ(デボラ・フランソワ)。

彼女についた日×仏通訳・岡部が西島秀俊。
震災後の復興住宅の居住者に思いを語ってもらうという取材のため、
石田(阿部寛)という男の家を訪ねた一行。
しかし石田は謎めいた言葉をポツリと語るのみ。
急きょそこの取材は打ち切られたのだけれど・・・。
始めのうちは見ている私も、一体日本人の彼らがアダに対して
何の警告を発しているのか、
あるいは何を隠蔽しようとしているのか、よくわからなかったんだよね。
うん、いかにも西洋から見た日本だなあ。
西島秀俊なんか、初めの方では
「陰険で何を考えているのかよくわからないオトコ」
という描かれ方をしてたよね。
東洋の神秘というか、感情を表面に出さない不気味な日本人・・・。
いやいや、つまりはスピリチュアルな物語だったわけで・・・。
なーんだ、それならそうとはじめから言ってよ・・・、と思ってしまった。
いやいや、解説も何も読まずに見たアンタが悪い。



今作でちょっとびっくりしたというか、
眼からウロコだったのが「孤独死」という言葉。
まあ、通常は誰にも見とられずに頼るものもなく一人で死んでいくことを
そう言うんだよね。
実際の死因は餓死とか病死とか・・・。
でも今作では「孤独死」というのは、
誰も心を寄せる者がなく、愛する人も愛してくれる人もいない人が
「孤独」が原因で死んでしまうという定義だったのだわ・・・。
う~む、そんなことってありますかね。
確かに、大切な人も職も失ってしまったとしたら、もう生きる意欲なんか無くしちゃうよ・・・。
その喪失感のあまりに心にぽっかり穴が開いて、命の火が消えてしまう・・・と。
ポエムだなあ・・・。
そして、そうした人は、あの世へ行くことができずに
この世をさまようというのさ・・・。
うーん、でも、ちっとも怖さはなかったね。

一番怖かったのは、バスタブの中でうずくまるアダでした・・・。
あのまま、ずるずる這い出てくるのじゃないかと思った。
それは「貞子」の連想でしょ。
でもアダは、生きてるんだし。
通訳岡部の実家が淡路島で、その母親が倍賞美津子さんなんだけど、
なぜか少しフランス語が出来るという設定。
淡路島でフランス語を話すって、どういう設定なのさ。
不自然すぎ!
いやちょっと、それは淡路島に住んでいる人に失礼じゃない。
きっと彼女は若いころフランスに関係のある仕事をしていたんでしょ。
だからこそ、息子もフランス語を学んだのだろうし。
まあ、それはどうでもいいんだけど・・・。
そんな枝葉に目が行ってしまうのは、テーマがしっかりしていないからなのかもしれない。
西島さんのフランス語が聞けただけが儲けものの作品・・・かな?



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ポニーキャニオン


「メモリーズ・コーナー」
2011年/フランス・カナダ/82分
監督・脚本:オドレイ・フーシュ
出演:デボラ・フランソワ、西島秀俊、阿部寛、フランソワ・パピニュ、國村隼人、倍賞美津子
スピリチュアル度★★★☆☆
西島秀俊の魅力度★★★☆☆
満足度★★☆☆☆

「爆笑問題と考えるいじめという怪物」太田光

2013年08月02日 | 本(解説)
死ぬ勇気より、逃げる勇気

爆笑問題と考えるいじめという怪物 (集英社新書)
太田 光,NHK「探検バクモン」取材班
集英社

 
* * * * * * * * *

子どもの自殺をきっかけに、
過去に幾度となく、いじめは社会問題となっている。
どうして悲劇は繰り返されてしまうのか。
そもそも、なぜいじめは起きてしまうのだろう?
いじめられたことのある子どもたちや、
"いじめ"を起こさない学校を、
爆笑問題がNHK「探検バクモン」スタッフとともに現場取材、
その深層を探っていく。
さらに、尾木直樹氏らの専門家、いじめを乗り越えたゲストたちと徹底討論。
いじめに対処する方法について真剣に議論する


* * * * * * * * *

この本は、2012年11月にNHKで放映された
「探検バクモン いじめ×爆笑問題」をまとめたものです。
ちょうど大津市中学校でのいじめによる自殺報道が盛んに行われていた頃。
今はそれも又下火になりつつありますが・・・。
おそらくいじめが減少したということではない。
やはり同じようなことがどこかで起こっているであろうことは想像に難くありませんが・・・、
本当にどうしていじめはなくならないのでしょう。


この本の中で、尾木ママこと尾木直樹氏は言っています。
今の学校は、人材育成の「機関」になってしまっている。
人材を画一的に効率よく育成する「機関」であると。
そんな中では一人ひとりの個性が押し殺されて抑圧されていく・・・、
ということのようです。
そうではない学校の例として、
この本の中で「東京シューレ葛飾中学校」が紹介されています。
国の「構造改革特区」の制度を利用し、
不登校を経験した児童であることを入学の要件としているフリースクール。
いじめを受けた経験のある子も多いようです。
画一性を廃し、一人ひとりをそのまま受け入れてくれるこの学校で、
子どもたちはのびのびと過ごしているようです。
出たくない授業は出なくてもいい等、
人によっては「甘やかし」と思う面もあるかもしれません。
ただ、こんなふうに、学校にも色々あっていいのではないかな・・・という気はします。
友人関係で神経をすり減らすよりも、
まず「学ぶ」ことの楽しさを教えてくれる学校があればいいな。
・・・そのためにはやはり点数で子供の優劣をつけてしまうようなやり方を
まず見なおすべきなのだけれど・・・。
そのためには社会の仕組みから変えなければなりません。
う~む、難しい・・・。


それから、自殺についてですが、
太田光さんは、自殺はいじめをした子に対しての「復讐」の意味もあるのでは?と述べています。
確かに、このように大々的に報道されれば、
いじめた側のダメージはかなり大きいですからね。
でも死んでしまってはそれを見届けることもできないじゃないですか。
私はこの事件が報道された時に思ったのです。
これは「自殺」をしたからこのように大きくテレビのニュースで扱われたわけで、
いじめを受けた段階で学校に訴えてもさほど問題にはされなかったのではないか。
ましてや、マスコミに取り上げてもらおうとしても、
たぶん無視されてしまうでしょうね。
あまりにも日常茶飯事なので・・・。
命をかけなければ話題にもならない・・・というのは、
間違っているのではないか・・・。
けれど、それが悲しい現実です。


でも、同じような問題で自殺を考えている子がいたとしたら私は言いたい。
ちょっと待って。
死ぬ気になればなんでもできる。
まず、逃げ出しなさい。
学校なんか行かなくていい。
死ぬだけの勇気があるのなら、
まず逃げて、それから、他の自分のいることが出来る場所を探そうよ。
フリースクールでも何でもいい。
自分らしくいられる場所で、のびのびと必要なことを学んで、力を蓄えよう。
そして自分らしい生き方を探して、幸せになろう!! 
自分を好きになって豊かな人生を送ることこそが、
いじめた奴らに対する最大の復讐だよ!!
うん、そうした子に掛ける言葉はいくらでもありそうな気がする。
けれど、いじめる側の心の貧しさをどうしたら救えるのか。
私には想像がつきません。
いじめられている子をどう救うか、よりも、
いじめる子をどう救うのか。
これからはもっとそのことを論じるべきなのではないかと思います。

「爆笑問題と考えるいじめという怪物」太田光 NHK「探検バクモン」取材班 集英社新書
満足度★★★☆☆

風立ちぬ

2013年08月01日 | 映画(か行)
夢を形にすること



* * * * * * * * * *

言うまでもないジブリ作品、見ました!!
ゼロ戦設計者として知られる堀越二郎と
同時代の文学者堀辰雄の人生をモデルとした、
待望の大人を対象としたアニメ。


飛行機の設計技師二郎が関東大震災、経済不況そして戦争へと突入する
1920年代に生きる姿を描いています。
技術視察のため、ドイツや西洋諸国を訪問。
しかし、はじめから飛行機がうまくできたわけではない。
失敗の失意の中、避暑休暇で訪れた山のホテルで、
ある女性と再開します。
彼女とは関東大震災の大混乱の時に出会ったきりでした。
二人はそこで愛を育みますが・・・。


二郎が子供の頃から夢見たこと。
それが飛行機を設計することです。
彼はその夢に向かって突き進み、夢を形にしていきます。
本作で二郎の声を務めている「エヴァンゲリオン」監督、庵野秀明氏は
「夢を形にしていく」ところが、
二郎と自分との共通点、と語っています。
わかります。
私は二郎が設計図を引いているシーンが、すごく好き。
好きな仕事に打ち込んでいる人の姿って、美しいのですよね。
そういうところがすごく良く出来ていたと思います。
この姿は、アニメーターたちの姿に通じています。


いつも夢のなかで、敬愛するイタリアの飛行機設計技師カプローニと対話する二郎。
大人になってもその飛行機への情熱は少年の頃のまま。
菜穂子さんはきっと二郎のそういうところが大好きで、
だからそういう二郎を「見届けたい」と思ったのでしょうね。
嬉し恥ずかし、ジブリ初というキスシーン。
いや、ホント初恋の味・・・の雰囲気でした。
リアルな物語ではありますが、
二郎の「夢」の中で、ジブリらしい自由でファンタジックなシーンもたっぷりなのがうれしい。
空を飛ぶのは宮崎駿監督にとって、永遠のテーマなのかもしれません。



さて、ということで一応の満足は得たのですが、
ジブリ戦略にはちょっと一言いいたくなるのです。
なんだかあまりにもPRが派手すぎるというか、いかにも鳴り物入り。
私としてはもう少し、まっさらな状態で見たかったと思うのです。
飛行機などの効果音がすべて人の声で作られているとか、
カストルプ氏は、ジブリの恩人ともいえるスティーブン・アルパート氏がモデルで、
彼自身が吹き替えをしているとか。
しかもその歌の収録がすごく大変だったとか。
(いや、つい前宣伝のTV番組を見てしまった私のせいなんですけど・・・)
そもそも、ジブリ作品というだけでつい期待も高まってしまうものですし・・・。
もう少し、なにも知らない状態でこの作品を見て、
本当に「すばらしい」と思えるのかどうか・・・どうにも判断がつきません。
スポンサーあってのことですし、仕方ないですけれど。
今更、まっさらな気持ちでジブリ作品を見るなんて不可能か・・・。
初めてナウシカやトトロ、ラピュタを見た時の感動は
もう味わえないなあ・・・。


それはともかく、
庵野秀明氏の吹き替えは、どうなることかと心配していましたが、
思ったよりも違和感なく、
ぼそぼそと話す人・・・という個性を演出しているかのようで、悪くありません。
しかも、その友人本城が、西島秀俊さんなんで!! 
二人の会話のシーンも多いのですが、
これなどは役者の西島さんの喋りに助けられて
会話として違和感なく出来上がっているようにも思えました。
これがド素人二人の会話だとしたら、かなりひどいのかも。


吹き替えの俳優陣も豪華です。
西島秀俊をはじめ、
西村雅彦、風間杜夫、國村隼、大竹しのぶ、竹下景子、野村萬斎・・・。
中でも西村雅彦、風間杜夫、國村隼人、
これらのキャラクターとご本人が、どうもそっくりな気がするのです。
声優を決めてからキャラクターデザインをしたのでしょうか??? 
興味深いところです。


一つ文句があるのはタバコのシーンが多すぎ。
私は特別嫌煙権を主張する方ではありませんが、それにしても・・・。
嫌煙権など影も形もなかった時代ですから、仕方ないのかもしれませんが。
宮崎監督の好みで飛行機のシーンが多いのはけっこうですが、
タバコのシーンは・・・。
しかも胸を病んでいる菜穂子の前で吸うというのは言語道断。
これはダメです。


う~む。
それにしても、ジブリ作品は期待が大きいだけに点が辛くなってしまうようです・・・。
「風立ちぬ」
監督:宮崎駿
出演(声)庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦
夢の探求度★★★★★
飛行機の魅力★★★★★
恋愛度★★★☆☆
満足度★★★★☆