映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

スマイル、アゲイン

2014年02月07日 | 映画(さ行)
最後に残る大切なものは、やはり家族



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元花形スターのサッカー選手だったジョージ(ジェラルド・バトラー)。
怪我のため引退をしてから仕事もなく落ち目の生活。
別れた妻子とよりを戻したくて、二人の住む町へやって来ました。
しかし彼女ステイシー(ジェシカ・ビール)は既に別の男性と住んでいて、
まもなく結婚の予定。
息子と定期的に会って気持ちを慰めているジョージですが・・・。
ある時、ジョージは息子の所属するサッカーチームのコーチを務めることになります。
チームの子どもたちの欲求不満の母親たちに言い寄られたりもしますが、
次第に元妻と息子との距離を縮めていきます・・・。



ごく普通に楽しめるハート・ウォーミングストーリーだと思います。
やけに出演陣も豪華なのですが、
だからといって内容が特別いいわけでもない。
が、悪くもない、といったところ。
仕事一筋だった男から仕事をとったら何も残らない。
だから家族にすがる・・・
というのは情けない気がしなくもないのですが
まあでも、真実をついているのかも。



ジョージがコーチを引き受けた途端、
親から色々な注文が殺到するのもご愛嬌。
寂しい母親も多い・・・と。
まあ、確かにこんなナイスガイっぽいコーチがいたら
興味は湧きますわねえ・・・。



元妻は言う。

「あなたは人当たりもいいし、はじめの印象はとてもいい。
だけれど、ある日突然ドッカ~ン、となるのよ・・・。」

そのドッカ~ンが、思いがけないところで起こるというわけです。



本作で一番気の毒なのは、ステイシーの彼氏ですね。
彼はきちんとステイシーもその息子も愛して、何処にも非はなかったのに。
ちょっと人が良すぎです。
女心を捕えるのは大変です・・・。


スマイル、アゲイン [DVD]
ジェラルド・バトラー,ジェシカ・ビール,デニス・クエイド,ユマ・サーマン,キャサリン・ゼタ・ジョーンズ
Happinet(SB)(D)


「スマイル、アゲイン」
2012年/アメリカ/106分
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ジェラルド・バトラー、ジェシカ・ビール、ユマ・サーマン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、デニス・クエイド
家族の絆度★★★☆☆
満足度★★★☆☆

「まほろ駅前狂騒曲」三浦しをん 

2014年02月06日 | 本(その他)
行天の怖いもの

まほろ駅前狂騒曲
三浦 しをん
文藝春秋


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いつもの奴らがなぜか集結―?
まほろ駅前は大騒ぎさ
!四歳の女の子「はる」を預かることになった多田と行天。
その後なんとバスジャック(?)に巻き込まれることに―。


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お楽しみ、「まほろ駅前」シリーズの第3弾です。
ストーリーは驚きの展開。
まずは多田が4歳の女の子「はる」を預かることになりますが、
え~い、ネタばらしだけど明かしてしまいましよう。
この子は行天の子なのです!
彼に子供がいる経緯は、前作を読んでいただきたいのですが、
DNA的に確かに彼の子供なのです。
「はる」は通常はしっかりした母親たちに育てられているのですが、
母親の都合でどうしても一時的に誰かに預かってもらわなければならなくなった。
しかし、問題は当の行天が大の子供嫌いであること。
多田は「はる」の素性を隠したまま預かろうとするのですが・・・。


本作はまた、宗教の問題も絡んできます。
個人にとって宗教の選択は自由。
だけれども、その教義を押し付けられる子供にとってはどうなのか。
親が選んだ宗教は、子供にとっては好むと好まざるとにかかわらず
受け入れなくてはならない絶対的なものになってしまう
・・・そういうテーマが底辺に流れているのです。


多田が「怖いもんなんかあるのか?」と問えば、
行天は「あるよ。記憶」と答える。


彼の記憶の底にあるのは実は、子供の頃の親の宗教なのです。
彼の子供嫌いの根っこもそこにある。
何を考えているのやら、なにをしたいのやら、
ひょうひょうとしてつかみ所のない行天の実像が、
ようやくこの第3弾にして焦点を結んだのでした。
前2作を読んだ方は、この巻を見逃してはいけません。
大人の男二人の友情。
やっぱり三浦しをんさん、上手いんだなあ・・・!!


それから、バスジャック、というのはまあ表現がオーバーですが、
例によって「バスの運行が間引きされている」と信じてやまない岡老人が、
ご近所の老人を巻き込んで暴挙に出るのですね。
この顛末はまことに楽しめます。


そしてその挙句が、信じがたい事件!!
行天がまたもや悲惨なキズを負うのですが、
でもこのことは彼の大きな自信につながるのです。
なんと鮮やかな展開。
これぞ三浦しをん。
たっぷり楽しめてしかも胸に迫る。
堪能しました。

「まほろ駅前狂騒曲」三浦しをん 文藝春秋
満足度★★★★★

ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

2014年02月05日 | 西島秀俊
本当に自分は、自分が思っているとおりの自分なのか・・・?



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楽しみにしていた西島秀俊主演作。やっと見ました!
ねえ、考えてみたらこれまでたくさん西島秀俊出演作を見てきたけれど、
 劇場で見るのはこれが初めてなのでは???
いやあ・・・意外だけど本当だよね。
 見始めたのが一年くらい前で・・・すべてレンタルのDVDでした。
 TVドラマは別として・・・。
というわけで、私には記念すべき作品ではある!
なんと、いつもは休日でもオール自由席のこの劇場(ディノス)、本作は指定席だったんだよねー。
私はこの劇場ではじめての体験だったかも・・・
うーん、でもそこまで大量の入場者を見込んでた割には、空いていた・・・。
初日から一週間たってたからねえ。初日とかは、一杯だったのかな・・・?


さて、本作はSFっぽくもあるサスペンス。
 韓国との合作というのも西島さんっぽいところだね。
 他にも外国人監督の作品にいろいろ出てたよね。



自宅で妻が殺されているのを発見した石神武人(西島秀俊)。
 しかしちょうどその時電話がかかってきて、
 その相手がなんと死んだはずの妻!!
そんなばかなー!!というところから始まるわけだ。
そして彼は、警察を名乗る男たちに追われることになるのだけれど、
 その彼を救ったのが韓国の記者カン・ジウォン(キム・ヒョジン)。
 彼女は、半信半疑ながらも石神の話を確かめることに協力してゆく。

どんどん彼の記憶が混乱していくね。
私達は自分の記憶こそが真実と思っているから、
 その記憶が消えたり別の記憶が蘇ったりしたら、
 なにが本当かわからなくなってしまう。
 自分の存在さえも、ね。
 これは相当怖いよ。
彼は本当は韓国のオ・ジヌという科学者であったことが次第に思い出されてくる。
 つまり石神武人としての記憶は、あとから上書きされたもので、
 いま、その上書きが少しずつ剥がれつつあるということなんだね・・・。

時々画面にカウントダウンの数字が出てくるのだけれど、
 これが5日間のカウントダウン。
ゼロになったらどうなるか・・・という答えは、作中で後ほど明かされるけれど、
 すべての記憶が消えてしまう、ということなんだよね。
これは大変だ・・・。



本作で問題なのは、それだけじゃない。
 問題はその二つの記憶の中に、
 それぞれに愛した大切な女性がいる、ということなんだな。
悩んじゃうよね-。
 石神としては妻・美由紀(真木よう子)を、
 オ・ジヌとしてはユリ(中村ゆり)を・・・。



まあ、そういうロマンスも見どころではあるってこと。
 これ、女性側から見ると、
 ある日突然愛する人が自分のことを忘れて消えてしまうってことなんだよ。
 理不尽だなあ・・・。
そして見つけたと思ったら、別の女性と幸せそうに暮らしている・・・。
う~ん、切ない・・・。


そんな感じで、本筋の記憶とゲノムのサスペンスに、
 ちょっとしたミステリも絡めてあるのがいいね。
本作のアクションはほぼ西島秀俊さん本人がやっているということでしたが・・・。
もともと、スパイだとかの役じゃなくて、
 イラストレーターであり科学者であるわけだから、
 ぶきっちょな素人っぽいアクションであったわけだよね。
アレだけ体を鍛えている西島秀俊さんだから、
 本当はもっとかっこよく撮ろうと思えばできたのだろうなあって気がする。
まあ、楽しめた作品だと思います。
けど、韓国監督作品なのでちょっとオーバーアクションだったかなあ・・・
 と思わなくもないのですが・・・。
真木よう子さんももっと多く見ていたかったですけどね。
 チョッピリでした・・・。残念・・・。

「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」
2013年/韓国・日本/120分
監督・脚本:キム・ソンス
原作:司城志朗
出演:西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田学、中村ゆり
サスペンス度★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★★☆
満足度★★★☆☆


ペタルダンス

2014年02月03日 | 映画(は行)
風に乗って飛んでいるものに願い事をすると叶う



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大学時代からの友人ジンコ(宮崎あおい)と素子(安藤サクラ)は、
共通の友人ミキ(吹石一恵)が自ら海に飛び込んだと聞き、
6年ぶりに彼女に会いに行くことにします。
ドライバー役をジンコの新たな友人・原木(忽那汐里)が務めることになり、
女3人の北への旅が始まる。



冬の空、海、風。
こうした灰色の背景の中、
はじめのうち彼女たちの思いは沈み気味。
自殺しようとした友に、どのような言葉をかければいいのだろう。
どうしてそんなことになってしまったのか。
彼女は私達に会いたくなどないのではないだろうか。
私達にできることなんてあるのかな。
そんな思いが渦巻きます。
ミキを直接知らない原木も、
最近親しかった友人が「私なんかいなくなってしまったほうがいい」とつぶやいた後、
どこかへ行ってしまったことを気に病んでいます。
どうしてあの時もう少し真摯に話を聞いてあげられなかったのかな・・・と。



ペタルダンスの「ペタル」というのは、「花びら」の意味だそうです。
なるほど、冷たい冬風景のなか、
特別若くはないですが、女達が
それぞれの思いを言葉少なに表出させながら輝いて風に舞うイメージ
みずみずしく、鮮烈です。
これが思春期の少女たちでなく、それぞれに自分の生き方がみえつつあり、
しかしまだ固まりきってはいないという年代なのもいいですね。
まだまだ修復可能な彼女たちの若さと絆が、
ミキと彼女たち自身の表情をも明るく変えていきます。



「風に乗って飛んでいるものに願い事をすると叶う」という。
「願う」というよりも「祈る」ですね。
なんだか真似してみたくなりました。


「ペタルダンス」
2012年/日本/90分
監督・脚本:石川寛
出演:宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ、吹石一恵、風間俊介

自然さ★★★★★
満足度★★★★☆


「ロスジェネの逆襲」 池井戸潤

2014年02月02日 | 本(その他)
出向になったって、倍返しだ!!

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人事が怖くてサラリーマンが務まるか!
ドラマ化も果たした「半沢直樹」シリーズ第3弾となる『ロスジェネの逆襲』は、
バブル世代の主人公が飛ばされた証券子会社が舞台。
親会社から受けた嫌がらせや人事での圧力は、知恵と勇気で倍返し。
ロスジェネ世代の部下とともに、周囲をあっと言わせる秘策に出る。
直木賞作家による、企業を舞台にしたエンタテインメント小説の傑作!


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さて、やっとお目当ての「ロスジェネの逆襲」。
ショッキングにも銀行から出向となった半沢直樹のその後を描いています。
東京セントラル証券の部長職についた半沢が、
IT企業関係のゴタゴタに乗り込んでいくことになる。
半沢は言うまでもなくバブル世代。
本作のロスジェネ世代とは、彼らよりもう少し若い世代です。
バブル崩壊後の就職氷河期を経験したこのロスジェネ世代に、
スポットを当てているわけです。
ちょうど、半沢の部下となる森山がその代表格。
バブル世代の半沢はその上の層、団塊世代を無責任だと思い非難しますが、
森山から見たバブル世代もまた然り。

「身を削るような就職活動をくぐり抜けて会社に入ってみると、
そこにはたいした能力もないくせに、
ただ売り手市場だというだけで大量採用された危機感なき社員たちが、
中間管理職となって幅をきかせていたのだ。
・・・大量採用のおかげで頭数だけはいるバブル世代を食わすため、
少数精鋭のロスジェネ世代が働かされ、虐げられている。」


と、彼は思っています。
そのため、あまり仕事を好きとも思えず、
やる気をなくしている森山なのですが、
半沢の仕事へ一直線に向かう姿を見て、次第に変わっていくのです。
始めのうちは、銀行からの出向組として、
煙たく思っていたにも関わらず。


ここでの半沢は、
あろうことか親会社の東京中央銀行に
子会社である東京セントラル証券が敵対するという暴挙に出ます。
これにはさすがの友人・渡真利も、

「あまりやり過ぎるな。戻れなくなるぞ」

と忠告するのですが、
そもそも半沢は、自分の進退など気にしていない。
終盤に彼が森山に自分の信念を語るシーンがあります。

「正しいことを正しいといえること。
世の中の常識と組織の常識を一致させること。
ただ、それだけのことだ。
ひたむきで誠実に働いたものがきちんと評価される。」


確かにあたりまえのことなのですが、
それがなかなか当たり前にできていないということなんですねえ・・・。
しかし、銀行内ではやはり半沢を目の敵にする連中が多く・・・。
彼をまたもやどこかとんでもないところへ飛ばしてしまおうという勢力もバカにならない。
やはり、重苦しく、ドキドキさせられるシーンの連続です。
しかし!
倍返しは生きている。
乞うご期待!


ところで、本巻には半沢の奥様である花さんが全く登場しません。
そもそも此度の出向にどのような反応を示したのか。
そしてまた危ない橋を渡る半沢にどう言うのか。
TVドラマではどのようになるのか、それもまた楽しみです。

ロスジェネの逆襲
池井戸 潤
ダイヤモンド社


「ロスジェネの逆襲」  池井戸潤 ダイヤモンド社
Kindle版にて
満足度★★★★★

俺はまだ本気出してないだけ

2014年02月01日 | 映画(あ行)
まだ・・・というからには、いつかは・・・?



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42歳。
バツイチ。
子持ち。
その上、本当の自分を探すという理由で会社をやめてしまった
イタい男のストーリーです。



彼、大黒シズオ(堤真一)は、
しかし結局何かを始めるでもなく朝からゲーム。
いや、このままではヤバい。
そういう自覚はあるのです。
人から言われるまでもない。
だがしかし、踏み出せない。
笑っちゃうけど、笑えない。
そういう部分はどんな人の中にもありますよね。
だからつい共感を持って見てしまうのだろうなあ。
そしてある日、ついに決心したのは「漫画家になる」ということ。
そんな無茶な、とは思いますが・・・。
作品を見ているとその決心の原点が見えてきますね。
つまりは小学生の頃にそんな夢を持っていたことがあるらしい。
自分が子供の頃描いていた夢を実現しようとする、
これって本当はすごく贅沢なことのように思えてきました。



彼の周囲の人達もユニークです。
彼の友人宮田(生瀬勝久)は、バツイチですが、
淡々と仕事をこなすサラリーマン。
会社ではある程度の地位まで出世している。
でも、ちょっぴりシズオの自由さが羨ましくなってきます。
シズオがバイト先で知り合った市野沢(山田孝之)は、口数少ない男子。
何をやりたいという思いもなく、バイトを点々としてきた彼もまた、
シズオの有り様を見てなにか感じるものがあるようだ・・・。
高校生の娘・鈴子(橋本愛・・・ユイちゃん!)は、こんな父を見てもグレもせず、
家の家事を担い、今どきの女子高生とは思えないくらいにいたって真面目・・・
のようなのですが・・・!?



「自分探し」なんていうと陳腐に聞こえてしまうのですが、
本当に自分がやりたいことをする、
結局そういうことに惹かれるのです。
没個性のサラリーマンからの脱却。
ただし、それで生活できれば・・・。
うーん、やはりそこが問題だ!!



それにしてもシズオ役にお笑い芸人か誰かでなく、
堤真一さんを起用というのがナイスですね。
ご本人のイメージとのギャップが・・・。
やはり自分探しをしている編集者、濱田岳もよかった!

俺はまだ本気出してないだけ 通常版 [DVD]
堤真一,橋本愛,生瀬勝久,山田孝之,濱田岳
Happinet(SB)(D)



「俺はまだ本気出してないだけ」
2013年/日本/105分
監督・脚本:福田雄一
原作:青野春秋
出演:堤真一、橋本愛、生瀬勝久、山田孝之、濱田岳
脱力度★★★☆☆
共感度★★★★☆
満足度★★★★☆