映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

少女は自転車にのって

2014年02月25日 | 映画(さ行)
踏まれてもまた立ち上がる、若い芽のように



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サウジアラビアでは映画館の設置が法律で禁じられているそうなのですが・・・
その国でこのように女性監督が出たということがまず驚き。



10歳の少女ワジダは、おてんばでチョッピリ周囲から浮いています。
みなは決められた黒い靴を履いているのに、彼女はスニーカー。
家では“悪魔の曲”といわれるロックを聞いています。
今一番したいのは、幼なじみの男の子アブドゥラと自転車で競走すること。
でも自転車は高いし、そもそも女性が自転車に乗るなどとんでもない、
という周囲の認識。
それでも彼女は諦めず、ミサンガを作って売ってみたりするのですが、
とても目標には達しません。
そんな時、学校でコーランの暗唱コンテストが開かれることになります。
その賞金が貰えれば自転車が買える! 
一生懸命に暗唱の練習に励むワジダですが・・・。



本作を見るうちに、次第にこの国の
イスラム教の戒律の厳しさが浮かび上がってきます。
特に本作では女性について。

親兄弟や夫以外の男性がいる場所では、肌や髪を露わにしてはいけない。
一人で外を歩いてはならない。
車の運転はできない。
一夫多妻制で、男性は一度に4人までと結婚できる・・・。

私達には信じがたいようなことですが、今現在の話です。
・・・なるほど、こんな状況では映画館でハリウッド映画なんか上映できるわけがありませんよね・・・。
あまりのギャップに、女性たちの暴動が起きるかも・・・。
でも本作、ワジダがこういう制度に怒りをぶつけるという作品ではありません。
彼女の母をはじめ周りの女性たちが
「おんな」であるがゆえに、苦しんでいる姿を見知っています。
それはもう、長い歴史の中でずうっとそうだったので、
戦うというよりも、諦め、受け入れるしかすべがないことであるのでしょう。

けれどもそんな中でも、
ワジダが精一杯自分らしく生きようとする姿が
しなやかで美しく、胸を打ちます。
そして、この国の未来をも感じさせる。
彼女はおそらくハイファ・アル・マンスール監督自身でもあるのだろうな。
なんだか私達にも勇気を与えてくれるようです。



それから、ワジダのコーラン暗唱の声が、素晴らしかった・・・! 
暗唱というか、メロディが付いているのです。
日本で言うならお経のようなものですね。
でもお経よりももっとメロディに起伏があって、美しい! 
意味はわからずとも、聞き惚れてしまいそうです。


「少女は自転車にのって」
2012年/サウジアラビア・ドイツ/97分
監督:ハイファ・アル=マンスール
出演:ワアド・ムハマンド、リーム・アブドゥラ
世界を知る度★★★★★
満足度★★★★☆