水戸の怒涛の歴史の中で
* * * * * * * * * *
幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、
天狗党の一士に嫁いで水戸へ下った中島歌子。
だが、尊王攘夷の急先鋒である天狗党は暴走する。
内乱の激化にともない、歌子は夫から引き離され、囚われの身となった。
樋口一葉の歌の師匠として知られ、
明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し一世を風靡した歌子は、
何を想い、胸に秘めていたのか。
落涙の結末!
* * * * * * * * * *
第150回 直木賞受賞作品・・・ということで、
既にKindleでも出ていたので思わずワンクリックして購入してしまいました。
電子書籍、恐るべし。
受賞の発表があった日に、自宅にてすぐに読み始めることができるのです。
しかもチョッピリお安い。
さて、そんなわけで、私には初めての朝井まかてさん。
それにしても本作には驚かされました。
「恋歌」というからには、もう少し優雅な作品かと思っていたのです。
しか~し!!
時代の奔流に巻き込まれ、劇的な体験をする女性の物語です。
幕末。
登世(とせ・・・のちの中島歌子)は、
江戸の水戸藩御用達の宿屋・池田屋の娘でした。
ある時宿を訪れた水戸藩士・林忠左衛門以徳(もちのり)に一目惚れし、
恋い焦がれた末思いが実って、嫁入りが決まります。
水戸の林家へ嫁いだ登世。
商家から武家へということで勝手も違うし、
以徳は留守がちで、
妹のてつは決して打ち解けようとせずつっけんどん。
思い描いた生活とはちょっと違う。
さて、当時の水戸藩。
ちょうど桜田門外の変が起きた直後くらいです。
なので水戸藩は「尊皇攘夷」思想で固まっているかと思いきや、
そうではなく、あくまでも古来の幕藩体制を守ろうとする保守派「諸生党」と、
「尊皇攘夷」を唱える革新派「天狗党」が真っ二つ。
登世の夫・以徳は天狗党ではありますが、
藩がこのように真二つになっていがみ合っているのは良くないと考える良識の持ち主です。
ところが以徳とも親しい若輩の藤田小四郎が筑波山で挙兵。
諸生党ばかりか幕府までを敵に回すことになってしまった。
やがて諸生党は、筑波山を攻めあぐんで、きたない手に出たのです。
天狗党藩士の家族(女・子どもたち)を捕らえ、
劣悪な条件で監禁した挙句に処刑。
登世と義妹のてつもまた・・・。
うーん、水戸藩にこんなに壮絶な歴史があるとは知りませんでした。
本作中の藤田小四郎は実在の人物で、
これらの事件もまた史実です。
幸せ胸いっぱいで嫁いだ登世に
このような過酷な運命が待っていようとは・・・。
そしてまた、この血を血で洗うような悲壮な歴史。
諸生党と天狗党の立場は後にまた180°入れ替わることになるのですが・・・。
全く知識もなく、私にとっては予想だにつかないストーリーの展開に、
ただただ圧倒されっぱなしでした。
本作は、この史実をなぞるのみではなく、
歌子に決して心を開かないままずっと彼女に寄り添っていた澄という女性の謎も絡め、
非常に読み応えのある作品となっています。
感無量。
さすがの直木賞受賞作でした。
水戸藩は「尊皇攘夷」思想のお膝元とも言えるほどであったのに、
内部抗争で多くの人材を失い、
明治新政府で重要な地位を占めることがなかった・・・
というのが、今更ながらに納得出来ました。
幕末・・・本当に激動の時代だったのですねえ。
うまく風を読んだものが生き残ったということなのでしょう・・・。
「恋歌」朝井まかて 講談社
Kindleにて
満足度★★★★☆
満足度と言うよりは感慨度で・・・★★★★★
![]() | 恋歌 |
朝井 まかて | |
講談社 |
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幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、
天狗党の一士に嫁いで水戸へ下った中島歌子。
だが、尊王攘夷の急先鋒である天狗党は暴走する。
内乱の激化にともない、歌子は夫から引き離され、囚われの身となった。
樋口一葉の歌の師匠として知られ、
明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し一世を風靡した歌子は、
何を想い、胸に秘めていたのか。
落涙の結末!
* * * * * * * * * *
第150回 直木賞受賞作品・・・ということで、
既にKindleでも出ていたので思わずワンクリックして購入してしまいました。
電子書籍、恐るべし。
受賞の発表があった日に、自宅にてすぐに読み始めることができるのです。
しかもチョッピリお安い。
さて、そんなわけで、私には初めての朝井まかてさん。
それにしても本作には驚かされました。
「恋歌」というからには、もう少し優雅な作品かと思っていたのです。
しか~し!!
時代の奔流に巻き込まれ、劇的な体験をする女性の物語です。
幕末。
登世(とせ・・・のちの中島歌子)は、
江戸の水戸藩御用達の宿屋・池田屋の娘でした。
ある時宿を訪れた水戸藩士・林忠左衛門以徳(もちのり)に一目惚れし、
恋い焦がれた末思いが実って、嫁入りが決まります。
水戸の林家へ嫁いだ登世。
商家から武家へということで勝手も違うし、
以徳は留守がちで、
妹のてつは決して打ち解けようとせずつっけんどん。
思い描いた生活とはちょっと違う。
さて、当時の水戸藩。
ちょうど桜田門外の変が起きた直後くらいです。
なので水戸藩は「尊皇攘夷」思想で固まっているかと思いきや、
そうではなく、あくまでも古来の幕藩体制を守ろうとする保守派「諸生党」と、
「尊皇攘夷」を唱える革新派「天狗党」が真っ二つ。
登世の夫・以徳は天狗党ではありますが、
藩がこのように真二つになっていがみ合っているのは良くないと考える良識の持ち主です。
ところが以徳とも親しい若輩の藤田小四郎が筑波山で挙兵。
諸生党ばかりか幕府までを敵に回すことになってしまった。
やがて諸生党は、筑波山を攻めあぐんで、きたない手に出たのです。
天狗党藩士の家族(女・子どもたち)を捕らえ、
劣悪な条件で監禁した挙句に処刑。
登世と義妹のてつもまた・・・。
うーん、水戸藩にこんなに壮絶な歴史があるとは知りませんでした。
本作中の藤田小四郎は実在の人物で、
これらの事件もまた史実です。
幸せ胸いっぱいで嫁いだ登世に
このような過酷な運命が待っていようとは・・・。
そしてまた、この血を血で洗うような悲壮な歴史。
諸生党と天狗党の立場は後にまた180°入れ替わることになるのですが・・・。
全く知識もなく、私にとっては予想だにつかないストーリーの展開に、
ただただ圧倒されっぱなしでした。
本作は、この史実をなぞるのみではなく、
歌子に決して心を開かないままずっと彼女に寄り添っていた澄という女性の謎も絡め、
非常に読み応えのある作品となっています。
感無量。
さすがの直木賞受賞作でした。
水戸藩は「尊皇攘夷」思想のお膝元とも言えるほどであったのに、
内部抗争で多くの人材を失い、
明治新政府で重要な地位を占めることがなかった・・・
というのが、今更ながらに納得出来ました。
幕末・・・本当に激動の時代だったのですねえ。
うまく風を読んだものが生き残ったということなのでしょう・・・。
「恋歌」朝井まかて 講談社
Kindleにて
満足度★★★★☆
満足度と言うよりは感慨度で・・・★★★★★