ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

結末は同性婚?

2015-02-25 09:43:56 | 脚本
 書けた!かな?書けた!と思う?多分、書けた?次回菜の花プラザシニア団公演の台本だ。

 ともかく最後まで行ったから書けたことは書けた。でも、制限1時間を大幅に超過して25000文字までなってるから、これから1/5つまり5000文字は削らないといけない。じゃあ、全然完成じゃないじゃない。そ、そう、その通り。でも、文字数オーバーだってなんだって、ラストシーンまでたどり着いたってことは大きいんだ。とりあえず物語としての体裁整ったわけだから。後は饒舌に書き飛ばしたギャグなんかを、情け容赦なくずばずば切り捨てていけばいいわけ。ちょっと残念。足りないよりははるかに楽な作業だ。

 実を言うと、後半、この芝居の見せ場の部分をどう作るかで壁にぶち当たって停滞した。ちょっとだけネタばらししよう。出演者全員が、男は女へ、女は男に変身してしまうという仕掛けなんだ。とんでもないよな。めちゃめちゃ馬鹿げてて、徹底的にリアル無視してて、とことんくだらない、そんなアイディアを、まっ、許せる!なるほどそうか!うん、あるかも!それ、面白い!ってレベルまで引き上げようって悩んでいた。

 ああでもない、こうでもない、そりゃ違う、それじゃダメって苦しむこと数日。はらっとほどけた、難問の固結びが!こういう時ってまさにコロンブスの卵なんで、後で思い返せば、なーんだそれしきのこと!ってなるんだけで、ドツボに落ち込んだ当人としちゃ、なかなかつらい毎日だった。それほどでもないか。

 で、一端が解けてみると、そこから後はすらすらと開けていく、これもよくある話しで、一気にラストシーンまで進むことができた。これがなんと、同性婚!驚いたね!まさかこんな方向に行き着くなんて思ってもみなかった。この結びで本当にいいのかどうか、舞台にかけてみないことにはわからない。そんなのレズビアンの女性たちから見たら、まるっきりウソってはり倒されるかもしれない。観客も、ええーっ?そんなのありぃぃぃ?って、もやもやや、不満抱えて客席を立つかもしれない。でも、この展開を書いた時、とっても自然に気持ちが流れたんだ。僕の中ではとても美しいシーンが書けたと思っている。

 さらに、エンディングはオープニングと同じ『コーヒールンバ』の踊り。二人が愛を確かめ合うように悩ましく踊る、はず、いや、踊る、ぜったい!。

 これ、シニアの芝居?あっ、そうか、それすっかり忘れてた。でも、うちのシニア若いし、力あるから、これくらい負荷かけてちょうどいいんだよ、ってことで、ご期待を!稽古は3月3日から始まる。本番は5月31日(日)フレンドリープラザと6月6日(土)仙台市青年文化センターホール。稽古に入ってないから写真なんてあるわけない。昨年のシニア団公演『Goodnight Baby』の大絶賛!ダンスシーンの画像を上げておこう。




 
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婆さんコント:「霊感商法」台本アップ

2012-11-12 20:18:26 | 脚本
 川西町芸文祭で上演したコントの第二弾「霊感商法」の台本をアップしよう。
 ナオミの婆さんは板に付いてきた。婆と言えばナオミとなる日も遠くないだろう。当人は、不満のようたけど。





霊感商法




作・河原俊雄






婆さん・・・・・・・・・・・・・佐々木直美
霊感商法の女・・・・・・・・・・吉田夏奈美


           霊感商品販売の女、婆さんを訪問する。
女      お婆さん、大変ですよ。この家には、霊が取りついてます。
婆さん    ああ、ほだべ、ほだべ。
女      気づいてたんですか?
婆さん    そらわかっこで。財布ん中いつだってスッカラカンだもの。
女      はあ?霊ですよ、霊。なんで財布と関係あるんですか。
婆さん    ほだ。〇だべ。きれいさっぱりなーんもなしの〇。ジェロ!
           と、指で丸を作る。
女      違います!霊です。
婆さん    ああ、わかった。レイな、レイ。
           と、ハワイアンが鳴り、フラダンスのレイを取り出し首に掛けて踊る。
婆さん    よく知ってたことな、おらフラダンスはまってっこと。なっ、上手いもんだべ。○○(フラダンスグループの名)で踊ってんなよ。
女      違います!!
           音楽びたりと停止
女      死者の霊です。死んだ魂の呪いです。最近、どなたか、お亡くなりになりませんでしたか?
婆さん    あれま!よく知ってこと!!
女      お婆さん、その方に辛く当たったりしませんでしたか?
婆さん    ありゃ、ばれたか。よっく頭ひっぱたいたりしったんだ。
女      なんと、暴力ですか。虐待ですか。
婆さん    食い物やらねえこともあったな。
女      饑餓の強要!そりゃあ恨みますねぇ、呪いますよ。
婆さん    ほだべか?けっこう他所の家行って、残りもん食せてもらったりしったから、腹はへってねかったと思うな。
女      非道い!食事を与えられず!泣く泣く他所様で!残飯を!
婆さん    ほだ、よく泣いたったな、トラさんは。
女      寅さんっておっしゃるんですか、お爺さんは。
婆さん    爺さんではねえよ。だいぶ耄碌はしったけど、爺さんではねえさ。雌だから。
女      雌?
婆さん    ほだ。雌猫だ、寅さんは。一ヶ月前、死んだんだ。
女      なんだ猫ですか。
婆さん    猫はダメか?
女      猫の霊なんてないでしょ。
婆さん    ありゃりゃ!化け猫は?猫又は?猫娘は?猫婆は?
女      わ、わ、わかりました。猫の霊じゃありません。人間の死者の話しです。
婆さん    はっ!
女      心当たりありますか?
婆さん    ある!男殺した!
女      なんですって?!殺した?猫の話しじゃないでしょうね。
婆さん    ああ、人間の男だ。男。
女      いつですか?
婆さん    たしか、・・・先週の金曜日だ。うん、そうだ。
女      先週?金曜日?どこで?
婆さん    森の中だったな、あれは。
女      どうやって、こ、こ、殺したんですか?
婆さん    マシンガンでだだだだって。
女      マシンガン?
婆さん    ほだ。マシンガンで悪党どもを皆殺し。いやぁぁぁぁ、気持ちいがったなえ。
女      ちょっと!それもしかして?テレビの名画劇場?
婆さん    ほだ。アメリカのギャング映画!見ねかったか?
女      見た!見た!すっごく面白かった!
婆さん    ほだべ。森の中を逃げ回る悪党どもをマシンガンで、だだだ、・・・・
女      そう、ばたばた倒れて、・・ってなんでテレビの中の殺人が、この家の霊と関係あるんですか?
婆さん    ほだって、最近、死んだ者はいねか?って聞くから。
女      あれは映画でしょ?本当に死んじゃいないでしょ?
婆さん    あれまぁ、死んでねえなか?あれ。
女      死んでません。フィクションです。
婆さん    ほうか、風邪ひいただけなんか。
女      なんですか?風邪って。
婆さん    ハクションなんだべ。
女      違います!フィク、・・・もういいです!
婆さん    もういいです、って!あんた、そがに簡単に諦めていいなか?なんか霊魂に絡んで用件あんなべ?
女      御霊鎮めの壺、お勧めしたいと思いましたが、お婆さんには無用だって納得しました。
婆さん    呪いの霊魂、いねぐなったってことか?
女      はい。その代わり、貧乏神の臭いがぷんぶんとします。
婆さん    あれまぁ、貧乏神って臭せえなか?
女      はい、臭いです。臭います。
婆さん    どんな臭いだ?
女      えっ?それは、辛気くさいって言うか、貧乏臭いっていうか、・・・
婆さん    それって臭(にお)いだか?心理的状況を表現する形容詞でねえか?
女      うっ!国語の勉強は置いといて・・
婆さん    置くな!勉強置いたらわかんね!人間生涯学習!小学校、中学校、高等学校、成人学級、老人大学、死ぬまで勉強!死んでも勉強!!
女      死んでどうやって勉強するんですか?
婆さん    えっ、まあそれは、あっこであの世にだって学校くらい。
女      わかりました。で、ともかく、貧乏でしょ?
婆さん    ほだな、金はねえわな。
女      それなら、これですよ。金運財布!
婆さん    なにや?金運財布?
女      そうです。この財布を持てば、がっぽがっぽお金が貯まります。
婆さん    がっぽがっぽ!
女      そう、がっぽがっぽ!
婆さん    がばがば!
女      そう、がばがば!
婆さん    ほんじゃ、あんた金持ちだな。
女      えっ!?
婆さん    ほだべ。その財布持ってんなだもの。
女      それは、まあ、・・・
婆さん    それ売らねえで、自分で持ってたらいいべ。
女      いや、私は、まだ沢山、持ってっから、・・・
婆さん    なにぃぃ!金運財布いっぺえもってんなか?ほだら、大金持ちでねえか。
女      いえ、まあ、大金持ちってほどではないですけど、・・・・
婆さん    金あんのに、なして商売なんかしてんなや?
女      そ、それはですね、・・
婆さん    遊んで暮らしてたらいいべ、金運財布でがっぽがっぽでがばがばなんだもの。
女      いや、その、それ、働かぬ者食うべからずって言うでしょ。労働は大切だから。
婆さん    ほだら、ボランティアでもしったらいいこで。貧しい人だのお役に立つように。
女      そうそう、ボランティア、ボランティアですよ、この財布売るのも。
婆さん    なして、財布売んながボランティアなのや。ただでけっちゃらいいべ。
女      それは、それは、ダメでしょ。
婆さん    なして?その財布、全国の年寄りさくばったら、年金問題いっぺんに解決すっぞ。
女      いや、だから、昔から言うじゃありませんか、ただより高いものは無いって。
婆さん    なるほど。
女      ねっ、だから、ごくごく安い価格でお分けてしてるんですよ。
婆さん    安いって、いくらや?
女      たったの5万円です。
婆さん    ほぇぇぇぇっ!5万円ちぃうたら、年金一ヶ月分だした!
女      安いもんですよ、5万円払えば、後はがっぽがっぽ!
婆さん    がっぽがっぽ!
女      がばがば!
婆さん    がばがば!
女      ねっ、安い買い物だ。がっぽがっぽ。
婆さん    うーん、がっぽがっぽ。
女      欲しいでしょ?がばがば。
婆さん    うん、欲しい。がばがば。
女      たったの5万円!
婆さん    そのたったが無い!スッカラカンのカンだもの。
女      だって、年金月だもの、もらったばかりでしょ。
婆さん    年金は、借金の支払いで消えた。
女      それじゃあ、又、借金して、・・
婆さん    待て!こういうなどうだ。
            と、婆さん壺の入った箱を取り出す。
婆さん    我が家に代々伝わる家宝の壺。
女      物々交換なんてダメですよ。
婆さん    そんな!とんでもない!!5万円の財布なんぞと交換できるものか!
女      そんなに価値のあるものなのですか?
婆さん    ああ、ほだ。どんなに貧乏してもこれだけは、手放しちゃわかんね!ってじっと堪えて取っておいたんだ。
女      でも、ただのがらくたかもしれないじゃないですか。
婆さん    なんのなんの!折り紙付きよ。保証書付きよ。
女      誰の保証ですか?
婆さん    ほれ、テレビでやってっぺ、なんでも鑑定団。
女      えっ!ひげのおじさんの番組?あのお宝の価値を鑑定する番組?
婆さん    ほだ、去年よ、この壺、出してみたんだ。したら、 
女      したら?
婆さん    おっ、急になまったな。
女      いいから、それでいくらの値段付いたんですか?
            婆さん、箱からやおら紙切れを取り出し、女に渡す。
女      ご、ご、五十万円!!
婆さん    ほだ、五百万くらいの値は付くと思ったけんどな。
女      これとだったら、物々交換でも、・・
婆さん    なに、馬鹿言ってんな!五十万の品、5万円の財布と交換するアホどこにいんな?
女      まっ、まあ、そうですね。
婆さん    これをあんたに買ってもらって、そのお金でその金運財布をおらが買うちゅうのはなじょだべ。
女      そんな五十万円なんて金、持ってるわけないじゃないてすか。そんな金あったら、こんな商売してませんよ。
婆さん    あれれっ?ボランティアでなかったな?
女      あっ、そ、そう、ぼ、ボランティア、ボランティア。
婆さん    ほだべ、金持ちだもんな。
女      そう、金持ち。金運財布持ってるから。で、でも今、持ち合わせないから。
婆さん    金持ちだからちゅうて、いっつも大金持ち歩いてるってわけねえもな。そりゃそうだ。よしっ、わかった。40万円。
女      いやあ、手持ちがぁぁぁ、・・・
婆さん    ほんじゃいくらなら持ってんな?
女      十、・・・・
婆さん    なに?!
女      十万円。
婆さん    馬鹿くせえ。時価50万円って鑑定された家宝の壺だぞ。止めた。
           と、壺をしまい始める。
女      い、いや、待って!15万円!これほんと持ち金全部。
婆さん    止めた!
           と、壺をしまう。
女      わ、わ、わかりました。20万円!本当にこれしきゃないですから。
婆さん    あんた、30万円も儲けようってのか?
女      でも、本当、それしかないですから。よしっ、それなら財布もサービスします。5万円で財布二つにします。
婆さん    三つ!
女      三つ!そんな!
婆さん    止めた!
女      わかりました。財布三つで5万円。それじゃ、気変わらないうちに、
           と、財布から20万円を取り出し渡す。
婆さん    仕方ねえな。
           と、札を受け取り数える。
婆さん    たしかに。ほんじゃここから5万円あんたに支払ってと。
           女、金を数え、2人品物を交換する。
婆さん    2人ともいい買い物しっったな。これであんたは30万円をがっぽがっぽ。
女      お婆さんは金運財布でがばがば。
2人     うふふふふ!
女      それじゃあ、お婆さん、金持ちになってくださいね。
婆さん    はいはい、あんたも上手に売って儲けてな。
           女、壺を大事そうに抱えて出て行く。
婆さん    いやあ、良かった。騙されて買わさっちゃインチキ壺、ようやく売っぱらえた。お宝鑑定団の偽の鑑定書にころっと騙さっちぉ買っちまったもんだもなぁ。あん時ゃ、10万円。15万円で売れたから、5万円の儲け。それとこの財布。さあて、今度はこいつで一儲けすっかな。



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カード詐欺防止コント台本『狙いは婆さん』

2011-11-06 21:21:30 | 脚本
11月3日川西町芸文祭で上演したコントの台本を上げておこう。
最近多発しているお年寄りを狙ったカード詐欺、その手口をちょっとひねってコントに仕立てた。
実際は銀行の者とか年金機構の職員とかと騙ってカードと暗証番号を盗みとるって方法が多い。
気をつけようよ、お婆ちゃん!
それにしても、お年寄りのなけなしの年金騙し取るなんて、世の中、薄汚くなったもんだよなぁ。

狙いは婆さん

スーパーの駐車場などに設置されたATMの入り口。
婆さんBが出てくる。婆さんA近付いて、

A     あんのぉぉぉ。もしかしてお金おろしてやったか?
B     ああ、ほだけど。
A     銀行から?
B     ほだ。
A     カードで?
B     これな、これ。
          と、カードを取り出す。
A     てえしたもんだなぇ!!!いやてえしたもんだ。
          と、大袈裟に驚く。
B     なにびっくらしてっこと?
A     こったら厚紙一枚で金おろしたんだべ。なんとなぁ。
B     厚紙!?
A     おらとっても信じらんね。こがな厚紙にお札入(へえ)ってるなんてよ。財布だってこんぐれえは厚みあんのによ。
          と、財布を取り出す。
B     ああ、ほだな。不思議って言やあ不思議だな。
A     それと、あの機械ん中さ入(へえ)ってる人、大変だべね。
B     えっ?中さ入ってんなか。
A     一日(いちんち)中だもんな。お昼とかどうすんなべ。
B     そ、そ、そりゃ、中で食べてんだべ。
A     なんと!あの狭い箱ん中でなぁ!一日(いちんち)中ご苦労なこったな。お給料いいんだこてな。
B     ほりゃ銀行だもの。たくさんもらってたべ。大企業だもの。
A     ほでも、給料ええなは、銀行ん中でえばってる人だけだべ。
B     ああ、ほだな、そういうもんだ。東京電力だって、原発ん中で頑張ってる人はちいっとしかもらってねえっていうもな。
A     下請な。下請。ほだ、あん中さいる人も下請か派遣社員だべ。
B     ほだべなぁ、そんじぇねくちゃ我慢さんねもの、あがな狭い箱んなかで。
二人    ご苦労様!
          と、ATMに向かって手を合わせる。          
A     退屈しねもんだべか?
B     中で、テレビとか見てんなべ。
A     テレビか、なるほどテレビなぁ。ほでも、テレビ放送、今、休みだべは。
B     休み?テレビが??
A     ああ、夏場からこんかた、さっぱり映らねもん。シャーッて縞模様映るばりでよ。
B     そりゃ、ちでじだべ。ちでじ。
A     なにや?それ。ちでじって痔の一種か?疣(いぼ)痔(じ)、裂(きれ)れ痔(じ)、ちでじ。
B     ああ、そんなもんかもしんねえな。これまでのテレビ糞詰まりになったんだべ。
A     ああ、糞詰まりな、おら家(え)のテレビも糞詰まりなんか。ほんで映らねえなだ。なるほどな。おら、また、テレビも夏休みなんかって思ってだった。節電、節電て騒いでいっからよ。
B     たまにゃ節電も悪くねえけど、やっぱ年寄りにゃテレビだべ。韓流だべ。チャン・グンソク!いやぁ、いい男だねえ。
A     あたしゃ、嵐だね。翔くん、最高!ああ、やっぱテレビねえとな。一日、暇で暇で。
B     新しいのに換えんなねだ。
A     なんと、また、新しい機械だか!
B     まったく!新型、新型ってなぁ!
A     電話だって、ほれ、こんなにちゃっこくなっちまって。なんも遠慮すっことねえのにな。どーんと、居間に居座ってていいものを。
B     新しいことできるちゅうけど、うちらにゃさっぱりだもん。
A     ほだほだ。メールたら、文字映ってもちっこくて見えねえしな。
B     どうやって返事してええかもわからねえ。
A     孫が、「婆ちゃん、便利だろ。助かっだろ。」なんて言うけど。さっぱり!今までのまんまでたくさん。ほっといてけろ!って言いてえよ。
B     ほだほだ。おお、便利て言えば、コンビニな。あれ、便利な店って言う意味なんと。
A     ほえ~~~!あれが便利な店か?!コンビコンビちぃうから、だれかお笑いコンビがやってる店だと思ってだった。ほんねえなな。便利ちぃう意味なんか。
B     なーーーんも便利なもんか。こないだも、魚、三枚に捌いてけろって頼んだら、できねえと。無くなった魚屋ならすんのにな。
A     配達もしねしな。
B     賞味期限ぎりぎりだから、まけろって言うたら、コンビニは絶対まけないんです、と。なにお偉そうに。
A     挨拶だけは達者ださな。いらっしゃいませこんにちは。いらっしゃいませの他にこんにちは、まで付けてよ。
B     ああ、ほだ。いらっしゃいませかこんにちは、どっちかひとつにしろての。
A     いらっしゃいませって言葉には、こんにちはが含まれてんなだから。
B     そんくせ、店先でおでんまで煮てたりして。いっつも思うなよ。あん鍋ん中、釣り銭落としたらどうすんなべ?中身みんな捨てんだべか?って。
ひっひっひ!一度やってみっぺか。
A     おっかねえこと考えんでね!年寄りはほでなくとも邪魔者扱いなんだから。
B     ほだな。東京じゃ、年寄り、列車にも乗せねえようにしてっしな。
A     ほだなか?
B     改札口はいっつも閉まってっし、切符買う窓口もねえ。
A     まさかぁ!
B     切符みんな自動販売機だもんな。こないだもよ、機械に向かって行き先怒鳴ってる爺さんいたったけど、周りの衆から、爺さん邪魔だってうっちゃられたったもんな。
A     もごせーこと!
B     それどこか、今じゃ切符も売ってねえなだ。改札通る人は、なんかこう財布だかなんだかかざしてよ、すっとよ、扉、ぱたんこって開いてよ。
A     財布でなして開くなだべ?金、入(へえ)ってからだかい?
B     ほんねえな。ほだっておらもやってみたなだもん。財布こうかざしてよ、開けごま!って。
A     だめか。
B     だめだ。開かね。なっ、都会じゃもう年寄りは出歩くなってことなんよ。
A     田舎だって同じよなもんだべ。
B     ああ、ほだ。バスは、もう遠の昔に廃止になったし、75歳過ぎたら車運転すんなって言うし。自転車乗っと危ねえから止めろ、だもん。
A     ほでも、あんた、いろんなこと知っていやんな。
B     ああ、勉強してっからな。若えもんに馬鹿にされてばっかいるもんかってな。
A     なるほどなぁ。勉強なぁ。
B     ほた。勉強さんなね。これ。
          と、イヤホーンを取り出し、Aに渡す。
A     なにや、これ。
B     耳に差し込むな。
A     なんや、耳栓か?
B     ほんね。ほら、聞こえったべ。
A     な、なにやこれ?
B     石川遼君のスピードラーニング。
A     英語だか?英語勉強してんなか?
B     ああ、時代に取り残さんねえよえにな。
A     てーしたもんだ!
B     こんなんも、勉強してっこて。
          と、ウォークマンを操作する。
A     うわっ!!なんと、これ!!!
B     ほだ般若心経。
A     お経?!
B     あの世行って馬鹿にさんねえよにな。
A     お経しらねえと、あの世で馬鹿にされんなか?
B     ああ、ほだとも。あの世の沙汰も経しだいって言うべした。
A     それ、地獄の沙汰も金次第でねえか?
B     なーにことわざだってどんどん新しくなる時代だもの。ダメだよ。愚痴ってばりじゃ。
A     て言わっちぇもなあ。
B     挑戦!挑戦!!なにごとも挑戦だ。
A     孫もな同じこと言うなよ。婆ちゃんやってみろ、便利だから、って。
B     ああ、使い慣れりゃ、便利、便利。
A     ほんじゃこのカードで。
           と、財布からカードを取り出す。
B     おお、金おろすんか。簡単、簡単。
A     おら、心配だから、一度やってみせてけねか?
B     任せてけろ。
           財布から自分のカードを取り出し、ATM機に刺し込む。
B     まず、カードをこの隙間さ、差し込む。
A     ふむふむ。
B     すっと、こういう画面出っから、暗証番号を打ち込む。続き番号とか、自分の誕生日なんてダメだよ。すぐと忘れるよなのもダメだ。もちろん、人様に言ってもわかんねえ。
A     なるほど、ほんで、あんたは。
B     おらか?おらは、じぇーったい忘れない番号。
A     ええーっ?なにや、それ?
B     初恋の人の誕生日!
A     そんなん、よく覚えてやっこと!
B     忘れるもんかね。大切な大切な思い出だもの。
A     旦那さんの誕生日でなくて?
B     そんなもん、とっくに忘れた。あんた、覚えてんなか?
A     ええー、・・・忘っちゃ。
B     ほだべ。爺さんのことなんてな。
A     ほだな。近頃は物忘れひどくなるばりだ。暗唱番号たらど忘れしったらどうすっぺ。どっかに書き置きしたりした方がいいなべ。
B     ダメダメ!メモなんかしちゃ。だれかに見られたらどうすっこと。A     ほでも、ど忘れしそうだもなぁ。
B     そったら時のために、質問準備しとくなよ。
A     どんなふうに?
B     おらの場合だと、仏さんの誕生日は?って具合にな。で、こう打ち込む。
          A、知らんぷりしつつそっと覗き見る。
B     次におろす額を打ち込む。よろしいですか?って聞いてくっから、いいとこでねえよって確認を押す。っと、ほら、中の人一生懸命お札数えてっぺ。で、お待たせしました。取り忘れにご注意くださいって、はいはい親切なことな。で、お金を受け取る。なっ、簡単、簡単。ほれ五千円。
          と、お札を見せる。
A     なるほどなぁぁ。
          自分のカードを取り出し、
A     これと同じもんだべ。これで下ろせんなべ。
B     ほだよ。ほれ、見てみ、同じカードだ。
と、自分のカートを見せる。A、受け取って。
A     ほーっ!はーっ!ふーっ!ひーっ!へー!
          と、感心するあまりそっくりかえってひっくりかえる。
B     あ危ねえ!
          と、支えようとして二人もつれる。A、2枚のカードを持ち換える。
B     大丈夫だか?
A     悪(わり)いこと、悪(わり)いこと。いやぁ、あんた、てえしたもんだ!
B     なぁに、こったらこと、造作(ぞさ)ねえことだべ。
A     ほんじゃ、これ。
          と、すり替えたカードを返す。
B     ほれ、あんたもやってみろ。見てやっから。
A     ああ、ほだな。ほんじゃ、
          と、ATMにカードを差し込む。
B     暗唱番号。
A     ありゃ?
B     どした?
A     忘っちゃ。ど忘れしっちゃ。
B     なんだべ!
A     孫にあんだけ言わっちゃのに、・・・・ダメだ。思い出せねえ。
B     出直して来っこんだ。
A     あぁ、ほだな。戻って聞いてくっぺ。
B     あぁ、しっかり忘れねえよにな。質問も考えとくんだぞ。
A     あぁ、質問な。質問。ほんとありがと様。
          二人、反対方向に去っていく。と、A、すぐに現れて、カツラをとって正体を現す。
A     ちょろいもんだ、婆さんなんて。さて、すり替えたカードで、婆さんがため込んだへそくり、ごそっといただくか。(客席に向き)詐欺の手口はあの手この手、騙さんねえよにな。気つけろな。
                    了



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舞台は水もの流れるもの

2010-11-01 21:16:23 | 脚本

 県大会へ出発まで残り3日。今はとことん直しを入れつつ毎日通しで締めくくっている。ゲネプロで61分を超えてしまったので、かなり焦ってせりふを削った。時間オーバーで失格!これだけは絶対に避けたい。そのために出来る限りの手だてを講じておくのは、これはもう完全に顧問の責任だ。

 せりふの間を計り、削れるせりふは極力削り、場転の時間短縮に励ませ、最後の手段はショートカットバージョンを準備する。これくらいのことは指導者が目先を利かせてやってあげなくちゃいけない。だから、部員が気持ちよく引っ張ってたから時間オーバーで失格しちゃったなんて話しを聞くと、それ生徒のせいじゃないから!ってつっこみたくなる。何回やったってほとんど同じ時間で終われるよう稽古を重ねるのが筋だし、もしも不安定な仕上がりなら、短縮バージョンを準備するなどしなくちゃいけないんだと思う。

 だから、上演時間にはことのほか神経を使う。で、今回もリハーサルの翌日には十カ所以上のせりふカットを提案した。ちょっと実態とちがうかな?はい、ここカット、これもね、ああ、こっちも諦めて、って具合だから。切られる役の生徒の気持ち考えると、じくじくするところはあるんだけど、こればかりは仕方ない。

 せりふのテンポも気になっていた。どうももったらもったらしていて、切れ味が足りない。特に主役二人は滑舌に難があるので、これを徹底的に矯正した。あと、やたらとせりふを切る悪いクセを徹底的に排除。間は大切だけど、それは本当に必要な間の話し。のべつ幕無し引っ張られたら、時間は喰うは、テンポはたるいは、印象はぼけるはでいいことなんかない。生徒に任せると往々にして、そんなやたら間延びした芝居を作りがちになる。

昨日、今日と部分稽古をぎりぎり締め上げて、こちらの意識がかなり徹底してきた。で、通してみたら、なんと57分にまで短くなっちゃった。3日間ともそれ前後なので、これでほぼ演技が固まってきたってことかな。まあ、実際は場転の時間も、舞台の広さから来る時間ロスもあるから、ブラス1分30秒とみて、58分30秒これじゃもったいない。後2分近くもある。ってことで、一端削ったせりふを復活したり、見せ場での間をじっくりと取るよう指導した。

 結局せりふカットによる時間短縮の効果より、せりふのテンポや間の圧縮の方がよほど効果的はだったってことだ。やっぱり、舞台は水もの流れるものなんだよな。ちょっと石ころどけてやったり、流れをまっすぐに整えたりするだけで、流れは大きく違ってくる。時に急流を流れ下り、時にゆったりとたゆたう、そんな緩急自在の舞台、それがやはり目標ってことなんだ。

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