どうも物足りない!部員たちのフリーダンスを見ていて常々感じていた。
置農演劇部の基本トレーニングにはダンスが組み込まれている。ダンスったってそんな難しいことするわけじゃない。音楽に合わせて身体を動かすだけのことだ。
目的はいろいろある。心と体のウォームアップ、特に落ち込んだ精神をハイテンションに持って行くにはかなり効果的だ。さらに、リズム感を高めること。必要だもの、リズム感、演劇に絶対。せりふの間や対話の調子なんか、そこに流れるリズムをものにしないと、生きたものにならない。さらにしなやかな身体を作ること。
も一つとっても大切だって思っているのが、身体に対する感受性を高めるってことだ。人間鏡の前でも立たないと、自分の身体がどんな動きをしてるのかわからないって、思うかい?そんなことはない。鏡なんか利用しなくても、自分の身体見回したりしなくても、今、手足がどんな風に動き、背筋がどう伸びて、腰つきがどうかなんて、目をつぶってたってわかる人にはわかるんだ。自分の踊る姿や演じる姿が頭の中のモニターにしっかり映し出されているんだ。プロのダンサーや役者なんかは、これができる。つまり自分の身体を客観的に感じ取る力ってことだ。もちろん、観客にどう見えているかってことも。これが高校生にはきわめて乏しい。この身体感覚を日々のダンスの中で身につけてほしいと願ってる。
さて、その方法だけど、二つの方向性があるんじゃないかな。一つは、人の振りを徹底してまねること。他人の動きを全体から細部まで撮し取って、それを自分の身体に刷り込むこと。これってかなり難しい。そりゃそうだ。人の動きが簡単に真似できるんなら、誰だってすぐにプロダンサーになれるもの。おっと、体型や顔立ちは無視しての話。人の動きを見きるってこともメチャクチャ難しいことだし、それを自分の身体に命じるとなると、ほとほと我が肉体と運動神経の至らなさに思い至るはずだ。でも、その身体が動かない、身振りがぎこちない、って感じることは、実は自分の身体を客観的に感じることでもあるんだよ。そして、それを毎日毎日鍛錬することで、出来なかった動きが出来るようになる。置農ではこれを円ダンスってやり方で実施している。みんなで輪になって、中心に立った人の振りをまねるって方法だ。
もう一つの方向は、人の目など気にせず自由に踊ること。ただひたすら自分の心と身体と対話しながら踊ることだ。音楽からイメージをふくらませ、空想の中で飛翔することだ。円ダンスやダンスレパートリーで身につけた振りなど気にせず自由に身体をしなわせることを目指している。
ところが、ふー、やれやれやっと本題にたどり着いた。そうなんだ。部員たち、全然自由でないんだ。自由に踊りなさい、振りなど気にせずリズムに身体を任せなさい、身体が動きたいように動けばいいんだから。とっても簡単なことだって思う。でも、これがどんなに難しいことか!いくら自由にって言われても、動き始めるとついつい日頃慣れ親しんだ動きになってしまうんだ。ありきたりのステップ踏んでしまうんだ。
これを何とか乗り越えたいと思って、工夫してやってみたんだ。まず、音楽をしっかり聴くこと。次にそこからイメージすること。さらにそのイメージの世界の中に自分を投げ込むこと。そうやって何度か曲を変えながら、最後に自由に踊ってみよう!ってやってみた。
踊り終わって、全員に聞いてみた。今までの自分がしたことのない動きができたって思う人?2,3年生の女子の多くが手を挙げてくれた。どうやらこちらの意図することが理解できたようだ。そう、その感覚、自分自身が広がったようなその感覚、それを大事にしていこう。そして、そう感じられる自分を大切にしていこう。
自由になるって、ほんと、大変なことなんだ、心も身体も!