ステージおきたま

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ガイ・リッチーの凱旋:『シャーロック・ホームズ』

2010-03-14 21:35:54 | 映画

 待ってたんだ!ほんと、待ってたんだ!!Lock, Stock and Two Smoking Barrels (1998) ・ Snatch (2000) この二本でめろめろにされてたからね。どうしたんだ?なんで新作出ないんだって。でも、今調べてみたら、この間、結構作ってたんだね。知らなかった。

 で、僕としては10年ぶり?の新作が、なんと『シャーロック・ホームズ』だって。これは絶対見逃せないでしょ。何としたって見なくちゃね。ということで、封切り2日目の昨日、見てきましたよぉぉ、さっそく。

 まず、導入5分間の緊迫感&スピード感!観客を物語り世界に一気に引き込んだね。おっ、このシーンどっかで見たぞ?!そうだ、あのクストリッツァの名作『アンダーグラウンド』じゃないの。おうおう、もう嬉しくなって、この時点で映画の仕上がりはばっちりだ!って確信した。

 その後も目を見張り、ほくそ笑み、懐かしさにぐっと来て、感動の2時間半?だった。やっぱり優れた監督は良いもの作るよなぁ。まず、ホームズとワトソンのキャラクター!もう映画評でもそこいら中で言われてることだから、ことさら言わない。ただ、ホームズがワトソンを失いたくないばかりにワトソンの結婚を邪魔だてするなんて、どう?ホームズをそんな男にするって誰が考える?しかも、子供じみたあの手この手でだよ。ホームズと腐れ縁を断ち切りたいワトソンだけど、あと10分、あと10分って言い訳しつつ、結局は一緒に窮地に飛び込んでしまう。この二人の関係が映画のベースになっていて、これが男の友情っていうか、男の子のじゃれ合いみたいでなんともほほえましい。大人のかっこよさとは全然かけ離れたやんちゃ小僧の痛快さなんだな。そうそう、ヒロインも悪の世界を華麗に泳ぎ渡る美女で、これは結構アクションものにはあるパターンだけど、やっぱり悪を背負った人間てのはかっこいい!なんてこと考えながら見ていた。

 次に感動したのは、産業革命下のロンドンをビジュアル化したことだよな。たった1秒にも満たないシーンのためにも丁寧にこまめに当時の風俗を描写していて、うおっ、もたいねぇ、もっとじっくり見せてくれ!って一瞬、スローモーションスイッチを押してしまうところだった。建物も町にうごめく人たちも、その仕事ぶりや服装や振る舞いや、この背景だけを見るためにもう一回見に来ようって思ったほどだ。特に、大切なアクションシーンが・・・・所と建設中の・・・・ブリッジなんてもう、泣けてくるよ。もちろんアクションとしても常道をしっかり保ってスリル満点の仕上がりだった。

 ストーリーも黒魔術や秘密の教団をテーマにして次々と不可解な事件が繰り広げられ飽きさせない。まあ、その謎解きは、あんなもんでしょ、としか言いようがないけどね。それはいいんだ、そこまで興味津々で引きずり込んでくれたんだから。

 ってことで、大満足の『シャーロック・ホームズ』なんだけど、ガイ・リッチー狂いの僕としは、そんなことより、彼のパズル好きトリック好みが健在だったことが何より嬉しかったんだ。目をこらし、耳をそばだて、頭をフル回転させてないとなんだかわからなくなってしまう、彼一流の、どうだい?わかったかい?着いてこれるかい?って観客を挑発する姿勢が所々に見られたことだよね。言ってみれば彼の知的でマニアックな側面、これがたまらないんだ。

 それともう一つ。そう!音楽!!これもすっごく重要!音楽担当者に任せきりにせず、幅広いジャンルから思いがけない演奏を探してきて流してみせる。その洒落た趣味は、Lock, Stock and Two Smoking BarrelsSnatch も最高だったものね。特にSnatchのサウンドトラックからはOVERSEASってグループ教えてもらって、菜の花座公演『ZENMAI』で効果的に使わせてもらったりしている。だから、とっても期待していた。これもまあまあ満足させてもらった。今回は東欧のジプシー(おっと、今はノマって言うんだった)音楽やアイルランドのトラッドなんか巧みに使って雰囲気盛り上げていた。

 ただ、残念だったのは、この映画のサウンドトラックCDがそういった既成の曲は一切入っていなくて、この作品のために作曲された曲だけだったってこと。これにはかなりがっかりした。アマゾンで視聴できたから買わずに済んでよかったけど、もしそうでなかったら、絶対買ってしまってたものな。いや、これはこれで悪くはないんだよ。でもね、・・・・・。ただ、音楽も先のマニアックなパズルと同様、監督自身の趣味は控えめにって感じはありありと感じられた。もっともっとマニアックにやりたい放題やってくれよ!って言いたいところだけど、多くの人に好印象与えなくちゃならない映画としては、仕方ないところなのかな。

 いずれにしても、待ちに待ったガイ・リッチー監督の復帰は、間違いなく凱旋だったって思うよ。

コメント
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