ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

張り倒された!一人踊った!『アメリカン ユートピア』

2022-10-11 11:25:51 | 映画
わっ、わっ!こ、これだよ、こんな舞台を作りたいって思ってたんだ。
イネ扱き終わり疲れきっちまったから、今夜はのんびり映画だな。だったらアマゾンプライム。開いたら、あなたが興味のありそうな映画、そのトップに『アメリカン ユートピア』。なにこれ?この奇妙なサムネイル。舞台作品ぽいけど?

中年、いや、熟年の男性歌手が、脳のプラスチック模型を手に歌う。「人の脳は子どもの時の方が神経のつながりが多い、大人になるに従い・・・」そこに絡むダンサー女はアフリカ系刈り上げた側頭部には入れ墨。男の方は、髯を蓄えたおじさん、よく見れば目元に濃厚なメイク、どぎつい口紅、
ゲイなのか?いずれも歌手と同じグレーのスーツ姿だけど、靴も靴下も履かず素足のまんま。その踊りがまた変わっている。何気ない仕草やストップモーションを繋ぎ合わせてどこか操り人形のようだ。なんじゃぁ、これは!
正方形の舞台上には何もない。位置を示す場ミリも中央にたった一つ。上下奥の3面には銀色に輝く鎖が無数に垂れ下がり幕のような仕切りを作っている。
と、なんと、その鎖をかき分けて、リズム隊、キーボード奏者、ギター2人が次々に登場し、これまたブラスバンドのドリルのように、しかも身をくねらせたりステップ踏んだりして伴奏する。アコースティックじゃない。楽器はすべて電波を飛ばして会場内に響き渡る。
度肝を抜かれるオープニング!

曲が進み、歌い手の自己紹介?デビッドバーン!あぁ、なるほどトーキングヘッズの。あまり熱心な視聴者じゃなかったけど、不思議な音楽する連中って記憶がよみがえる。
そう、彼の曲、歌詞が難しい。言葉は日ごろ聞き慣れたものだし、描写されるのも日常の風景や思いなんだが、すっきり共感には結びつかない。意味を追っているとちょっと戸惑うが音楽とパフォーマンスは、そんなこと気にするな、と、意表を突く展開を次々に見せて行く。
振り付け、フォーメーション、メンバーの出捌け、凝った照明、舞台作りに関心ある者には垂涎ものってやつだぜ。

進むに従い、デービッドバーンの意図が、選曲を通して徐々に明らかになってくる。「Everybody's Coming to My house」この曲を作った頃、彼は、誰でも寄って来て長居する連中がうざかったそうだ。でも、高校生の合唱部では、素直に友達の集まりを喜ぶ歌になっていて、今は、その方が心地よいと感じる、なんてMC入れながら、多国籍のメンバーを紹介(彼もスコットランドからの移民だ)し、明るく楽しく歌い踊っていた。
わかるよねぇ、我が家ってアメリカだよ。いろんな地域からの移民がごちゃまぜで暮らすアメリカの多様性だ。その肯定だ。
選挙についての警句もあったなぁ。地方選挙じゃ投票率が20%、えっ、アメリカでも?客席の一部に明かり当てて、この人たちが思うように政治動かしてる、なんて冗談めかして政治参加の大切さをさらっと伝えたかと思えば、明確なプロテストソング「Hell You Talmbout」(ジャネール・モネイの曲、だそうだ)で、迫害にあって亡くなったアフリカンの人たちの名前を次々に読み上げて行く。
そして、ラストナンバーは「One Fine Day~Road to Nowhere」で、今、私たちは旅の途上にあると軽やかに歌い上げる。客席も混然一体、こちっもモニターを前に、踊る!?
これはもはや、現代の批評と行動の指針でなくてなんだろう!
総立ちの客席の中を演奏しつつ練り歩くエンディング、感動だぜ。しかも、しかもだ。ステージが終わった後、出待ちするファンの前に現れたメンバー全員、なんと、またもや、なんとだ、ヘルメットを被って自転車に乗って事務所?に戻って行くんだ!その時の曲は「Everybody's Coming to My house」!こんな憎い演出ってあるだろうか!?
この数分間の楽し気なロードトリップがすべてを物語っているぜ。なっ、僕らは旅の途中、みんなが気兼ねなく集まって居座る心地よい家を作るその半途。
なんて、感動に浮かれつつ書いて来たけど、この映画2年半前のものなんだってさ。大評判だったそうだけど、そんなこと、田舎のジジイはちっとも知らない。いなかはなぁ~、年寄りはなぁ~って半ば呆れつつ許してくれよ。


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3 コメント

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Unknown (原田博史)
2022-10-13 10:05:25
ご無沙汰してます。観ました、いいですね、簡単そうにやってますがいやいや凄いです。この種の舞台演られる際は私の客演、必要ですね(^^)季節の変わり目、ご自愛下さい。
返信する
Unknown (原田博史)
2022-10-13 10:06:19
ご無沙汰してます。観ました、いいですね、簡単そうにやってますがいやいや凄いです。この種の舞台演られる際は私の客演、必要ですね(^^)季節の変わり目、ご自愛下さい。
返信する
さすが原田さん! (taowatarukaze)
2022-10-13 20:17:21
見てくれたんですね、「アメリカンユートピア」。
もう、あの感激をだれかと共有したくて、じりじり過ごしていたんです。いや、今もです。菜の花座メンバーには全員必修、見ない人は次の作品、役付けない!って宣言したいくらいのものです。
湯山玲子の紹介動画見たら、絶賛しない人がいないという稀有な作品で、クリエイターのバイブルだとまで言っていました。あの作品に勇気づけられたクリエイターは多い、って。もし、私もその片隅に居ると仮定するなら、その通りです。見終わっての感想は、まだまだやれることがあるし、そのヒントをいっぱいもらえた、ってものでした。ちなみにあの時のデービッドバーンは67歳だそうです。これも元気づけられます。
ぜひ、「アメリカンユートピア」にインスパイア―された作品作りたいですね。その時は、もちろん、原田さんの出番ですよ。お待ちしています。
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