ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

ひょっこりひょうたん島を踊る

2010-11-15 21:53:37 | 教育

 置農演劇部の公演にもう一つ名物ができた。

 ひょっこりひょうたん島のダンス!井上さんの名作中の名作だ。このダンスを公演の終了時に必ず踊ることにしている。お客さんを送り出す時には、出口前で、送り出しの無いときには、挨拶の後、部長が一言コメントして踊る。

 これがなかなかの人気なのだ。宮内中での公演アンケートにも、何人かこのダンスが嬉しかったと書かれていた。演歌ショーの時なんか涙浮かべてる人だっている。そう、今のお年寄りにはこの歌で幼児期を過ごした人なんかも入って来ているからね。幼い頃のわくわくと胸躍らせた記憶がよみがえるんだろう。

 一昨日の公演でもこのダンスはとても好評だった。子どもミュージカルの後なんか、まさにうってつけのダンスなんだと思う。この演出思いついた自分にちょっと鼻がぴくぴくとしてしまう。

 もっとも、この趣向は井上さんの追悼の意味で始めたことなんだけどね。井上さんを悼むのに、ひょっこりひょうたん島がふさわしいのかどうか、わからない。井上さんに心惹かれた人たちにはそれぞれの深いがあることと思う。僕だって数多くの作品を見てきて、どれもこれもくっきりと刻み込まれている。井上さんの多面性に改めて圧倒される。だから、いろんな追悼の仕方があっていいって思う。

 で、置農演劇部としては、ひょっこりひょうたん島なんだ。高校生にはとてもいい。「丸い地球の水平線に、何かがきっと待っている!」「泣くのは止めよ笑っちゃおう、進め!進め!ひょっこりひょうたん島!!」って歌詞を書き出すだけで目頭が潤んできてしまう。若者の、いや、前に進もうとする人すべてへの、素晴らしい応援歌だよな。

 部員たちもとても気に入って踊っている。彼らの振り付けもなかなかコミカルで楽しい。あるいは井上さんのことなんかほとんど関係なく踊っている生徒もいることだろう。

 でも、いい。満面の笑顔で飛び跳ねている姿見ていると、僕はふっと後ろを振り向いてしまうんだ。なんか井上さんが見ていてくれるようで。で、こう言うんだ、ほら、井上さんのこと知らない高校生まで大喜びで歌い踊ってますよ。素晴らしい作品をありがとうございます。そして、幸せですね、井上さん!って。

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お座敷ミュージカル

2010-11-13 18:38:24 | 地域文化

 県大会から一週間、早くも子どもミュージカルの公演だ。3年生にとってはちょっと酷かもしれない。でも、ちょっとばっかしの蹉跌なんてぶっ飛ばして演じることを楽しむ気持ちを持ってもらいたい。なんたって、舞台に立つことが、観客の視線浴びることが、拍手もらうことが心を癒す最良の方法だ。

 さて、今回はお座敷ミュージカル。浴々センターまどかの大広間が会場だった。気使ったねぇ、立て込みと搬出。座敷に絶対傷つけるな!って厳命しておこなった。ともかくゆっくり!慎重に!ってことで、普段なら40分程度で終わる立て込みに1時間以上かかった。

 お座敷はともかく天井が低い。パネルにフレーム付けるもう天井に届いてしまいそうだ。建具はすべて柔らかい杉や檜だしね。畳ともども絶対にぶつけないってことを目標に立て込みした。

 もちろん、キャスター付きの玉座も畳の上転がすわけにいかないから、コンパネ二枚持ち込んで、その上を押して舞台に出した。

 久しぶりの公演だったので、せりふかんだり、テンポずれたりしていたけど、全体としてはいい舞台になっていた。県大会での経験が生きて、一段グレードアップできた部員もいたりして、忙しかったけど、価値ある公演だった。

 観客は無認可保育園の先生方。涙が出るほどだったって声を先頭に、おおかた好感をもってみていただけた。果たして、乳幼児を扱う人たちに高校生の子どもミュージカルが役にたったかどうかわからないけど、演劇部生徒の元気の良さは伝わったんじゃないだろうか。

 来週も2回の公演予定されている。またか!なんて思わず、まださせてもらえるって気持ちで楽しい舞台を届けよう。米沢の広幡小学校、三沢西部小学校が会場だ。

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あの日、あなたが校舎を燃やした?

2010-11-11 23:11:55 | 劇評

山形西高、K先生の脚本だ。60数年前実際にあった母校の放火事件を題材した作品。丹念な取材を基にして事件の経過を解き明かし推理している。謎解きものとしてのサスペンス感。しかも冤罪の可能性も臭ってきて最後まで引きつけられた。権威主義の学校当局となんとか犯人を挙げたい警察権力とのもたれ合いの構図なんか、今の時代にも通じるテーマで興味がつきない。

事実とフィクションとのせめぎ合いもまた興味をそそられた。演劇部員が母校の事件を調査しつつ劇に仕上げていくという構造も二層構造になっていて効果的だった。どこまでが真実でどこからがフィクションなのか、常に緊張感を伴いつつ場面が展開した。それを推測しつつ舞台を追っていくという不思議な劇体験をさせてもらった。何より、時間に埋もれた真実を追究していく姿勢、解き明かしたいとの執着と言ってもいい熱意、作者の静かだが頑として動ずることのない立ち姿に圧倒された。

 このような作品がかつて高校演劇にあっただろうか?しかも母校の歴史だ。それも汚点。誰でもが書ける作品ではない。空間的にも時間的にもたまたま巡り合わせた幸運な人間だけに許された僥倖。それをしっかりとつかみ取り追求して行ったK先生の膂力に敬意を表したい。

ただ、断然面白いこの題材をもっと生かす方法はあったのではないか。例えば、劇中劇がすべて練習風景として演じられたこと。横で部員たちが見ているという形のため、どうしても劇中劇に引き込まれにくかった。劇中劇の際の役者の演技も練習ということでやや迫真力を欠いていたように感じられた。例えば、冒頭を劇中劇の放火シーンから始めて、それ自体が劇本体であるかのように見せて引き込むとか、劇中劇シーンを独立の明かりの中で(場合によっては別ステージで)演じさせて、部員たちを見せないといった工夫があったのではないか。

それともう一点残念な気がしたのは、演劇部員たちの今の姿があまり鮮明ではなかったことだ。なんか昔の女学校の生徒たちなのか?と錯覚してしまうことも何度かあった。衣装の所為もあるが、生徒たちがみんなおとなしくて優等生で今風でない?ことによっているのかもしれない。置農の女子生徒はあんなんじゃないよなって違和感は終始感じた。演出面もあるかな。例えば整列の仕方。あまりに整然と一列だったりコーラスラインだったりして、今の時代にそぐわないと感じた。

でも、面白かった!よくぞ調べた!これもまた、東北大会で評価を聞いても面白い作品だと思った。

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『パンダの復讐』

2010-11-10 21:43:29 | 劇評

惜しくも東北大会出場を逃したけれど、いやあ、あの舞台是非出したかったよなぁってって学校が幾つかあった。そのうちの一つ酒田東高校の『パンダの復讐』作:酒田東高演劇部+木村麻由子について、観劇直後に書いた感想、劇評を上げておこう。

優れた書き手だって聞いていた。T高校のK先生が言うんだから間違いないと思っていた。

期待違わず、面白い作品だった。

まずプロットの斬新さに感心した。取り壊されることになった児童公園のパンダとウマの遊具が、最後の思いとして高校生二人の心をつなぐお手伝いをする。これまでも幽霊とかがこんな狂言回しの役を仰せつかることがあったが、なんとパンダとウマの遊具とは!まずこの目の付け所の突拍子無さが凄い。この二人を据えたこととで、全体にコミカルなやりとりが可能となったし、観客の興味を否応なく引きつけた。

もう一つの注目点は、自殺サイトの言葉のやりとりから身近な人たちの思いやりに気づくという構造だ。今そのものだなぁぁぁ。こういうものは若い作者だから書けるんだろ。こういう仕掛けの新しさが役者の演技の確かさに支えられて、笑いと共感の濃い一時間を生み出していた。再起不能のけがをしてチームのエースから転落し落ち込む男の子とその少年への片思いで悩み傷つく女の子。もしも、この二つの工夫がなかったらありきたりの傷つく若者の再生物語になっていただろう。

ただ、装置やシーンの作り方には物足りないものを感じた。クリーム色の6尺パネルが周囲を囲み放し、中央に1間パネルのない部分があって、そこが非現実な登場者たちの出入り口。これがそのまま少年の部屋にも少女の部屋にも教室にも体育館にもなる。照明によるバックアップはあるものの、装置がシーン作りの足をひっぱっていた。特に、体育館のシーンなどクライマックスシーンなわけで、それなりの作り替えが必要なのじゃないだろうか。例えば、リバーシブルの両面パネルなんか作れば、もっとスムーズに異空間を作り出せたんじゃないだろうか。少年の勉強机が教卓だったのも意図がわからない。ましてそれをキャスターでがらがらと出し入れしていたのにはちょっと興ざめした。もっとも使っているノートパソコンがアップルでふたの中央が青く輝いていたのはなかなか効果的だった。

自殺を思い止まらせようとする少女が実はその少年への片思いに悩んでいたんだってのはよく考えるとあまりに偶然過ぎるのだが、パンダとウマのマジックにはめられて、まあ、それもありかと納得してしまった。やはり、パンダの力、ウマの勝利ってことなのだろう。

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県大会が終わった!

2010-11-09 23:58:36 | 教育
県大会が終わった。残念な結果だった。
納得したか?って、それは・・・・・・・・・・・・・・!
まず出たものは事実として受け入れて次に進むしかない。
ただ、劇の批評とはどうあるべきか、それを考えた。
技術評、演技評、装置評、などの前にまず舞台そのものを評価することが大切だという当たり前のことを何度も確認したい。
①脚本を基にして役者やスタッフによって総合的に舞台上に表現された題材、テーマ、主張、方法などがまず適切なもの、見るに値するもの、考える価値のあるものかどうか。
②次にその意図されたものが十分観客伝えられたのかどうか。
これらがまず問われなくてはならないと思う。
これは言ってみれば、その批評者の演劇観、人間観、世界観を問われることだと思う。どういう題材に心惹かれるのか。どういうテーマを重要と考えるのか。どういうテーマに問題意識を感じるか、劇を見るときの一番基底にあるのはこれだと思う。簡単に言ってしまえば、何が面白くて、何がつまらないのかってことだ。人間、自分が興味のないことに心を動かされはしない。自分の中の価値基軸を離れて感動や共感など成り立たない。幅広く客観的に見る、この姿勢も大切なことには違いないが、これは本来、観劇というものの本質と矛盾している。何故なら、劇を見るということは心を動かされることだからだ。主観的な行為なのだ。心が震えない舞台に本質的な評価などできるものではない。
だから、批評を行う者は、まず、その芝居の題材やテーマをどう判断するのかから始めなくてはならない。その題材は価値がないとか、そのテーマはくだらない、とか、そのテーマは表現として成立しないとかをはっきりと声明することが必須だと思う。そして、当然何故そう言えるのかについても説明する責任があるだろう。
次にその主題やテーマがどう表現されたかの判断をすることになる。その劇団なり演出家なり脚本家なりが目指したものが成功したのかどうかの判断だ。脚本の展開、人物の魅力、人物同士の関係性、シーンの設定、せりふの善し悪しなど台本に関わる問題。さらに、舞台空間の作り方やテーマのとらえ方、人物の動きや位置取り、装置や衣装、道具など舞台美術も含め演出的な事柄。こういった問題が、主題やテーマ、主張との関わりの中で判断されなくてはならない。ここで、ようやく技術評や演技評が入り込んでくるわけだが、しかし、あくまで、その題材、主題、テーマを舞台上に表出するにあたってどうだったのかという視点を抜きにしてはならない。
例えば、照明の失敗や役者の発声などについて言及するとしても、それが劇の追い求めるものを致命的にあるいは大幅に阻害してしまった時に言われるべきものだ。それも、その失敗がどう舞台を壊したかどう邪魔だてしたかという視点を明確にして述べられなくてはならない。この時点での技術評、演技評はあくまでその舞台の目的に沿って述べられなくてはならない。技術一般、演技一般の批評は無論あるべきだが、それは、もっともっと後から出てくる事柄だし、技術的なアドバイスとしての意識を明確に持って行うことが必要だ。
この二点、テーマの是非とその表現達成度、をはっきりと意識した批評が求められる。高校演劇の審査講評が時に物足りなかったり、時に納得行かなかったりするのは、この部分に無自覚に批評が行われたり、自覚していても敢えてそれを無視して講評するからなのではないかと思う。
その題材やテーマがダメならダメとはっきり言うべきなのだと思う。何故ダメなのかも含めてしっかりと説明責任をはたすべきだと思う。それが作品を根底的に否定することであっても、心の中に芽生えてしまったことははっきり伝えるべきなのだと思う。生徒を傷つけてはいけない、顧問に失礼にあたるなどと遠慮する必要はない。自分自身の価値観をはっきりと宣言することなくして批評など成り立たないのだと思う。
批評は、自らを省みる行為だ。自分の本音をさらけ出す営為なのだと思う。
難しい事柄をあれこれ論ってみたが、要は、その舞台が面白かった、面白くなかったかってことなのだ。

以上、自戒の意味を込めて考えをまとめてみた。私も劇評を試み、それをブログを通して公にしているからには、この批評の原則をしっかり踏まえた批評をしていかなくてはならないと改めて自分自身に言い聞かせている。


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