服もそうだけど、履かなくなった靴、たまってんだよねぇ。リサイクルショップで買い取ってもらえるようなブランド品しゃなく、かと言って、さっさと可燃ごみに出すてのも、気が引ける、そんな靴、下駄箱裏の保存空間にかなりの数、積みあがってる。
いずれ処分だな、って思いつつも踏ん切りがつかなかったこいつら。一足一足、思い出あるからなぁ。見ていると、過去の自分の暮らしぶりがくっきりと浮かび上がって来る。若かりし日の山歩きの思い出、スーツ姿で通した勤務時代、似合わぬ洒落っ気を出した惑いの季節、靴には時々の自分が宿っている。
できれば、燃やすのでなく、活用してくれたら、なんて虫のいい考えだよなと、身勝手な願いを諫めていたら、出で来た。靴とカバンの引き取りリサイクル!町の環境課が音頭取りして始めるんだって。それはいい!そりゃ助かる!
3週間も前から、Xデーに向けて、古靴のおめかしを続けて来た。神さんは、母親の分も東京から運んで来る入れ込みようで、段ボール2箱、20足ほど。こっちは、つい先日、お別れをした初代ランニングシューズ、ミズノウェイブライダーも含めて7足、思ったよりは少なかった。
履き古したってわけじゃないが、こんな型遅れの品々、本当に引き取ってくれんのかい?半信半疑、ものは試しと会場に持ち込んでみた。
担当者らしき人に、恐る恐る聞いてみると、引き取りますが、時間は6時からです、ええーっ?!我が家のカレンダーにゃ、忘れてならじと、15時~19時と書き込んであったゾ。一瞬、そんな!間違いじゃ?っと不平が口に出かかったが、こっちの見間違い以外にあり得ぬ行き違い、ぐっと飲み込んだ。多いんだよな、こんな思い違いが。年取った証拠。
自覚あるから、素直に、そんじゃもう一度出直して、と言いかけたら、いいですよ、今お持ちなんでしょ、引き取ります!っておおー、見事なさばけ方じゃござんせんか!こういう融通の利く対応、好きだなぁ。今じゃ、規則、きまりでギスギスしてるけど、昔は、こんななあなあが世間を風通し良くしてたもんなんだ。とは言っても、そんなルーズさが、森友とか加計なんかのお友達めんごめんごにつながったりしたわけだから、律義さ几帳面さってもんも大切にゃ違いないんだけどね。
ご厚意に甘えて、段ボール箱3つ、受付テーブルに持ち込んで、1足ずっつチェック。うわーっ、なんか試験受けてる緊張感!靴底の減り具合、形の崩れ、紐のあるなし、そんなところがチェックポイントらしかったようで、すべて合格!やったぁ!って喜ぶほどのことじゃないんだが、なんか、息子の入試結果発表みたいな高揚感だった。
どんな人たちが履いてくれるのか、聞いてみたが、今年初めてルートができまして、・・・と引き取り先のその先の流れについては詳しくはないご様子。多分、開発途上国とかの人たちに送られるのか、とか思ってみたが、今や日本だって、貧困大国、正規社員のOLでさえ、ユニクロに手が出ないって話しも聞こえて来るし、困窮者にはあんなお古でも重宝してくれる人もいるのかもしれない、とも思い直した。
どんな国のどんな人が履いてくれるにしても、ありがたいことだなぁ。なんか、申し訳なくて、できればおまけとか付けたい気持ちになる。中でも、4月の霞ヶ浦マラソンまで履き通したミズノウェイブライダー、テレビで見たアフリカの裸足のランナーたちとか、サッカー少年とかが使い尽してくれたら、これはもう、感激だな。でも、踵の減り方が偏ってるから、走り方に癖が付くと申し訳ないなぁ、なんて、思いつつ、まだ使えるものを不用品として出す僕らの暮らしは、やっぱ、どこか間違ってんだろう。