新・遊歩道

日常の中で気づいたこと、感じたこと、心を打ったこと、旅の記録などを写真入りで書く日記です。

ボストン美術館 浮世絵名品展

2008年08月07日 | 福岡市美術館

Boston ボストン美術館に5万点も収蔵されているという浮世絵。その中から、ほとんどが日本初公開というものが、136点も福岡市立美術館にやってきました。

『浮世絵史の教科書ともいえる充実した構成!』と歌っているように、その流れがよくわかる構成になっていました。

第1章は「浮世絵初期の大家たち」。17世紀後半、草創期の菱川師宣たちの墨一色の肉太の絵から、紅摺絵へと発展していく流れが、はっきりとわかるように陳列されていました。

第2章は「晴信様式の時代」。画期的だったのは、18世紀後半、絵暦の流行で、色数の多い錦絵が開発されたこと。晴信が活躍します。重ね摺、空摺りなど工夫を凝らした技法には、彫師、摺師の存在も忘れてはいけません。名前が出るのは、いつも絵師だけ。彫師、摺師がいなかったら、単に肉筆画だけになっていたと思います。

第3章は「錦絵の黄金時代」。18世紀末には、豪華な多色刷りの錦絵がさかんになって、大首絵の歌麿、個性的な役者絵を描いた写楽、八頭身美人画の鳥居清長などが、江戸の繁栄の中で活躍します。

第4章は「幕末のビッグネームたち」。江戸後期には、風景画や花鳥画などの新しいジャンルが生まれ、北斎、広重、国政、国芳などが活躍し、海外にも大きな影響を与えるようになりました。

多色刷りの仕組みは、口頭の説明だけではなかなか理解できません。そんな疑問を解決するかのように、色の数の版木と、摺り重ねていくたびに多色摺りの絵のになっていく過程が、わかりやすく陳列されていました。でも、透かしの部分や、蚊帳の細かい網目なんかは、どんなふうにして彫るのでしょうか・・・。

明治の時代に、これだけの作品がはるばる海を越えてアメリカに渡り、良好な保存状態で秘蔵されていたことは、ある意味ではラッキーだったのかもしれません。

上のパンフレットの写楽の≪金貸し石部金吉≫は、昨年の「ギメ東洋美術館所蔵浮世絵名品展」の時も展示されました。浮世絵だから、同じものが何枚もあることはわかってはいますが、こんな風に数を揃えた名品展になると、やはり外国からの里帰り展になるのが、ちょっと悲しい気もします。

着物の絵柄を見るだけでも、その図案化のすばらしさに心を打たれます。時代を越えた斬新な感覚は、今でも新鮮に心に響きます。日本美術を生み出した精神構造は、ゴッホやモネが浮世絵のとりこになったことでもわかるように、日本人として誇るべきことだと思いました。

この展覧会は、今年に入って名古屋から新潟へ、そして福岡にやってきたものです。期間は8月31日まで。10,11月は江戸東京博物館に巡回の予定。1年かけて日本を縦断します。

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