<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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結局、会社のメンバーとの合流地点である陸前落合駅に到着した時、時刻は午前10時30分を過ぎていたのだった。
なんのことはない、仙台空港に到着してから陸前落合の駅まで2時間もかかるという信じられないことになった。
トラブルもなく普通に来ているのに。
なんだか大阪から仙台に来るよりも、仙台空港から仙台郊外の陸前落合に行くほうが多くの時間を要してしまったような感覚だ。

午前中の打合せで仕事はほとんどすんでしまったのが、午後も少々お客さんと話す内容があったので、12時前にお客さんに断ってからランチを食べにいくことにした。
レストランが混雑する前に食べに行こうという算段である。
この時私はあまり腹が減っておらず、猛烈に食べたいという感覚はなかった。
なぜなら、仙台空港からこちらへ向かう途中で、あまりにお腹が減ってしまったため、ランチまで我慢することが到底できなくなってしまい、仙台駅で立ち食いそばを食べてしまっていたからだった。
しかし、東京からやってきている仲間の社員は腹を空かせている。

「お腹へってないから、勝手に食べに行ってや」

というような冷たい態度はとれない。
それに、互いに出張中の身分なので何かと積もる話もあろうもの。
食事をしながら情報交換が理想的な雰囲気だ。
もっとも情報交換といっても社内の勢力争いの話だとか、誰それさんは調子に載っているが今に痛い目にあう、○○子は結婚したけどできちゃった結婚だった、という類の話になることもあり、正直そんな話しになるのであれば社員と一緒に食事はしたくないものだ。
でも、私の仲間はそんな話よりももっと趣味に傾倒した話になることがおおい。
サイクリングに行ったら下り坂で転倒して鎖骨を折ったが、「ええ歳をして」と誰にも同情されなかった話。
山梨のパスタ屋の大盛りは驚異的だというような話。
錦糸町のキャバクラにはもう二度と行かない。
といったような話が交わされるのだ。
従ってランチ不要の断りができず、一緒に食べに行くとこになってしまった。
正直、食べに行かなければよかったのだ。

東京からは二人来ていたのだが、二人はもうすでに仙台に1週間泊まり込みですっかり現地事情に詳しくなっていた。
二人が言うには、
「仙台のラーメン屋は凄いんですよ」
という。
「何が凄いの?」
と訊くと、
「行列ができているんです」
とのこと。
行列の出来る店ぐらいどこにでもある。
「で、それで?」
と私。
「昨日なんか外で30分、中で30分待って、食べられるまで1時間もかかったんです」
「じゃあ、有名な店やったんやね。味もバッチシ?」
「...........」
沈黙があたりを支配した。
行列ができるということは、美味いから行列ができるのであって、そんなことは世間一般の常識だ。
「おとといも、そうだったんです。」
「東京の人と仙台の人は味に対する感覚が違うのか、それとも東京の我々がおかしいかです。」

東京の人の味覚がおかしいというのは私も時々思うことで、ある意味当を得ているかもしれない。
もんじゃ焼きだとか、濃口醤油のうどんだとか、白ネギのラーメンだとか、
「なんやねん、これ」
というようなものが少なくない。
関西のお好み焼きや焼きそばに至っては、関西系チェーン店以外では「?」というような味であることは何度も経験しているところでもある。
だから東京の感覚では仙台の味が理解できないのかも、というのが二人の考えだ。

ということで、今日もまた別のラーメン店に行って味を確認しようという計画のようだ。
大阪から来た私がなんと答えるのか。
二人は知りたくて仕方がないという表情を浮かべて自動車を出発させたのであった。

つづく

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