そのラーメン屋さんは何の変哲もない普通のラーメン屋さんだった。
ただ、その普通のラーメン屋さんに11時30分だというのに10人以上の列ができていることで、これら周辺のいくつかのラーメン屋さんも同様なのであった。
「ほら、もう行列ができていますよ」
と我が同僚。
大阪人の私としては飲食店前で並ぶのはあまり好みではない。
大阪ではうまい店であっても行列ができることは滅多に無く、
「行列を作って待つぐらいやったら他の店で食べよ。時間の無駄やし。」
と、Time is Money の大阪人ならではの発想に至るのである。
従ってこんな郊外のラーメン屋で列を作って待つ、という感覚が理解できない。
それだけ美味しいということか、はたまた安いということなのか。
私は大いに疑問を感じながらGWだというのに少々肌寒い中をぼーっと立っていたのであった。
「ご注文は何にされますか」
驚いたことに、このラーメン屋はスターバックスよろしくメニューカードを持って外で待っている客から注文を受けている。
これは商魂たくましいというかアホらしいというか。
並び始めて15分以上経過しているこのときに、
「もう、この辺の客は帰らないだろう」
という考え方で、なかなか客を甘く見ているというものだ。
ここで私が酔っ払いモードで軽く理性を喪失していたりなっかしたら、一番高いものを注文して、別のお店に移動しただろうに。
しかし、ここはシラフであり東京からの同僚も一緒にいる。
当りまでが、我慢をして「チャーシューラーメン 680円」を注文したのであった。
店の中はカウンターのみで、テーブする席はない。
従って私たち三人はカウンター横一列に座らされ、ラーメンが出てくるのを待った。
カウンター向こうは厨房だ。
この時すでに待ち始めてから40分が経過。
私が40分も列を作って待ったのは過去にUSJのアトラクションと、1970年の大阪万博のパビリオン前の2回だけである。
図らずも悔しくも、仙台のラーメン屋で待つことになろうとは。
人生色々あるものである。
列を作って外で待っている時にオーダーをとっているので、すぐにラーメンが出てくるかというと、そういうこともなく、さらにカウンターで10分以上待たされることになった。
これで旨いラーメンが出て来なければ世の中間違っている。
私は、そう叫びたくなってくる気持ちを抑えながらラーメンを待っていた。
すでに仙台駅で食べた立ち食いそばの効果はなくなっている。
で、結果はというと、世の中は間違っていたのであった。
ラーメンがカウンター越しに「へい!お待ち」と渡された。
丼に並々と盛られたラーメンとつゆ。
かなり豪華そうだ。
でも、何かが違う。
なんだろう?
そう、チャーシューラーメンを注文したのにチャーシューが2枚しか入っていないのだ。
これは、もしかすると間違っているのかもしれない。
隣に座っている同僚が恐る恐る伝票をみてみると、「ラーメン」のところにチェックが入っていてチャーシューラーメンにはチェックは入っていない。
なんだ、これは。
「間違ってますね。交換してもらいましょうか?」
と同僚。
しかし私はすでに割り箸を丼の中に突っ込んでしまっていた。
いまさら交換というのも、なんだと思い、待ったをかけて、レンゲで汁を掬って飲んでみた。
「.........」
「どうです?」
「........ラーメンはなんぼ?」
「500円です」
「...このままいこか」
私はスープの味を確認した瞬間、価格の高価なチャーシューラーメンに変更させる必要は一切ないと判断したのであった。
この判断はラーメン屋を出てから2人の同僚に絶賛されることになった。
それにしてもどうしてこういうラーメンに行列ができるのだろうか。
理解に苦しむ。
ラーメンのスープは出汁が十分に出ておらず、醤油で色がついて、そこに豚の脂が浮いている、というようなシロモノなのだ。
しかも、2枚入っていたチャーシューはカスカスで甘みは殆ど残っていない。
「なんじゃこれ!」
と、往年の刑事ドラマの人気デカの死に間際のセリフのような感じなのであった。
正直、インスタントラーメンのほうが数100倍はうまい。
東京の2人が自分たちの味覚が間違っているというのではないことを納得し、喜んだのは言うまでもない。
「やっぱり、私たちじゃなかったんですね」
「.....そんな場合やないやろ」
仙台で美味しいラーメンに出会えない理由がよくわかならない。
宮城県の南隣、福島県には会津喜多方ラーメンという実に美味なラーメンが有り、北隣りの岩手県にはこれまた盛岡れーめんなる、すご美味の冷麺がある。
またその西隣の秋田県には稲庭うどんという、東北地方なのに関西テイストでかつ、関西の饂飩の上をいくのではないかというぐらい美味い麺がある。
仕事がすべて終わって仙台駅に車で向かう途中もラーメンの謎解きはできなかった。
「あ。ここは行列ができてませんね」
「もしかすると、美味いかもわからへんな。」
「どうしてです?」
「だって、熊本ラーメン、って書いてあるもん」
つづく
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