先に映画を見てしまったら、なかなか原作を読む気力が起こらずそのままになってしまうことが少なくない。
「英国王のスピーチ」
も、もしかするとそういう作品になるところであった。
「英国王のスピーチ 王室を救った男の記録」(岩波書店)を図書館で手にとったのはほんの偶然。
たまたま「アップルを創った男 スティーブ・ウォズニアック」という本を取ろうとしたところ、その横にあった本書を見つけたのだ。
「な〜〜んだ、映画の原作本か」
と思ったのだが、ペラペラとページを捲ってみると単なる原作本ではないことを発見した。
なんと小説ではなくノンフィクションなのであった。
ノンフィクションは私の大好きなジャンルである。
ということは、この本は是非読みではないか、と思った。
それと同時に映画の原作はノンフィクションだったのかと感心もしたのであった。
私は大いに興味を誘われてスティーブ・ウォズニアックの前に本書を読むことに決めたのであった。
予想通り、本書は映画を遥かに超える濃い内容だった。
映画では描ききれなかった数々のエピソードが紹介されている。
とりわけ映画は最後のシーンが第二次世界大戦参戦で終わっているのだが、その後のジョージ6世王とライオネル・ローグ氏の交流が描かれているのが注目ポイントと言えるかもしれない。
前線へ行幸して兵士たちを勇気づける姿。
ロンドン市民の心を気遣う姿。
戦時下のクリスマススピーチ。
などなど。
身分の差、15歳の年齢差を超越した友情。
ローグは王を勇気づけ、王はローグを労る。
一つ一つのエピソードが読者の胸を打つのだ。
そんな爽やかさと重厚さを併せ持つ作品なのであった。