萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚165

2014-07-28 02:27:00 | 雑談寓話
深夜だけど目が冴えてるのでトリアエズ載せます、昨日はバナー減ったけど楽しんでもらえてますか?

雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚165

正月2日夜、御曹司クンと前も行った和ダイニング駐車場付に行き、
トリアエズの一杯目に口つけたら早速に訊かれた、

「なあ、大晦日に呑んだ3人目ってどんなやつ?」

やっぱりソレ気になっちゃうんだ?笑
たぶん訊かれるだろう予想していた質問に笑って答えた。

「親戚がよくいく歯医者だよ、笑」
「あ、そういえば歯医者に行くってメールくれたよな?あれかー、」

頷きながらビール飲んで、
お通しの豆腐に箸つけると御曹司クンまた訊いてきた、

「なあ、その歯医者ってどんなやつ?若い?男?」
「同世代の男だけど?笑」

答えながら質問続投されるカンジして、
だったら一番速いかなって思いついたまま携帯電話を開いて見せた、

「こんなメールくれる人だよ、笑」

From:歯医者
本文:こんばんわ、あの本読み終わりました。
  謡曲はそんなに知らないんですけど、これを読んで原作の本みたいのだけでも読もうかなって思いました。
  古典は学校の授業でテストのために読んだことしかなくて正直、勉強の延長でつまらないだろうと思っていたんです。
  でもこれ読んで見方が変りました、長い年月を読み継がれてきただけの内容があるんだと認識をあらためたところです。
  <以下感想中略>
  またおススメの本教えてくれますか?

さっき着信したばかりの長文メールを見せて、
そしたら御曹司クンにらめっこして電話を取ろうとしたから手を引っ込めて笑った、

「なに勝手に人の電話触ろうとすんの?笑」
「じゃあ10秒だけ貸して、拗」

なんてナンカ拗ねてくれて、
その行動が予想できる気がして軽くSってやった、

「このメールとアドレス削除する気だろ?キモチ悪いねえ、笑」

たぶんそういう事なんだろう?
そう笑ったら御曹司クンはビールジョッキの翳で拗ねた。

「だーってさー会って1日とかでソンナ長いメールしてくるとかナンカ嫌じゃん、妬けるじゃん、拗」

やっぱりそういう発想なんだ?笑
こんなとこ乙女系な相手に笑ってやった、

「大晦日に知り合ったから3日目けど?笑」
「そんなの同じですー俺なんか1年以上もー付合いがあるのにさーなんだよそいつ、拗」

すっかり拗ねモードでビール啜りこんでいる、
こんな相変わらずに可笑しくて予想していたことを言ってやった、

「おまえも大晦日に長文メール送って来たろ、アレの返信が短くて拗ねてたよね?笑」
「っ、…解かってんなら返信モットくれたら良いじゃん、拗」

とか言ってまた拗ねて、
ソレがめんどくさかったまんま笑ってやった、

「おまえが長文メールの時って拗らせてるよね?ソウイウ時はメールでも電話でも延々メンドクサいから呼びだしたんだよ、顔見て話す方が短時間で済むから、笑」

ホントめんどくさくなる、だから今こうして向きあっている。
そんな本音に御曹司クンはふくれて拗ねて、でも嬉しそうに笑った、

「だったら長文メールした甲斐があったなー俺、マジ逢いたかったからさー…離れてると尚更になんか、」

言いかけて御曹司クン俯いた、
その空気にドウしちゃったのか解かるから、おしぼり出してやった、

「いちいち泣くなよ、ほんとメンドクサイねえ?笑」

軽くSって出して、
その言葉ごとおしぼり受けとると御曹司クンは顔拭いて拗ね笑った、

「ほんとめんどくさい男ですよーメンドクサイ相手にメンドクサイ恋愛しちゃってますーでも大好きだし今幸せだし、拗×笑」

もう開き直ってる?
こんなトコ前より幾らか強くなったかもしれない、そんな相手にまたSってみた、

「今幸せなら放置してもイイ子にしてな?歯医者に返信するから、笑」
「っ、なんだよそれー俺の前でムカつくっ、拗」

また拗ねてビールジョッキ呷って、だけど御曹司クンは笑っていた。
ホントは別に急ぐ返信でもない、今も打ったところですぐ送らないかもしれない?
それでもジントニック呑みながら受信メール眺めて、どの本を次はおススメするか考えた、



第77話「決表5」校了、Savant「夏嶺の色6」読み直したら校了です。
校正ほか終わったらAesculapiusの続き+短篇連載を予定しています、

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取り急ぎ、



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第77話 決表act.5-another,side story「陽はまた昇る」

2014-07-27 10:10:00 | 陽はまた昇るanother,side story
snowstorm 雪風の先



第77話 決表act.5-another,side story「陽はまた昇る」

キャンパスは白かった。

煉瓦造り、石造り、木造、それからコンクリート。
古いも新しいも白銀に静かで眠るような気配は優しい、けれど学生すれ違う。
この雪でも学びに来る仲間がいる、それが何か嬉しくて周太は雪のキャンパス片隅に笑った。

「ん…来て良かった、」

さくりさくり登山靴に大学の雪を踏む。
ここに初めて来た日も雪だった、あれは3月春の初めの雪。
あのとき隣で歩いていた友達は今、この場所に毎日を通うため模擬テストに向かう。

『自分で自分のこと選んでみたいって今、本気で想えるの。だから私、絶対に諦めたくないな、』

3月終わりの雪のなか初めて青木准教授の講義を聴いた。
始まりは新宿の交番、あの場所で青木と出逢いあのラーメン屋で再会した、そして受講証と本を受けとった。
きっと美代なら一緒に行きたいだろう?そう想って気軽に誘った樹木医の公開講座が一人の女性の未来を変えていく。

『私、東大の理科Ⅱ類に合格する。農学部に進んで森林科学専攻に行きます、私の夢を本気で自分で掴みに行くね、』

親に言われた通り農業高校へ進んでJAに就職した。
大学へ進むなど誰にも言えなくて、そんな理由に本気で努力したことが無かった美代があの一日で運命を選んだ。
そんな記憶ごと歩くキャンパスは静かで、いつもの講義棟も雪のなか音が無い。

―今日は青木先生も来てないよね、JRはダイヤ乱れてるし…地下鉄だけなら良いけど、

いま自分が住む場所からここは歩いても帰られる。
東京理科大学も歩けてしまう、箭野も散歩しながら帰ってきたと笑っていた。

『大学に行ってきた帰りだよ、卒研の合格と専攻科への進学が内定したんだ、』

雪の道に笑ってくれた言葉は嬉しかった。
箭野は進学する、そんな言葉に自分も夢を見つめて今の美代を想って樹医の言葉が響いた。

『君が、東大に入るんです。よかったら私の研究室に入ってください、挑戦前に諦めたらダメですよ?』

3月の雪に青木准教授が笑った言葉に美代は足掻くことを決めた。
そして今1ヵ月後にセンター試験を控えている、きっと2次試験への切符も掴むだろう。
その前哨戦となる模擬テストの今日に箭野の進学を聴いて、だから自分も大学に来たくなって歩いてきた。

大学院進学、この夢に自分も挑めるだろうか?

「…賢弥と約束したんだ、僕も、」

そっと独り言葉にして歩く道、雪さくり踏みながら学舎を仰ぐ。
冬枯れた梢の向こう研究室の窓は静かで、映る白い空に遠い山を見てしまう。
同じ都内の雪の森、あの場所から始まった自分の夢は叶えられるのだろうか?

“周、きっと立派な樹医になれるよ?本当に自分が好きなこと、大切なことを忘れたらダメだよ?諦めないで夢を叶えるんだ”

幼い冬は9歳だった、あのとき父は祈るよう微笑んだ。
あの笑顔が大好きで自分の世界だった、けれど父の死と同時に約束ごと忘れてしまった。
こんなに大切な夢と言葉をなぜ忘れてしまったのだろう?その真相の欠片がある場所へと陸橋を渡った。




やっぱり図々しいだろうか?

そんな迷いごとエントランスで登山靴の雪落とす。
今日は雪の土曜で大学も休み、公開講座も当然ないから手伝い日でもない。
呼ばれてもいない日にいきなり研究室を訪ねることは申し訳ない?その思案にも一歩入って階段を見あげた。

「…いちおう研究生ではあるけど、ね?」

農学部と同じに文学部も籍はある、そう差配してくれた。
それが厚意だからこそ甘えたら申し訳なくて、迷うまま佇んだ背から声かけられた。

「周太くんじゃないか?やっぱ雪の中でも来るんだなあ、」

低く明るい声に呼ばれてもう誰だか解かる。
こんなふう迷うたび呼んでくれる相手に周太は振り向いた。

「こんにちは、田嶋先生…こんな日に伺ってすみません、」

遠慮がち挨拶した前、くしゃくしゃ髪の笑顔ほころばせてくれる。
ワイシャツは第一ボタン外して緩めたネクタイ、いつもどおり着崩した教授は闊達に笑った。

「なに言ってるんだい、君を研究生にひっぱりこんだのは俺だぞ?ほら行くぞ、」

ぽんっ、ダッフルコートの肩かるく敲いて階段を上がってくれる。
その手はコンビニの袋提げているのにコートを着ていない、こんな日の薄着に尋ねた。

「先生、その恰好で買物に行ったんですか?」
「うん?そうだが何だい?」

なんでこんなこと訊くんだろう?
そんなトーン笑ってくれる気さくな笑顔に訊いてみた。

「あの、寒くないんですか?雪なのに、」

スラックスにワイシャツとネクタイ、しかも相変わらず袖捲りしている。
それでも足元だけは登山靴で、このアンバランスな恰好した学者はからり笑った。

「確かにちょっと寒いな、でも雪止んでるし不自由はないぞ?」

くしゃくしゃ髪の浅黒い顔は元気に笑ってくれる。
端正な笑顔、けれど年齢よりずっと若い貌に愉しくなって尋ねた。

「田嶋先生ならマッターホルンも寒くなさそうですね?…アイガーもグランドジョラスも、」
「ははっ、確かに他のヤツラよりは薄着だったかもしれんな?」

低く響く声からり笑ってくれる、そのトーンは自由な闊達が温かい。
こんな聲と笑顔に父の若い日は明るかった?そう想うだけで嬉しくて、だからこそ哀しくなる。

“ But thy eternal summer shall not fade, ”
 けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、

William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet18」

この詩を父の碑銘に選んでくれた人、そんな彼こそ父の「thy」だったろう?
このこと今日こそは伝えてあげたい、そして自分も教えてほしい事がひとつある。
だから来てしまった研究室の扉に着いて、かたん、開錠されて祖父の教え子は笑った。

「紅茶を淹れてあげるよ、相変わらず散らかってるがな?」

I give it to an epitaph of savant Kaoru Yuhara.

そう父を讃え碑銘を贈ってくれた人、その笑顔が「紅茶」と笑ってポットの前に立ってくれる。
こんなふう父も雪の日に淹れてくれた、あの幸せな時間のままに冬の研究室で夏の詩が謳いだす。

And summer's lease hath all too short a date.
Sometime too hot the eye of heaven shines,
And often is his gold complexion dimm'd;
And every fair from fair sometime declines,
By chance or nature's changing course untrimm'd;
But thy eternal summer shall not fade,
Nor lose possession of that fair thou ow'st,
Nor shall Death brag thou wand'rest in his shade,
When in eternal lines to time thou grow'st.
 So long as men can breathe or eyes can see,
 So long lives this, and this gives life to thee.

夏の限られた時は短すぎる一日だけ。
天上の輝ける瞳は熱すぎる時もあり、
時には黄金まばゆい貌を薄闇に曇らす、
清廉なる美の全ては いつか滅びる美より来たり、
偶然の廻りか万象の移ろいに崩れゆく道を辿らす。
けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、
清らかな貴方の美を奪えない、
貴方が滅びの翳に迷うとは死の神も驕れない、
永遠の詞に貴方が生きゆく時間には。
 人々が息づき瞳が見える限り、
 この詞が生きる限り、詞は貴方に命を贈り続ける。

この詩は本来14行詩、だけど田嶋は4行目から父に贈ってくれた。
短すぎる、そう告げる一行から始めてくれた想いは愛惜が温かい。
そして父も同じ想いで生きていた、その真実を伝えたくて微笑んだ。

「田嶋先生、先日は父の本をありがとうございました…母も喜んでいます、」
「おっ、見せてくれたのか?」

手もと動かしながら振り向いて笑ってくれる。
闊達に若い貌は愉しげで、ふっと悪戯っ子に瞳が笑った。

「そうだよなあ、君がいるってことは馨さんにも奥さんいるんだもんな?あの馨さんが恋愛ちゃんと出来たんだなあ、」

可笑しそうに笑いだす貌は尚更に若くなる。
父と変わらない齢のはず、もう五十は過ぎている、それなのに笑顔は少年のまま明るい。
そんな笑顔の声も眼差しもはずむよう若さ眩しくて、その言葉になんだか照れてしまうまま頷いた。

「父もその、れんあいちゃんとしました…ってきいています、」
「おっ、やっぱり恋愛結婚なんだな?そうだろうなあ、」

笑いながら納得したよう頷かす。
そしてティーカップ二つ窓辺の応接セットに置いて闊達な笑顔は言った。

「よし、一杯やりながら馨さんの恋話を聴かせてくれ。ちゃんと聴いてるんだろう?ロマンチストな馨さんだからな、可愛い息子に話さない筈がない、」

ああそれ僕にはいちばんの難題かも?



(to be continued)

【引用詩文:William Shakespeare「Shakespeare's Sonnet18」】

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚164

2014-07-27 00:56:12 | 雑談寓話
標高2,480m北横岳@北八ヶ岳の下部を歩いたんですけど正式名称は「横岳」なんだとか。
南八ヶ岳に標高2,829mの横岳があるので429m高さ負けした北の横岳が通称を付けられたそうです。
で、遅くなりましたが雑談ぽいやつの書き直しVer貼ります、バナー押して下さった方に感謝で、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚164

正月2日夕方に自宅へ帰ってきて御曹司クンと会うことになり、
こっちの最寄駅に車で来てくれるから2時間ほどノンビリ@自宅して、
パソコン開いて調べたり書いたり愉しんでたら携帯が鳴って、御曹司クン連絡かと思ったら違った。

From:歯医者
本文:こんばんわ、あの本読み終わりました。
  謡曲はそんなに知らないんですけど、これを読んで原作の本みたいのだけでも読もうかなって思いました。
  古典は学校の授業でテストのために読んだことしかなくて正直、勉強の延長でつまらないだろうと思っていたんです。
  でもこれ読んで見方が変りました、長い年月を読み継がれてきただけの内容があるんだと認識をあらためたところです。
  <以下感想中略>
  またおススメの本教えてくれますか?

なんて歯医者メールだったから意外だった、

From  :(無登録のアドレス)
subject:歯医者です
本文  :昨日はありがとうございました、楽しかったです。
    本さっそく読んでいます、まだ全部は読めていませんが面白いです。またおススメ教えてもらえますか?

なんてメールが帰りの新幹線@元旦に着ていたけれど、
営業用スマイルってカンジの男だから真に受けていなかった、

こいつ社交辞令なんだろな?

って正直なトコ思ってたから2日夜メールは意外だった、
常連患者の身内にススメられて買った本だから表面だけ合せてる、ホントには読まないだろう?
読んでも斜め読みだろくらいにしか想っていなくて、だけど長文感想をくれたから考え改めた、

本当は誰かと話したいヤツなんだろな、このままメールやりとりする流れとか?笑

なんて予想しながら長文また見返して、
次はなに勧めたら良いか考えていたら御曹司クンから電話が来た。

「駅着いたよ、」

ってワケで家を出て駅へ歩いて、
前も待ち合わせた場所に行ったら何度めかのセダンが停まっていた、
で、助手席いきなり開けて乗りこんだら御曹司クンが笑った、

「ほんと来てくれたんだー…久しぶりだな?」

照れ臭げに笑った顔に久しぶりだなって思った、
休日プライベートで会うの久しぶりで、なんか懐かしいな思いながら笑った、

「年末に廊下であいさつしたじゃん、笑」

そんなこと言ってるんじゃないくらい当然解ってる、
でも敢えて知らんフリした返事に御曹司クン拗ねた、

「そーゆー意味じゃないだろばかっ…もー年明けてもSだよな、拗」
「イヤだったら降りるけど?笑」

ほんと嫌ならすぐ帰るよ?
そんな意志表示に扉へ手を掛けたら御曹司クンはギアをDに入れた、

「シートベルト締めろよ、拗×笑」

拗ねながらも笑って車動かし始める、
だから素直にシートベルト締めて言った、

「あんまり遠くはNGだよ?明日があるから、笑」

明日は1月3日、まだ仕事は休み。
だけど予定に笑ったらフロントガラス越し御曹司クンがこっち見た、

「明日って、またデートで圏外?」

また、ってなんかアレな言われようだ?笑
なんか可笑しくて笑って答えた、

「またって言われる程デートしてるっけ?笑」
「してるだろ、この正月だってさー拗」

なんて即答されて困ったな思った、
こんなふう感情は大きく食い違う、そのまま可笑しくて笑って言った、

「ふうん、大学の友達と呑んでもデートなんだ?笑」
「俺からしたらそうだもんねー男でも女でもデートですー、拗」

なんてまた即答されて、で、ちょっとSってやった、笑

「ホント言うともうひとり一緒したんだよね、それってオマエ的には3Pってカンジ?笑」

こんなこと言ったら拗ねまくって照れるんだろな?
そんな予想通りに御曹司クンは昏い車内でも赤くなった、笑

「っ、だからそーゆー言い方すんなばかっ、ほんっとまじばかイジワルほんとSだっ、拗」
「だからイジワルでSだって言ってるよ、ソンナ拗ねるなら会わなきゃ良いじゃん?笑」

すぐツッコミ入れて本音に笑ってやった、
こういう自分だからもう止めたら良いのに?そんな発言に信号で停まった運転席は言った、

「イジワルSでも好きなんだよ、ほんとは優しいの知ってるし、」

なんでソンナ知ってるなんて言えるんだろ?
そんなこと言われなくても答え解かる気がした、それでも笑って訊いてやった、

「こんなにイジワルSだって言うクセにねえ?何をドウ知ってるワケ?笑」

こういう訊き方ってホントは意地悪だ?
だってまるで駆け引きしているみたい、そういうのホントは好きじゃない、
だけど好きじゃないからこそ御曹司クンにはしてやりたかった、ソレで「優しい」を消してくれたら良い、
だけど御曹司クンは青信号にアクセル軽く踏んでフロントガラス越し、生真面目に微笑んだ、

「たった一人の人をずっと大切にしてるとこ知ってる、ずっと後悔して大好きで…この間のクリスマスも花束持って行ったんだろ?」

どうしてソウイウトコ言ってくれるんだろ?

コレは自分の唯一の弱点で誤魔化せないこと、それを御曹司クンは気づいている。
だから今も生真面目な顔で微笑んで言ってくる、そういう貌にはガラス越しでも嘘吐けない。



第77話「決表4」校了しています、Favonius「少年時譚28」校了です。
Aesuculapius「Saturnus28」倍くらい加筆します、

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山岳点景:夏空風光

2014-07-26 23:20:00 | 写真:山岳点景
夏空、岩×緑



山岳点景:夏空風光

北横岳@長野県北八ヶ岳の下部を歩いて来ました。

標高2,480m北横岳の登り口は坪庭というトコです。
正式名使用は溶岩坪庭自然保護区、標高2,300m付近+33万平方メートルの溶岩台地。
一周が30分くらいでスニーカーでも散策できるコースですが高山植物や奇岩が見られます。



上の白い花はコケモモかなと思います。
普通は淡紅色がかっているんですけど、白山石楠花も白っぽいのを見たんですよね。
日照・標高・気候ナンカで色が淡くなっているのかもしれません、ちゃんと調べたいとこですが、笑



坪庭に入る手前、すこし迂回すると横岳神社があります。
小さな祠は古来の山神信仰らしい簡素、こういうトコ挨拶して登る&写真撮るんですけど。
参拝した祠には大山祇神社のお札がありました、国神系の山神を祀っているみたいですね。



で、坪庭ぐるっと歩いて。
その間ずっと雲の流れが速かったです、北横岳と縞枯山の山頂は陰ったり晴れたり。
遠目にも北横岳の斜面は点発生雪崩の跡が見えました、乾雪=雪の粒子が細かいと起きるアレです。
天候の急転が危ない山だとアレコレ書いてありましたが、風や雲の感じに実際そうだろなって思いました。



坪庭ぐるり一周してから雨池峠まで歩いてみました。
ホントは北横岳に登りたかったんですけど夏風邪まだ抜けないので下見で、笑

雨池峠は縞枯山・雨池・雨池山経由北横岳への分岐で坪庭から20分程の木道まじりルート、
途中たまに木道が壊れている+ここからは登山靴が無難な道ですが白山石楠花の群生地があります。



群生地を過ぎると笹原に出ます、
そこにある縞枯山荘はリンゴジュースや牛乳が美味しいです、笑
ただしトイレは有料になります、水場も無いので原則飲料水は持参+トイレは山麓のロープウェー駅で済ませて登る方が無難です。



北八ヶ岳ロープウェーの山頂駅付近も高山植物が群生しています。
いま7月下旬は白花蛇苺の花+実やゴゼンタチバ、ハクサンフウロを多く見ました。
下の写真はハクサンフウロ、蜜蜂ががんばってるトコが可愛かったんで貼ってみました、笑

夏休みのお出掛けブログトーナメント



ってワケで加筆校正これからします、土方焼けちょっと痛いけど、笑

第77話「決表4」校了しています、Favonius「少年時譚28」読み直したら校了です。
Aesuculapius「Saturnus28」倍くらい加筆します、雑談ぽいやつも、笑

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第77話 決表act.4-another,side story「陽はまた昇る」

2014-07-25 20:12:00 | 陽はまた昇るanother,side story
snowhole 静穏の場



第77話 決表act.4-another,side story「陽はまた昇る」

かさり、かさっ、

音かすめる硝子に白が咲く、その向こう並木が黒い。
朝は雪凍えていた、けれど昼の温度に木肌また現れている。
それでも雲白い窓はすこし曇って、外の温度を見てしまう前から低い声が笑った。

「湯原は雪が気になって仕方ないな、宮田さんが心配なんだろ?」

図星だ、

こんな自覚するから首すじ熱くなってくる。
もう頬まで熱い、きっと赤いだろう貌に困りながら周太は微笑んだ。

「はい、心配です…すみません箭野さん、」
「謝ることないぞ、心配なのは当り前だろ?」

さらり笑ってくれる瞳は涼やかに優しい。
今面と向かうのは2ヶ月ぶり、その食膳ごし浅黒い顔は端正に笑った。

「今日は敬語もいらんよ、気楽に息抜きしよう?個室だし密談も大丈夫だぞ、」

密談って「心配なんだろ?」に掛かってる?

だとしたら箭野は自分と英二をどんな関係だと見ているのだろう。
そんな思案めぐるままアーガイルニットの首すじ熱くて、気恥ずかしくて取りあえず訊いた。

「じゃあ…あの、箭野さんは黒木さんと連絡ってしますか?」

とりあえず質問してしまった。
こんなこと訊くのも変なのに?また困りだす前で涼しい目が笑った。

「たまにな、今日は雪掻きだってメール着たよ、」

さらり答えてくれる言葉に今朝のメール思い出してしまう。
きっと今ごろ黒木と同じ場所に英二もいる、そして心配にまた窓を見てしまう。

雪また少し強くなったろうか?

「湯原、」
「あ、はい?」

呼ばれて戻された視界ひとつ瞬かす。
その真中に涼しいシャープな瞳が笑った。

「ほんと上の空だな、そんなに宮田さんが心配なんて恋人みたいだな?」

ちょっと待ってそれ言われると、

「っ…あ、のっ」

ああ何か言わないと?

そう想うのに声ひっくりかえって詰まってしまう。
何も言わない分だけ自白してしまっている、その焦りに先輩が瞳ゆっくり瞬いた。

「おい、まさか図星なのか?」

ほんともうどうしよう?

―どうして僕って英二のことは顔に出ちゃうの?

ポーカーフェイスが巧いと思っていた、去年の春までは。
でも本当は巧かったわけじゃない、ただ感情が抑えつけられていただけと今なら解かる。
ずっと13年間を消された涙も本音も夢も全てが記憶ごと戻って、閉じこめられていた分だけ溢れると止まらない。

「あのっ…やのさんその、ちが…」

違う、そう言いかけて、だけど嘘吐いて良いの?

本当は嘘吐きたくない、だって自分にはいちばん大切だ。
あの人の目的と想いは今もう解らない、幸せな時間は今どこまでも遠い。
誰より何より大切で大好きだったあの笑顔は真実だったのか?その答えが今解からなくて、だからこそ嘘吐きたくない。

英二、やっぱりあなたに逢いたい。

「っ…、」

ほら、視界もう滲みだす。
この2ヶ月が涙あふれてしまう、逢えない時間が傷ひらく。
本当は信じていたい、あの笑顔を大好きでいたい、それなのに昨日の人影と振り向かない笑顔もう解らない。

英二、あなたは誰?

「っ、すみませ…やのさ、すみません…っ」

どうしよう、今この前には先輩が座っている。
それなのに涙が止まってくれない、嗚咽が止まらない、どうして泣いてしまう?
こんなに自分は弱かったろうか、こんなふう泣いてしまうなんて男として悔しい、けれど止まらない。

「っ…ぅ、っ…」

涙こんなに見せるなんて嫌だ。
けれど止まらない自分勝手な雫に手許のおしぼり掴む。
顔に押し当てて俯いて、情けなくて不甲斐無くて、それでも想い涙あふれて廻りだす。

―どうして英二、なぜ僕に好きだって言ったの?

お前が、好きだ。

そう言ってくれた夏の終わり秋の初め卒業式の夜、あの一夜で全てが変わった。
ビジネスホテルの一室、オレンジ色あわいランプのベッド、カーテンから月は明るかった。
あの部屋で見つめ合った瞳は泣いていた、そして綺麗に笑って綺麗な低い声で想い告げて微笑んだ。

『お前の隣が好きだ、一緒に居る穏やかな空気が大好きなんだ、』

ほら、あの声が今もまだ記憶から泣いて笑ってくれる。

『湯原の隣が俺の居場所なんだ、だけど引き擦りこめないから伝えないつもりだったよ…でも俺は湯原の隣で今を大切にしたい、』

あの声も眼差しも信じてしまった、全て委ねて良いと願ってしまった。
あの瞬間まで全ては父の軌跡を追うためだけに生きて、それなのに全てを一夜に懸けてしまった。

『警察学校で男同士で。普通じゃない、そんな事は最初に気付いた。こういう想いが生き難いことだとも知っている、けれど諦める事も出来ない。
気持を手放そうとしても出来なかった、ただ隣で湯原の穏やかな空気に触れている、それだけの事かもしれないけれど俺には得難い居場所なんだ、』

ほら、記憶から告白またされてしまう、あの時の言葉を忘れるなんて出来ない。

普通じゃないから今この場も隠さなくちゃいけない、そう解っていても涙あふれて本音こぼれる。
生き難いことなんて今日まで嫌になるほど知ってきた、それでも諦められない恋が涙を止めない。
気持を手放すなんて自分こそ出来ていない、だから今こんなに疑っているのに言葉ひとつ欲しい。

『お前が、好きだ、』

あの始まりの言葉をもう一度、今どうか聴かせて?

『湯原の隣で俺は今を大切にしたい、湯原のために何が出来るかを見つけたい、そして少しでも多く湯原の笑顔を隣で見ていたい、』

自分の隣で、自分のために、そう告げてくれた言葉は真実だと今どうか聴かせて。
少しでも多く自分の笑顔を隣で見たいと今ここに来て言ってほしい、どうか今すぐあなたに逢いたい。

「っ…すみませんやのさ、ん…こんなっ…すみません」

今この前にいるのは先輩、それなのに心は叫んで泣いてしまう。
こんなに泣くほど追いつめられてしまった自分は弱い、悔しい、だって男なのに?

―男なのにこんなに泣いて、伊達さんの前でも泣いたのに箭野さんの前でも僕はまた、

父のことで泣いて、英二のことで泣いて、こんなに泣虫で弱虫の自分が哀しい。
こんなことで現場に立っても生きて還られるのか?こんな不安ごと情けなくなる。
ただ泣いてしまう顔の掌にタオル地ぐったり濡れて、けれど涼しい声が笑ってくれた。

「羨ましくなるな、湯原はカッコいいよ?」

いま、なんて言ってくれたの?

「っ、え…?」

なぜ自分がカッコいいのだろう、こんなに泣きじゃくっているのに?
こんなに大人の男が泣くなんて見っとも無い、それなのにタオルから上げた視界に涼やかな瞳は笑った。

「湯原が羨ましいって言ったんだよ、ほら、」

浅黒い端正な笑顔がおしぼり渡してくれる。
受けとった掌ふわり温まる、その温もりに顔当てて息ほっと吐かれた。

―どうして僕こんな泣いて、箭野さんのお祝いなのに、

卒研の合格と専攻科への進学が内定したんだ、湯原なら一緒に祝ってくれるよな?

そう言って誘ってくれた食事の席なのに自分勝手に泣きだしてしまった。
こんな子供っぽさ恥ずかしくて首すじ熱くなる、それでも落着きだした心から頭下げた。

「すみません、いきなり泣いたりして…箭野さんのお祝いなのに失礼しました、」
「泣くのも息抜きに良いんだぞ?個室なんだから密談も息抜きも自由だ、」

さらり笑って言ってくれる笑顔は端正で大人の男らしい。
警察官として5年先輩、でも高卒任官だから年齢は1歳しか変わらない。
それでも大きな差を見つめながら泣いたことが気恥ずかしくて、所在ない想いに低い声が微笑んだ。

「湯原、この2ヶ月はきつかったろう?パートナーもあの伊達さんだ、2年目の湯原がついて行くのは苦しいはずだよ、あの事件も、」

やっぱり箭野は心配して誘ってくれた?
そんな推測におしぼり握りしめた前、大らかな深い瞳は笑ってくれた。

「俺も銃器で長かったからな、こっちでもネットワークがあるんだよ?湯原のことも色々と聴いてる、頑張ってるな、」

頑張ってるな、

こんな一言で視界また滲みかけてしまう。
いま言ってくれたのは先輩、なのに父が重なってしまうのは学生だからだろうか?

『湯原のお父さんの分も俺、諦めたら駄目だな?なんとか専攻科も進めるよう考えてみるよ、』

そう言ってくれた箭野だから今も泣きたくなる?
そんな想い辿らせながら周太は素直に微笑んだ。

「はい、頑張っています…でも僕すごくかっこ悪いですよ?伊達さんの前でも泣いたんです、子供みたいに、」

素直な想い声になり微笑める。
本当に自分はカッコ悪い、だから伊達に言われたことも納得なまま笑った。

「適性が無いやつは死ぬって伊達さんに言われました、だから事件の時も僕だと思ったそうです。初日に箭野さんが僕に言った通りでした、」

湯原は射撃の技術なら適性トップだ、集中力もある、でも狙撃手の適性は孤独でニヒルなタイプだから性格が合わないなって思ってさ?

異動初日そう箭野にも言われている。
あの言葉は箭野だけが感じるものじゃない、そんな現実に涼しい瞳が微笑んだ。

「湯原、伊達さんに可愛がられているだろ?」
「え…、」

なんでそんなこと訊くのだろう?
解らなくて首傾げた食卓ごし箭野は教えてくれた。

「伊達さんは頭も腕も天才と言われてる人だ。学校から入隊までテストの成績は歴代のトップクラスに入ってる、能力も体力も、精神力もだ。
上から幹部候補とも言われてるよ、それで俺達のテストも立合ったらしいんだがな、決まった湯原の配属先に適性と違うって上に進言したらしい、」

そんなことがあったなんて?
いま初めて知らされた事実に周太は確かめた。

「僕があの配属先になったことを、適正と違うって伊達さんが言ったんですか?」
「うん、性格が合わないって言ったらしい、」

箸を惣菜につけながら話してくれる。
同じに箸をとり汁椀ひとくち啜りこむ、ほっと味噌の香に息吐くと先輩は微笑んだ。

「あのテストで救けたろ、それで伊達さん言ったらしいよ?人を放りだせないヤツは相手に同化する能力がある、リスクを超えて手当てする勇気もある、
この同化も勇気も交渉チームの適性だと進言したらしい、行動で相手の気持に頷けるヤツは説得力がある、この性格は稀な能力だから活かすべきだってな、」

そんなふうに伊達が自分を見てくれていた?

この2ヶ月を向きあった横顔を今また見つめ直してしまう。
自分の配属をめぐる事情、それから手首の傷と精悍な瞳と、低く響く真直ぐな聲。

『湯原は俺が死なせない、だから何があっても生きろ、いいな?』

自傷行為、けれど天才を謳われる狙撃手で幹部候補。
この矛盾する二面の素顔は愚直な正直かもしれない?そんな想いに唇が動いた。

「伊達さんに言われたんです、なんで湯原が俺のパートナーになるんだって…俺は湯原のために死ぬかもしれない、湯原は俺が死なせないから生きろって、」

なぜ死なせないと言ってくれたのだろう?
なぜ伊達はいつも心配してくれるのだろう、構ってくれるのだろう。
この答えずっと考えていた、そして今すこし見えた真実を先輩が微笑んだ。

「責任を感じてるのかもしれないな、解かっていたのに何も出来なかったって。でも、それ以上に湯原が可愛いんだと思うぞ?弟みたいで、」

弟みたいで、

そんな言葉にまた思い出してしまう、だって何度も今もう聴いている。
あの男がどれだけ家族を想い弟を想い故郷に還りたいのか、もう知ってしまった。

『今も実家に帰れば家族に飯作るんだ、そのたび怖いぞ?ばれるんじゃないかってな、』

故郷に帰るたび食事を支度するほど家族を愛している、けれど還れない罪を抱いてしまった人。
ずっと家族に料理してきた手、それなのに殺人任務を犯した手に泣いて、それでも抱きしめる。

『母親が出て行ったとき弟は4歳でな、甘ったれで俺がいつも抱っこして寝てたんだよ。そのクセが今もあってな、恥ずかしいブラコンだろ?』

いま25歳の伊達なら弟は二十歳を迎える、成人する弟への想いは何だろう?
男でも母親代わりを務めてきた優しい兄、それなのに今いる場所は優しさも殺される。
その痛み誰より解っているから適性が違うと進言してくれた、上層部に盾突いても真直ぐ庇おうとする、そんな男に涙また零れだす。

どうして伊達さん、そんなに優しくて強い?

「ほら湯原、ティッシュ使いな?もう好きなだけ泣けよ、ほんと羨ましいな?」

ほら優しい人もう一人また手を差し伸べてくれる。
そのポケットティッシュ受けとって涙拭い、気恥ずかしさごと微笑んだ。

「ありがとうございます、あの…なんで羨ましいって言うんですか?さっきも言ってたけど、」
「泣くほど好きになれるって羨ましいだろ?」

さらり言って箸また食膳につける。
惣菜ひとくち放りこんで、端整な口許も瞳も愉しげに笑った。

「泣いても誰かを想えるのは強くないと無理だ、そういう強さはカッコいいだろ?ま、宮田さんと伊達さんだと好きの意味が違うみたいだけどな?」

優しい笑顔、けれど可笑しそうに笑ってくれる。
敢えて「好き」の意味は言わないでいようか?そんな聲の眼差しに首すじ熱昇りだす。

―箭野さんって意外といじめっこ、かな?

第七機動隊の時から優しくて頼もしい先輩だった。
年次は5年先輩でも年は1歳違い、そんな近さに親しくしてくれる。
なにより共に大学へ学ぶ仲間として近しい、けれど今この新しい貌に困りながらも微笑んだ。

「はい、違う好きだけど大事です…かっこいいですか?」

いま顔きっと赤くなっている。
こんな発言ごと恥ずかしくて泣いたこと不甲斐無くて、それでも何か誇らしさ温かい。



(to be continued)

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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚163

2014-07-25 10:34:00 | 雑談寓話
移動合間&短めですが掲載します、バナー押して下さる方にありがとうございますで、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚163

年明けて帰りの新幹線、携帯を開いたら受信メール3通+1通きて、
内、2通目と3通目はコンナだった。

From:御曹司クン
本文:明けましておめでとうございます、
   昨夜は長文メールごめん、なんか昂ぶってたかもしれない。
   今夜また電話するかもしれないけど嫌いじゃなかったら出てくれる?

Re:昨夜完徹で眠い、もし寝てて出なかったらゴメンね?笑

From  :(無登録のアドレス)
subject:歯医者です
本文  :昨日はありがとうございました、楽しかったです。
     本さっそく読んでいます、まだ全部は読めていませんが面白いです。
     またおススメ教えてもらえますか?

Re:こちらこそ昨日は治療他ありがとうございました。
  どの辺が面白かったか教えてくれますか?それで好み合わせておススメします、

ってカンジにそれぞれ返信して、
その日は実家に帰って両親と新年のあいさつして雑煮とおせちで呑んで、
久しぶりに自分の部屋@実家で寝たら熟睡だった、

で、案の定だけど朝になったら着信+メール受信してた。

From:御曹司クン
本文:電話出てくれなかったけど俺って嫌われた?

だから完徹で眠いって言ったじゃん?笑
なんて思いながら両親と正月2日の雑煮食べてから母実家へ年始挨拶に行って、
いとこや祖母たちと宴会してから賃貸自宅に戻って、もらってきたアレコレ冷蔵庫に入れたりなんだりして、
コーヒー淹れて落着いてから携帯電話ようやく開いて、メールした。

Re :夕飯一緒する?笑

たぶん御曹司クン悶々しまくっている、そういうとき電話もメールも埒があかない。
だったら顔見て話す方がすぐ解決するだろう、そんな意図で送ったメールに電話すぐ来た、

「もう家でた、おまえん家の最寄駅まで迎えに行くから着いたら電話するな?」

すごい速攻だよね、笑

なんて半分呆れながらも反応の速さが憎めないなって思った、
なんでコンナ懐かれちゃったんだろ考えながら笑った。

「2時間後くらいだね、もし寝ちゃってたら起きるまでコールして?笑」
「っ、ほんっとおまえってSだーばか、でも会いたいから」

なんて言われて電話切れて、
とりあえず洗濯が終わったから部屋干しだけど干して、
パソコン開いて調べたり書いたりしながらノンビリしてたら2時間経って、携帯鳴ったから開いたら驚いた。

歯医者からメールが着ていた、

From:歯医者
本文:こんばんわ、あの本読み終わりました。
   謡曲はそんなに知らないんですけど、これを読んで原作の本みたいのだけでも読もうかなって思いました。
   古典は学校の授業でテストのために読んだことしかなくて正直、勉強の延長でつまらないだろうと思っていたんです。
   でもこれ読んで見方が変りました、長い年月を読み継がれてきただけの内容があるんだと認識をあらためたところです。
   <以下感想中略>
   またおススメの本教えてくれますか?

あの坊ちゃん歯医者も長文メールするんだな、って意外だった。
営業スマイル仮面なカンジで誰かに長文披露=内心開示とかしなさそうで、
それなのに本の感想文を長く書き綴ってきたアタリ、本当は誰かと話したいヤツなんだろなって思えた。

なんかこのままメールしょっちゅう来たりして?

なんて予想しながら長文また見返して、
次は何を勧めたら良いかな考えていたら御曹司クンから電話が来た。


Aesculapius「Saturnus27」校了しています、雅樹@大学病院小児病棟にて希の両親との会話です。
第77話「決表4」草稿UPしてあります、周太と箭野@和ダイニングランチにて。

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閑話書覧:鉄塔の空

2014-07-24 23:08:09 | 文学閑話散文系
無機物の夢



閑話書覧:鉄塔の空

鉄塔が準主役の物語を知っていますか?

ある少年の冒険譚、その冒険はすぐ傍で起きるのに深い。
家の庭先に作った小屋、家から見える山、そして山にそびえる高圧線鉄塔。
その鉄塔にまつわる物語と少年の過去と現実、夢と日常が織りなす冒険小説です。

佐藤さとる『ジュンとひみつの友だち』

日本の児童文学作家ではこの方がいちばん好きです、笑
代表作と言われるコロボックル物語シリーズは『古事記』の少名彦命伝説+北海道のコロボックル伝承から描かれています。
どちらも講談社から発刊されているんですけど、小学生の夏休み読書感想文ではおススメかなと思います。
もちろん大人が読んでも面白いです、笑

で、この鉄塔物語のテーマは「生きて遺すもの」ってカンジです、
って書くとちょっと深い感じですけど、深いことを穏やかな不思議の視点で描くのが佐藤さんの得手。
だから子供が読んでも大人が読んでも面白い、子供時代に読んで大人になってまた読むと良い作品をかなって思います。
親子で一緒に読んで感想を話し合うのも楽しいかもしれませんね、ソウイウの夏休みならではの読書なカンジで、笑

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secret talk21 氷月の朝―dead of night

2014-07-24 21:10:01 | dead of night 陽はまた昇る
雪の朝、閑話
宮田×黒木×国村の会話@第77話act.1-2の幕間



secret talk21 氷月の朝―dead of night

ゆっくり明ける朝に頬冷える、けれど唇はコーヒーに温かい。

マグカップ携える手に風ゆるく凍える、それでも額へ暁の光あわく射す。
青空はざま見えても雪雲は厚い、そんな空に疑似好天だと心配しながらも雪の暁に英二は笑った。

「国村さん、黒木さん、コーヒーもう一杯呑みますか?」

名前ふたつ並べて呼んで改めて気づかされる。
この二人は今どれくらい親しくなったのだろう?

―相変わらず黒木さんは光一を避けるよな、やっぱあれが図星か?

なぜか黒木は光一をすこし避けている。
それは第二小隊長の就任に関わるとは聴いた、けれどそれだけじゃない。

「もう一杯ほしいね、黒木もいるだろ?」

ほら、光一はからり訊いてしまう。
けれど黒木の反応はちょっと違っている。

「はい、」

ほら、やっぱり返事は最短縮だ?

『おはようございます、国村さん。お早いですね?』

さっきも黒木はそれだけだ。
社交辞令的な挨拶だけ、そして会話に加わってこない。
食堂で同席しても伝達事項しか話さない、そんな男に話題ふってみた。

「黒木さん、好みの女性に出逢えました?」

この話題がたぶん「最短縮」の理由だろう?
そんな記憶と笑いかけた屋上の空気が凍てついた。

「…っ、」

精悍な瞳が固まる、その周辺だけ低温化する。
この話題だとまた余計に短縮化するだろうか?

―失敗かな、でもカンフル剤ってやつになるか?

逆に吹っ切れて喋りだすかもしれない。
そんな期待とコーヒー淹れるままテノール機嫌よく笑った。

「へえ、黒木サン合コンでも行ってきた?」

ああ追い打ちだ?

本人まったく気づいていないだろう、けれど言われた方は硬化が進む。
このままだと黒木は彫像化するかもしれない?そう想うだけで可笑しい。

―こんな貌の黒木さん、第二の皆が見たら驚くだろな?

堅物、冷静、そんな評価の男でいる。
けれど今まさに「堅物」化してしまった、そんな貌に理由ひとつ見えてくる。

もしかして黒木が昇進試験に落ちたのは同じ理由かもしれない?

「黒木さん、紙コップくれますか?」
「あ、おう?」

笑いかけた先すこし硬化がゆるむ。
それだけ今も緊張していたのだろう、こんな意外な性格に笑いたい。

―緊張したら固まるタイプなんだ?

これでは試験など苦手だろう?
そんな納得とコーヒー注いで渡して、けれど横から白い手が横取りした。

「お初の一杯もーらいっ、」

テノール笑って紙コップ口付けてしまう。
こくん、白い喉ひとくち飲み下すと底抜けに明るい目が笑った。

「お先にゴチソウサン、はい黒木、」

笑って紙コップ部下へ押しつけてしまう。
その大きな手に受けとらせると雪白の貌は満足に笑った。

「さて、打合せの資料チェックあるからお先に戻るね、また食堂で、」

からり笑って雪さくさく踏んで行ってしまう。
ばたん、扉の開いて閉じて、しんと静かになった屋上に長身が膝崩した。

「大丈夫ですか黒木さん?」

訊きながら想ってしまう、どう見ても大丈夫じゃないだろう?

―こんなに緊張するとか黒木さん意外だよな?

好みの女性に逢えたのか訊いただけなのに?
それだけで固まりまくった先輩が可笑しい、その原因に笑いたい。
秋に非常階段で交わした会話、あれが今も尾を引いたままでいるんだろう?

『男だけの世界に籠ってたらダメだな、でも今さら合コンとか無いか…三十だし、』
『国村さんが女だったらタイプでした?』

あのときも固まって可笑しかった。
そして今も固まる貌と理由つい笑いだした先、低い声が唸った。

「…コーヒーあたらしい紙コップでもらえるか?」

ああこの人って中学生レベルだ?



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雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚162

2014-07-24 13:40:00 | 雑談寓話
昼休憩で短めですが昨日バナー押して頂いたので書きます、感謝で、笑



雑談寓話:或るフィクション×ノンフィクション@御曹司譚162

年明けて帰りの新幹線、携帯を開いたら受信メール3通だった、

From:葭田
本文:年越ありがとな、卒論の時みたいで楽しかった。
   ご両親にもおせちありがとうって伝えてくれ。また一緒に呑もうな、気をつけて帰れよ?

律儀に謝礼メールを送ってくれてある。
こういうトコ相変わらずな友達に笑って返信した。

Re :こっちも楽しかったよ、また一緒しような?

ほんと懐かしかったし楽しかった、
長文メールやら飛入り参加もあったけどソレもまあ有りで、
なんだか濃い年越だったな思いながら開いた次のメールは案の定だった、笑

From:御曹司クン
本文:明けましておめでとうございます、
   昨夜は長文メールごめん、なんか昂ぶってたかもしれない。
   今夜また電話するかもしれないけど嫌いじゃなかったら出てくれる?

また考えさせられるような文面だよね、笑

この返事すぐした方が良いんだろうか、それとも放置しようか?
いま休日だから圏外あつかいでもOKだろう、でも友達に今朝も言われたな?
そんなこと考えながらも開いた3通目は意外な相手からだった、

From  :(無登録のアドレス)
subject:歯医者です
本文  :昨日はありがとうございました、楽しかったです。
     本さっそく読んでいます、まだ全部は読めていませんが面白いです。
     またおススメ教えてもらえますか?

いつメアド交換したんだっけ?

その記憶あまり無い、そんだけ呑んだツモリも無い。
それでもメールが届いているならメアドを教えたんだろう?
ちょっと不審だったけど返信しないと悪いかなって考えていたら受信1通来た、

From:伯母さん
本文:来てくれて嬉しかったわ、お土産もありがとう。
   歯医者さんと道で会ってあなたのメアド訊かれたわよ、
   本のお礼したいっていうから教えたけれど良かったかな?

そういうワケだったんだ?笑

まあ大晦日午後だっていうのに診てくれたほど悪いヤツじゃない、
だから伯母も信用してメアド教えたんだろう、本のコトも話したし?
そんな推定に笑ってトリアエズ返信した、

Re:了解、さっそく彼メール来たよ?笑

で、ちょっと考えて3通目にも返信した。

Re:こちらこそ昨日は治療他ありがとうございました。
  どの辺が面白かったか教えてくれますか?それで好み合わせておススメします、

身内が世話になっているから無碍にも出来ない、
それに別に嫌いなワケでも無い、ちょっとメンドクサソウな感じはするけれど?
そんなこと考えながら送信して、2通目の返信をした。

Re:昨夜完徹で眠い、もし寝てて出なかったらゴメンね?笑


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Aesculapius「Saturnus27」読み直したら校了です、雅樹@大学病院小児病棟にて希の両親との会話です。
第77話「決表3」もうちょい読み直します、周太@書店への道にて本との再会ともう一つの再会です。

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第77話 決表act.3-another,side story「陽はまた昇る」

2014-07-23 23:05:00 | 陽はまた昇るanother,side story
snowy 雪浄の空



第77話 決表act.3-another,side story「陽はまた昇る」

さくり、さくっ

雪踏んで仰いだ空、真白なグレーに吐息が昇る。
ふわり靄くゆらす呼吸が空へゆく、その頬へ小雪そっと冷たい。
音もなくただ降ってくる、絶え間ない白に遠い冬を見て周太は微笑んだ。

「…初雪は止んでない、ね、」

昨夜から降る、これは初雪だ。

去年の初雪は黄金の森だった、今はコンクリートの街で雪を踏む。
いつも無機質な都心の道、けれど雪染められて摩天楼の底すら白い。
ただ白くて、頬ふれる唇かすめる大気も澄み冴えて凛と清浄になる。

―まっしろできれい…都心じゃないみたい、だね、

さくり、さくっ、登山靴の音と歩く道は鎮まらす。
風もない大気は冷たくて呼吸すこし凍える、けれど体はダッフルコートに温かい。
このコート買ってくれた人は今どこにいるのだろう?そんな想い見あげる空は涯なく白い。

「…出てるのかな、英二、」

英二、今どこにいるの?

この雪に奥多摩で除雪しているだろうか、そんな任務もあると聴いている。
きっと雪の里は静かに凍えて人も少ない、それでも生活する温もりは当然ある。
だってそこに大切な友達は住んでいる、その心配に携帯電話を開いて受信メール1通見つけた。

「あ、…美代さん?」

歩いていて受信に気づかなかった?
迂闊に困りながらすぐ開封して見つめた画面、短文に微笑んだ。

From  :小嶌美代
subject:無事到着
本 文 :ちゃんと試験会場に着けました、雪だけど皆慣れている感じです。
     おかげで落着いて受けられます、模試とは言え緊張しちゃってるけど。
     終ったら電話またさせてね?湯原くんも風邪とかひかないように気をつけて。

「ん、よかった、」

良かった、無事に定刻前で着けている。
この降雪にも自分の運転で辿りつけた、そういう逞しさが美代はある。
あの華奢な外見からは想像し難いな?頼もしい友人に微笑んで雪の街路樹の下、写メールひとつ撮った。

Re:無事に着けて良かった、運も美代さんの味方だね?
  都心も真白です、今、本屋に行くところだけど人が少ないよ。
  美代さんこそ風邪なんか絶対にダメだからね?受験生を楽しんでください。

雪の摩天楼を添付して送信ボタン押す。
完了メッセージきちんと確かめてポケットに仕舞って、とさり、梢から雪舞った。

―雪の音が聴こえる、ね?

かすかな囁くような雪ふる音、いつもなら雑踏に聴こえないだろう。
今も通りは人がいないわけじゃない、けれど気配すら融かして静寂の雪がふる。
こんな日は開いたページも不思議な空気かもしれない?そんな期待と書店に入った。

「…ん、」

ふわり頬に暖房が温かい。
そっと融かされるようで外気の寒さ知らされる、少し冷えてしまったかもしれない。
そう想うまま指先へ血の廻りだす、こんな感覚に秋から見つめる時間と2度も見た死線が響く。

入隊テストの被弾、庁舎内の自殺未遂、場所も理由も違うのに「訓練中の事故」で「無かった」ことで、けれど命の瀬戸際は同じだ。

『拳銃なら訓練中の殉職にして貰えるかもしれない、だからあの場所で拳銃自殺をしました…子供に呼ばれて生きたいと思いました、』

ほら、マジックで書かれた聲また聴こえる。
昨夜に聴いたばかりの声無き聲、あの想いは今まで何人の男たちが抱いたのだろう?
そして多分きっと父も同じだった、そう辿らす現実に瞳ゆっくり瞬いて周太は書棚を見あげた。

ほら、あった。

『対訳ワーズワス詩集』

懐かしい書名に微笑んで手を伸ばす。
少しだけ背伸びして文庫本ひとつ掌すべりこむ、その厚みから慕わしい。
この本を手にした夏の記憶は幼くて、それでも空の色から全て今この掌に息吹を戻す。

―夏休みの終わりだった、お父さん亡くなって初めての…さびしくて、

春4月に父を亡くして迎えた夏休みは、寂しかった。
いつも夏にはどこか山に連れて行ってもらった、それが消えた夏は孤独だった。
母も職場復帰したばかりで留守番と家事が日常、そんな日々の最初の長期休暇を自分は本で埋めた。

―書斎の本ぜんぶ読んだね、辞書なんども開いて…廊下の本箱もドイツ語以外はぜんぶ、

食事の片付けして布団干して、洗濯して掃除して庭すこし手入れして。
そして昼食を摂れば時間ぽっかり空いてしまった、その空白を父の俤で埋めたかった。
だから父の書斎が午後の時間になった、あの窓を開いて安楽椅子に座りこんで本を開いた、そのたび父の膝を慕っていた。

『周、今日はこの本を読んであげるよ?』

父が休みの日そう笑ってくれていた、その時間が恋しくて独り書斎に座りこんだ。
そして安楽椅子は父の代りになっていた、そうして過ごした夏休みの終わり買い物ついでの書店で文庫本に出逢った。
あのときが自分で本を買った初めてでいる、それは父に本を買ってもらう幸せとの別れで、父が消えた現実の受入れだった。

だから父が愛したワーズワスを選んだ。

『ワーズワスがいちばん好きだよ、たくさん良い思い出があるんだ…シェイクスピアのあの詩と、』

ほら、父の声は記憶あざやかに笑ってくれる。
あの声も言葉も去年まで忘れて、けれど今もう二度と忘れない。
あの夏の一冊は今も屋根裏部屋に眠っていて、そして新しく同じ一冊を携えてレジに並んだ。

But thy eternal summer shall not fade, Nor lose possession of that fair thou ow'st, When in eternal lines to time thou grow'st.
けれど貴方と言う永遠の夏は色褪せない、清らかな貴方の美を奪えない、永遠の詞に貴方が生きゆく時間には。

『MEMOIRS』Kaoru Yuhara

父の遺作集に田嶋教授がよせた「epitaph」碑銘はシェイクスピアの引用だった。
あの一節の通りに父の声はたくさんの言葉たちに生きている、父が著した文章に愛読した本に聲は色褪せない。
そんな想いごと文庫本を受けとり書店から出て一歩、とんっ、軽やかにダッフルコートの肩敲かれて低く響く声が笑った。

「湯原、久しぶりだな、」
「箭野さん?」

声に名前呼んで振り向いた真中で長身端正な笑顔ほころぶ。
涼やかな瞳は前と変わらない、この頼もしい先輩に周太は笑った。

「お久しぶりです、2ヵ月ぶりですね…お休みですか?」

本当に久しぶりだ、入隊して以来だろう?
そんな想いに秋からの全て溢れそうで瞳瞬いた先、浅黒い端正な笑顔は言ってくれた。

「休みだ、大学に行ってきた帰りだよ、昼飯これからか?」

大学に行ってきた、その言葉に嬉しくなってしまう。
入隊間もない日に約束してくれた、その言葉どおりな笑顔に笑いかけた。

「はい、これからです…お昼一緒しませんか?」
「いいぞ、今日は俺に奢らせてくれ、」

気さくに笑って歩きだしてくれる。
さくさく一緒に雪踏みながら周太は先輩を見あげた。

「あの、僕から誘ったのにご馳走になったら悪いです、」
「俺こそ今日は湯原を誘いたかったんだよ、会えてちょうど良かった、」

笑って答えてくれる言葉に不思議になる。
なぜ箭野は誘いたいと思ってくれたのだろう?その思案に口が動いた。

「…箭野さん、どうして今日は誘ってくれるんですか?」

なぜ今日?

そう考えて昨夜が思い当ってしまう。
昨夜、伊達とふたり勝山に面会したことは内密でいる、けれど箭野は知った?

―箭野さんは警部補で指揮班の…知れるかもしれない、だから僕に今日?

勝山の自殺未遂事件を箭野は知っている?
そんな問いは「Yes」だろう、人脈も豊かな箭野なら知らない筈が無い。
だから問い質しに来たのだろうか、そんな可能性めぐりながらも信じたい願いに涼やかな瞳が笑った。

「卒研の合格と専攻科への進学が内定したんだ、湯原なら一緒に祝ってくれるよな?」

湯原のお父さんの分も俺、諦めたら駄目だな?なんとか専攻科も進めるよう考えてみるよ。

そう約束してくれた、そして今日に叶えてくれた?
そんな台詞ごと横を見あげた雪の道、真白な街で浅黒い笑顔はまぶしい。



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