アンチ・エイジング免許皆伝のおばさまたち
数字がすべてかということを思うことがある。これから居住地にある大病院に行って、血液検査を受ける。その結果は一時間もすればすぐわかる。なにしろでかいから、外部に委託する必要がないからである。
そして、結果を医師に教えていただくわけである。ご託宣のようなものだ。ま、血圧も120くらいだから、大したことはないのだが、いつもうんざりするのは結果表である。
オレは結果表なのかと思うからである。
結果表が自分であって、自分はどこにもない。所詮、素人だから結果表に出ている数字はなんのことやらまったく分からない。医師の説明も可能なかぎりメモして、質問するが、何度見ても訳が分からない。しょうが無いではないか。素人なのだから。
それよりうるさいのが、配偶者である。数値の意味をなんで聞いてこなかったのかと言うのである。こっちの方が参る。だから、あらかじめ想定質問を京大式情報カードにメモして、それから病院には行くことにしている。
旅行に行けるかということを聞いてこいとのたもうのである。何度も医師にはOKと言われているので行けるのだが、こっちも「旅行=自分」という公式があるようで、参る。
じゃぁ、自分というのは何か。
結果表なのか、旅行なのか。
ふと、そんなことを思うのである。
最近の医師は、さすがに、患者様のコンピュータの画面の結果表だけを見ているということはない。しかし、医師にとってみれば、患者様の数値が勝負なのだろうということはよくわかる。それでなくてはならない。感情で診察をしていただいているわけではないからである。もっとも、感情で診察をしていただいたら、たまったもんではない。今日は家で奥様と喧嘩してきたから、ちょっと注射も痛く刺しちゃおうというのではいかがなものか。そんな医師は私の周囲にはまったくいないけど。
で、今日はなにを書きたいのかというと「健康おたく」のことである。ありとあらゆる病気のことを気にして、一喜一憂して、関係書籍を買いまくり大秀才のように勉強している方がおられるということである。テレビの健康番組をすべて録画して見ているような方である。
私も他人のことは言えないけれども、そこまで「健康おたく」ではない。
90歳を過ぎて、老後の貯金がないからこれから稼がないという心配をしている方と一緒である。知人でいる。癌になったらしょうがないからと、胃カメラ、大腸カメラと神経質にやっている方である。年になんどもやったら、むしろ身体にダメージを与えてしまうかもしれないではないか。なったらなったでしょうがないのではないか。なぜ焦るのか。死ぬということを考えていないからであろう。死ぬということは、あくまで自分のことではないからである。死ぬのは他人であって、自分ではないのである。まさか、自分だけは90歳を過ぎても死なないだろうと思っているわけである。
死は、あくまでも第二人称のできごとでしかないのだ。死は、第一人称の出来事である。
都会に住んでいるかたは、動物を含めても、死を見たりする機会がない。私は、一介の田舎人である。だから、野鳥をはじめ、猫、モグラ、虫の死骸を見ることが度々ある。幼児体験としてもこれは貴重なことである。
できれば、私の孫にも、私が死んでいくシーンを見せてあげたい。もっとも孫の母親に拒否されるだろうけれども。人間がなぜ生きて、なぜ死んでいくのかということを考える上で、非常に効果的であると思っているのである。
だから病院で死にたくない。
自宅で段々と死んでいきたい。それを思う存分孫たちに見せつけて死んでいきたいと思っている。だから、あっというまに死んでしまうのはお断りをしたいのだが、こればかりは運命である。分からないからだ。どうやって死ぬのかということは。
しかし、世の中のアンチエイジングを標榜されている主としておばさま集団は、いつまでも生きていたいと思われるようだ。Gymを退会してしまったから、そういう光景は見なくなった。まぁまぁ凄い光景がある。出っ張ったハラを華麗なるトレーニングウエアでつつんで、しわがれた声を出して、太い足を振り上げてダイエットに励んでおられる。厚化粧をしておられる方もいる。一度なんか「旦那が60の時にあっちに行ったのよん。まだ、私を嫁にもらってくれるオトコがいないかしら」ってのたもうたジョセーもいたっけ。まぁまぁたくましいことである。生きる力抜群である。今流行の後妻業というのは、こういう文化から出てくるのだろうかと感じていた。しかし、たくましいものである。
もういいじゃないかと言ったことはないけれども、老化ということを拒否しているのである。いつまでも若々しくありたいわけである。それはそれでいい。
だから食欲も負ける、体重も負ける、パワーも負ける、クチも負けるのである。
強いもんである。
スケートの羽生をおっかけているのもそういうおばさまたちなのであろうか。
そういうおばさまたちは、血液検査に行っても、数値なんかなんにも気にしないのであろうなぁ。
そもそも、検査表の数値なんかそもそも自分ではないと思っておられるんだろうから。
血圧が高かったら、「センセ!もう一遍測って!これは測り方が悪いのよん」と言いそうであるから。
それでも、おばさまたちに忠告したい。
いつまでも生きているわけにはいかんですよん!って。
じゃぁねぇ~。
(^_^)ノ””””