悟った高僧が、終末期にさしかかって死の床についた。
それこそ下の世話にならざるを得なくなったということである。絶体安静だからだ。看護師に下の世話になるようになった。
でも、その高僧めげない。
お尻を綺麗に拭いてもらいながら、看護師のお嬢さんに「これぞホントのクソ坊主」と言って笑わせたという話を読んだことがある。鎌田實先生の本だったと思う。「生き方のコツ、死に方の選択」という一冊108円の文庫だ。今、思い出した。ボキの書庫にあったのじゃよん。
さすがである。さすが禅僧である。
ボキは、こうならないだろう。否、なれないという方が正解である。
事実、エコノミークラス症候群になってICUに入っていたとき、ボキもやはり下の世話になったのだ。その時に、ボキはあがいた。どうしても自分でトイレに行きたいと駄々をこねたのである。
格好が悪い、恥ずかしいと思っていたのだ。それに、そんなに重症なわけがないとも思っていた。今朝の今朝までピンピンとして生きていたからである。自分のクルマで病院に来たくらいである。
ところが、おっとどっこいである。看護師に叱られてしまった。最後はドクターにもである。話にならない。
意識ははっきりしているし、まったくなんともないからである。寝返りも平気でやっていたし、めっかって看護師に叱られてしまった。
病人ではないと自分で思っているのだから、始末に負えないとはこのことである。
さらにある。それはボキについてくださった看護師のお嬢様が、若くて綺麗な方であったのである。これは情けなかった。
病棟内を車いすで押してくださったりしたから、ますます申し訳ないと思っていた。もっとある。文学が好きな方であったから、いろいろと雑談までしてしまったのである。
ますます格好が悪い。下の世話になるのは。
だから、ボキは悟りとは無縁な人間だなぁ~~~~としみじみ感じたのである。つまり、凡人。平凡中の平凡。悪業三昧で生きてきて、退職してから血迷って大学院博士課程に入学して、アホのひとつ覚えのように、毎日・毎日ゴミ論文を打鍵していたからである。
「これぞホントのクソ坊主」と言って、ダジャレでもひねり出すくらいの余裕がなかったのかねぇと今になって思う。
そうなのだ。余裕がなかった。ついでに言えば能力もである。
結局挫折したけれども、あれで良かったのかもしれない。
命を拾ったのであるから。
感謝すべきは、病院の先生がた、看護師の方々、家族である。
家族には強制的に某大学大学院を中退させられたけど。
カネ食いムシだとか、いろいろ悪口雑言言われてしまったけど、ホントでしたなぁ。
これからのボキは、いつまでも生きて・生きて・生きまくって、可能なかぎりトイレも自分でやれるように健康でいたい。
今朝の朝刊に、有料老人施設で殺された80代の男性が、やはり下の世話になっていて、風呂場と布団を汚したからという理由で殺されてしまった。しかも、元校長先生だったという。なんということだ。なんという・・・・・・・・・・・・。
他人事ではないと思ったから、ここに書いてみた。
トホホ・・・・・世も末じゃよ。