団塊世代の人生時計

 団塊世代として生きてきた「過去」、「現在」、そして「未来」を、自分自身の人生時計と共に綴り、「自分史」にしてみたい。

ベルリン・フィルとウィーン・フィルの野外コンサート 2013

2013-07-30 12:26:47 | 音楽

ベルリン・フィルとウィーン・フィルの野外コンサート 2013

 

 NHKのちょっとした工夫で、謎を解きながら楽しく視聴することができました。

 そのポイントは、サイモン・ラットルの発言、「雨のない夜です。」です。

 

 6月22日開催された、ベルリン・フィル恒例の「ヴァルトビューネ野外コンサート」で、演奏を終えてマイクを握ったラットルが最初に言った言葉がこれだったのです。確かにこの日のヴァルトビューネは雲一つない見事な晴れでした。しかし、挨拶で「天気」のことを殊更コメントするだろうか?というのがTVを視聴していた私を含めた多くの人の疑問ではなかったかと思ったのです。

 

 しかし、この疑問は、続いて放送されたウィーン・フィルの同じく恒例の野外コンサートの映像を見て、見事に「晴れ」ました。

 ロリン・マゼールが振るウィーン・フィルの「シェーンブルン宮殿野外コンサート」は5月30日に開催されたのですが、始まった映像を見てビックリしました。カメラを通しても分かるほどの「大雨!」なんです。

 日程では後に行われたベルリン・フィルの演奏をTVでは初めに放送し、そして疑問を持たせ、次いて放送されたウィーン・フィルの「雨」の映像で疑問を「晴」らすとは、NHK、天「晴」れ!(推理小説が、最初に疑問を持たせ、段々解決する手法に通じてますね。)

 

 

 さて、演奏の方ですが、ウィーン・フィルは今年生誕200年を迎えたヴェルディとワーグナーが中心のプログラムで、ワーグナーの楽劇「ローエングリン」から「はるかな国へ」では、叙事詩的なセリフを抒情的に歌いローエングリンの心の叫びを奥深く激しく表現するテノールのミヒャエル・シャーデの歌唱力に引き込まれました。

 

 ベルリン・フィルのプログラムは、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲とベートーベンの交響曲第9番「合唱つき」という組合せでした。野外ですが、ステージは普通のホールより狭いせいか、合唱団員が少なく、「合唱」にしてはプアに感じました。しかも(と言っていいかどうか)、バスが冒頭の独唱部分で音程を間違えるという超珍しいハプニングがあり、私としては、いまいち乗り切れませんでした。

 

 しかし、そのもやもやとした気分は、続いて演奏されたアンコールの「ベルリンの風」で吹き飛ばされました。ラットルが指揮棒を他の奏者に渡し、自らは太鼓を叩きだしたのです。このラットルのサービスに、何処のどいつが集まったのか知りませんが2万人を超える聴衆は大いに沸きました。

 

 ラットルの「ベルリンの風」はウィーン・フィルのアンコールの「ウィーンかたぎ」に対抗してのものでしょうか。マゼールが「ウィーン」とくれば、「ベルリン」と応えたくなる気質なのでしょう、ラットルは! そういえば、指揮ぶりも「動」のラットルに対して「静」のマゼールと対照的です。

 

 

 映像でもこの二つの野外コンサートは魅せました。

 

 ウィーンの方では、照明の色が変わる毎に表情を変えるシェーンブルン宮殿が目を見張らせましたし、曲に合わせて花火を打ち上げるといった演出もあり、更にはカメラスタッフが空中を飛びながら映しているのではないかと思わせる映像には、私自身が空中遊泳をしているようで、しばし瞑目しその感触を楽しみました。そしてそっと目を開けると、今度のカメラワークは、ワルツに合わせて踊っている老若男女を縫うようにして歩いています。ウィーンの人って、ワルツが流れると自然に身体が動き出すのですね。若い男女が雨の中、しっとり濡れながらヴァルツを踊っている映像は、私をして、wakaki(若きではなくドイツ風に「ヴァカキ」と発音してください。)日を追憶させます。

 

 ベルリンのヴァルトビューネでは黄昏ていく情景が見事でした。

 演奏開始時には、アルプス席ではまだ太陽の日差しがあったのですが、だんだんと黄昏ていき、青白かった空が微妙な色の変化を見せながら漆黒の闇へと移っていく様が絶妙でした。

 合唱団員が「vor  Gott!」と歌っていた時には、きっと星空の彼方では多くの星がその響きに合わせて瞬いていたことでしょう。(カメラは星は映していませんでした。)

 

 ここで、Hi- Fiマニアの私としては、音響について触れない訳にはいきません。

 ウィーン・フィルの音が数百メートル離れたシェーンブルン宮殿にこだまして響くのです。それは、次の年もそしてまた更に次の年もこのコンサートを聴きに来たいという思いとして残るような小さく可愛い響きでした。

 

 いろいろと対象的な二つ野外演奏会でしたが、いずれも、演奏が終了すると、聴衆の熱狂はクライマックスに達しました。それはTVを見ている私にも伝わるどころか、いえ、私そのものが熱狂していました。「ブラヴオオオオオオォォォォーーーーー!!!」心の中で強く長く叫びました。

 

 

 

・2013年5月30日 シェーンブルン宮殿の庭園(ウィーン)

 

ヴェルディ  歌劇「アイーダ」から凱旋行進曲

        歌劇「第一次十字軍のロンバルド人」から

           私の喜びは呼び覚ます

ワーグナー  楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死

         楽劇「ローエングリン」から

            はるかな国に

ヨハン・シュトラウス

       ワルツ「ウィーンかたぎ」

       ポルカ「ハンガリー万歳」

 

    テノール:ミヒャエル・シャーデ

    管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

    指 揮:ロリン・マゼール

 

 

・2013年6月22日 ヴァルトビューレ野外音楽堂(ベルリン)

 

メンデルスゾーン  バイオリン協奏曲ホ短調作品64

バッハ    無伴奏バイオリン・ソナタ第3番ハ長調BWV1005からラルゴ

ベートーベン  交響曲第9番二短調作品125「合唱つき」

パウル・リンケ  ベルリンの風

 

     バイオリン:クリスチャン・テツラフ

     ソプラノ:カミラ・ティリング

     コントラルト:ナタリー・シュトラッツマン

     テンール:ジョセフ・カイザン

     バス:ディミトリー・イワシチェンコ

     合唱:ベルリン放送合唱団

     管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

     指 揮:サイモン・ラットル


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