トランプ氏、トヨタを批判
2017年1月7日(土)
今日の朝日新聞によると、
トランプ氏は、メキシコで2019年から米国向けのカローラを生産するトヨタ新工場の建設計画をやり玉に挙げ、ツイッターで「とんでもない!米国に工場を建てるか、国境で高い税金を払え」と攻撃した、とあります。
トヨタは、直ぐにコメントを出し、「米国での生産台数や雇用が減ることはない」と表明しました。トヨタが、そのようにコメントをすれば、トランプ氏の理解を得ることができると本気で考えているとしたら、御目出度いと言わざるを得ません。トランプ氏からすれば、米国で売る車は米国で造り雇用を作れということですから、回答にもなっていません。
ここは、孫正義氏に学んだ方が良いです。孫氏は自らの関連会社がタックスヘイブンを利用していることを指摘された時、「制度が変われば、(つまり租税回避ができなくなったら)それに対応します。」という趣旨の発言をしました。極めてシンプルで、普遍的です。
トヨタがアメリカに工場を多く持っており、多数の雇用を作っているという説明をするのは、結構なことですが、その国の制度が変われば(つまりこの場合であれば、メキシコからの輸入車に高率の関税をかけられること)、それに対応します、という旨のコメントをするのが基本です。
トランプ氏の恫喝に対応すれば、トランプ氏を助長させるだけです。
とはいえ、これまで、多くの企業が恫喝に屈していますね。
もっとも、私は企業(特に大企業)は、相当に優秀なスタッフを抱えているので、見せかけで誤魔化している部分があると思いますけど。トランプ氏とのばかしあいですね。トランプ氏も国民に「雇用を守っているのだ」というイメージを残せれば良い訳ですから。
まぁ、ともかく、トランプ氏の恫喝に右往左往するのだけは、しない方が良いでしょう。
また、同日の朝日新聞の社説では、この問題に関して、「企業たたきの愚かさ」と題して主張を述べています。内容の紹介は省きますが、大筋ごもっともの意見と思いました。ただ、私は、朝日新聞が(他のマスメディアもですが)、トランプ氏を「保護主義」と見ていることに関しては、非常な違和感があります。私はトランプ氏は、保護貿易主義者でも何でもないと考えていて、要するに損か得で、保護貿易主義者にもなるし自由貿易者にもなるという、「得手勝手貿易主義者」と考えているからです。
NAFTAにより、メキシコは、アメリカからの農産物が大量に入り、メキシコの農業が打撃を受け、そのあおりで、アメリカへの不法移民が増えたと言われています。つまり、農業部門でいえば、アメリカは自由貿易の恩恵を受けている訳ですね。トランプ氏が真の保護貿易主義者であれば、メキシコがアメリカからの農産物に課税をすることを容認するハズですが、そんな(俗な言葉で言うと)タマじゃないでしょ。正義とか公平とかではなく、得か損かを唯一の価値基準として考えるだけの人物ですよ。
ついでに言わせていただくと、多くのメディアでは、トランプ氏は実態を知らずに(あるいは誤解して)、発言(といってもツイッターですが)しているので、トランプ氏に実態を正しく理解してもらえば、考え方を変えるのではないかと希望的観測(私からしたらそう見える)をしています。しかし、私はトランプ氏は十分に知っていると思っているし、その前提で対応を考えた方が良いと思います。
例えば、今回のトヨタの例で言えば、朝日新聞は同社説で「今回のトヨタの計画は、米国内の工場や生産ラインを国外に移すという話ではない。」とあたかもトランプ氏がそのことを知っていないかのような前提で書いています。→その程度のことは、トランプ氏は馬鹿ではないですから、当然知っているでしょ。
最後についでに言わせていただくと、トランプ氏のツイッターに対応するのは仕方ないとしても、トランプ氏に答えるというより、米国民とりわけトランプ支持者を意識してというよりむしろそれらの人達をターゲットとして理解を得られるように答える必要がありますね。今回のトヨタの例でいえば、トランプ氏の言うようにすれば確かにアメリカの雇用が増えるとしても、一方ではアメリカでカローラを造れば高くなり消費者にとっては良くないことになる訳ですね。そういったメリット、デメリットを十分なデータを基に説明すれば、トランプ氏との理論闘争で、トランプ退治は可能と思います。
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