水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ぬ・つ

2007年12月14日 | 日々のあれこれ
 完了の助動詞「ぬ」「つ」は、①完了、②強意、③並立の用法をもつ、と本校が使用する文法書に記載されている。
 たしかにこれでいいのだが、「ぬ」「つ」の根本の意味は「確述」である、とまずおさえた方がわかりやすい。あるものごとを「確」かに「述」べたい時に用いる助動詞。
 たまたまそれが確定した内容を確述した場合には「完了」用法となり、まだ確定していない内容を確述した場合には「強意」用法となる。
 という話を今日の講習の1時間目に話した。話しながら、なんとわかりやすい説明だろう、みんな感動して目をかがやかせているにちがいないと思い、ざっと見渡すと、そんな雰囲気でもなかった。何人かがノートをとりはじめ、それを見てやっとメモしはじめる人もいれば、はやく本題に入らないかなというような顔で黒板を見ている者、いろいろである。
 むろんこの説明の仕方はオリジナルではなく、駿台の関谷先生の参考書に書いてある。関谷先生以外の本では、たんに完了と強意の用法があるとされているだけだと思うが、基本は「確述」にあるとおおもとをとらえる見方はわかりやすい。だって、もとは一つの助動詞なのだから。
 で、結果的に、推量系の助動詞とともに用いられる場合(「ぬべし」とか「つらむ」など)の「ぬ」「つ」は強意といえばいいし、過去や存続の助動詞とともに用いられる場合「にたり」とか「てけり」は完了方法になる。
 普通に文末で用いられるとき(「雨降りぬ」)は完了だ。
 「はや舟に乗れ、日も暮れぬ」の「ぬ」のような場合は、まさに確述と言いたい。普通は完了というけれど。
 15年前の自分が、誰かからこの説明の仕方を聞いたなら、うれしくてご祝儀わたしてしまうだろう。でも、今日の講習では祝儀はもらえなかった。
 つい「ちゃんと書いておきなさい」と言ってしまったが、言わなくてもささっと書いてくれるようになるといいなあ。
 わかりきっているから書かなかったのではないことは、よおくわかっているつもりだし。
 合奏でも同じだ。ここからここまでがフレーズだよね、とわかったら色ペンできっちり書いておいてほしいのである。
 ちょっとした言葉にも大きな価値がある。
 たとえば、真島俊夫先生から、ポップスのリズムを「タカツカ」ととりなさいという話をうかがったとき、このカタカナ4文字が何千円、何万円の価値をもつと思ったものだ。
 

コメント
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