水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

プラトー

2021年10月14日 | 学年だよりなど
1学年だより「プラトー」


 高校に入ってから始めた競技。バドミントン、ラグビー、アメフト、少林寺拳法……。
 運動能力がそこそこある人は、早い段階で、めきめき上達する。しかし、しばらくすると、練習しても練習しても停滞してるように感じる時期がくる。それでも我慢して努力し続けると、あるとき急に、ワンランクアップした自分に気づく日がくる。
 単語も覚えた、文法も一通りやった、学校のテストではそれなりにとれるようになった、でも模試ではなかなか結果が出ない……。あきらめることなく勉強し続けていると、しばらくして急に読めるようになってくる。
 こういう例は、どんな分野にも見られ、「成長曲線」として説明される。
 「成長と努力は正比例しない」の原則が、その曲線に表現される。
 がんばってもなかなか結果がでない時期、いわゆる「プラトー(高原)」と呼ばれる時期、人のからだの中で何が起きているのだろう。
 「学年だより」を熱心に読んでくれているみなさんには、すでに答えが見えているだろう。
 この期間に行われているのが、遺伝子スイッチの切り替えだ。(№7~9参照)
 DNAのうち、遺伝情報そのものを持つ遺伝子の占める割合はわずか2%。
 そこには、「目を作る」「心臓を作る」など、体を作るための基本的な設計図や、人間の様々な能力や体質に関わる情報が書き込まれている。
 その人の、記憶力、持久力、音楽の才能、運動の才能、人付き合いのうまさ……といったものは、それらの遺伝情報がどの程度読み取られ、発現させていくかで決定する。
 たとえば「音楽能力アップ」に関わる遺伝子(いろんな要素があるけど)は、みんなが持っている。そのスイッチがオンになっているか、オフのままか、もっと言えば、どの程度オンになっているかなどの状況で、音楽の能力が決まる。
 おぎゃーと生まれたときに、決まっているわけではない。
 ピアノの天才、バイオリンの天才と呼ばれる人達がいるけれど、生まれた瞬間に天才なのではなく、早い段階で、「むりやり」オンにしてきた結果なのだ。
 これは、脳の研究でもあきらかになっていて、早期に音楽的訓練を受けた人は、そうでない人よりも、大脳の中の音楽をつかさどる部分が極端に発達している。
 「天才」は、後天的に作られるのだ。
 遺伝子は、その生命体がおかれた環境の変化に応じて働き方を変える。
 新しいスポーツに取り組む、習い事をはじめる、新しい科目を勉強する……。
 食事が変わる、睡眠時間が変わるといった習慣の変化、誰といっしょにいるか、それによってかかるストレスレベルの変化など、ありとあらゆる環境の変化に対し、人のからだは遺伝子レベルで対応しようとする。生命体を維持するためだ。
 プラトーがおとずれたなら、「いま遺伝子レベルで自分は成長している」と意識しながら、それまで通りの負荷をかけ、情報をインプットし続けていくことだ。
 伸びがとまったときには、「やった! 人体改造期に入った」と思えばいい。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ネットが崩す公私の境」の... | トップ | 「ネットが崩す公私の境」の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

学年だよりなど」カテゴリの最新記事