日本の中流層が没落し下層化したのは、
”小泉・竹中路線”の新自由主義政策が遠因であるとは、
いまや世間の”定説”となっている。
国民の大多数が小泉人気に浮かれていた当時、
その経済政策を面と向かって批判していたのは、植草一秀氏であった。
テレビ東京のビジネス情報番組「ワールド・ビジネス・サテライト」(WBS)に登場するエコノミストでは、
彼が一番好きだった。
若いながらも分析が鋭く、口八丁手八丁のエコノミストの中では珍しく、
テレビ画面からは誠実そうな人柄が伝わっていた。
その氏がマスコミから締め出されつつある中、2004年に”手鏡事件”が起きた。
もちろん私も驚いた。
信じられなかったが、警察や司法の中からもこの手の犯罪者が出るご時勢なので、
「人は見かけによらないもの」だと思うほかなかった。
そして2006年、今度は電車内での”痴漢事件”。
全面否定する氏の言い分が”謀略説”となると、下手な言い訳にしか聞えなかった。
一度だけなら、”それでもボクはやっていない”的な痴漢冤罪の可能性も否定できない。
ところが、実は1998年の”準公然わいせつ事件”を含めて三度目となると、
人格的に問題あるのかなと思えてきた。
さて、2009年。
自民党政権が国民に否決されようとする時期に、小泉・竹中路線の評価をきちんと知りたくなり、
ネットで『ウエクサ・レポート』を購入した。
この書は、2004年から2005年の間の経済とりわけ金融を分析したもので、経済と不可分という意味で、
時の小泉政権についての評価をその時リアルタイムなタイミングで論評している。
その際、ついでに『知られざる真実』も購入した。
まず『レポート』を読んで、2009年は2005年のままだったことがわかる。
われわれは2005年にすべきことを2009年になってやっと初めたのだ。
特に民主党!。
郵政選挙の時、私は本当は民主党に入れたかったのだが、自民党をぶっ壊す本気度を感じられなかったので、
ぶっ壊すと豪語する側に入れた。
氏の才覚と勇気を遅ればせながら再認識したので、ついでに買ったもう一冊も読んだ。
この書は氏が拘置所内で記したもの。
氏の小泉竹中路線の分析がまとめ直され、氏の個人的価値観・人生観・過去などが忌憚なく述べられている。
そして最後の巻末資料に、3つの”事件”についての氏本人の詳しい記述がある。
もちろん主張は、いずれも潔白であり、冤罪であるとのこと。
氏の主張を事実として受け取って読むと、ある種の脇の甘さが、他者に誤解を与え、
それに対する対処(特に警察内で)が誤ると、
更に自分に不利になっていく流れがわかる(これは他人事ではない)。
そして、警察にとって一旦前科者としてマークされると、
以降のちょっとした行動はすべて犯罪行為と関係づけられてしまうことも。
氏のいう”謀略”は権力(官僚組織を含む)がマスコミレベルに対してなされる話で、
自分の事件が権力によって仕組まれたということを主張している(ネットではこのように解釈されている)わけではない。
自分の事件に関しては、警察の捏造を問題にしている。
氏は確かに脇が甘かった。
だがそれによって、不運のらせんに落っこちてしまったら、
犯罪者扱いされて、世間から抹殺されていいのだろうか。
われわれは皆、裁判員候補である。
”推定無罪”の原則をいつも忘れないでいたい。
植草一秀 『ウエクサ・レポート-2006年を規定するファクター-』 市井文学 2005年 1800円
植草一秀 『知られざる真実-勾留地にて-』 明月堂書店 2007年 1800円