だいぶ昔に行ったことあるのだが、無性に仏像を拝みたくなったので、人生で二度目の九品仏(クホンブツ.正式名:浄真寺)を訪れた。
世田谷区の南西部、東急大井町線のその名も「九品仏」で降りる。
境内が広いせいもあるが、緑豊かで庭の風情がとてもよく、前回も好印象だったが、今回も境内の雰囲気の良さでは都区内で屈指であることを確信した(写真は、閻魔堂前の風景)。
都心部のアスファルトとコンクリートと人だらけの寺とは全然違う。
あたかも京都の観光ルートから外れた古刹の雰囲気(拝観料はなし)。
拝んだ仏像は、まずは閻魔堂の閻魔大王、本尊の釈迦如来、そして阿弥陀堂の阿弥陀如来(下写真。堂外より撮影)。
ここは名の通り、上品上生から下品下生まで9通りの印を結んだ阿弥陀如来が3品ごとの堂に計9体があることで有名なのだが、
今回訪れたら、堂内に入れるのは上品堂だけで、あとの2つは締まっていて入口のガラス越しに暗い内部を覗く(一体は修復により不在)。
江戸初期の開山の珂碩上人が弟子とともに釈迦を含めた計10体を造立した(すべて都重文)。本堂内にも本尊以外に 珂碩上人像なども拝める。
九品仏自体は満足だが、ここだけだと時間を持て余す。
そこで前回同様、駅二つ分歩いて等々力(トドロキ)に向う。
都区内で唯一の渓谷、等々力渓谷に行くため。
その間にある尾山台付近はこれぞ世田谷!的な閑静な住宅街で、二階建てながら敷地が広く、また家のデザインも凝っている。
等々力渓谷へは、道路から階段を下る。
すなわち、川が両側10m以上の断崖の下に流れている。
嘘偽りでない真実の渓谷なのだ(右写真)。
前回来た時は、川も両岸も自然のままで、ここが23区内であることを忘れさせる自然風景だったが、その時すでに河川整備の工事をしていて、これでここの渓谷美も終わりだと思っていた。
それもあってここを再び訪れる気にはならなかった。
実際、川床と両岸は人工化されて、川を囲む谷だけ自然が残っているという感じ。
もっとも、周囲は住宅地なのだから河川を自然のままにしておくわけにはいかないというのも分るが…
都民にとってこれで自然の渓谷は、青梅線に乗って鳩ノ巣渓谷までいかないと味わえなくなっている(手前の御岳渓谷、秋川渓谷はV字地形でない)。
いったん渓谷から外れて野毛大塚古墳(前方後円墳)に立寄り、渓谷沿いの湧水をペットボトルに詰め、不動滝の脇を上って等々力不動に出た。
向い側にある御岳古墳は入口が閉められて入れなかった(この付近は古墳が密集している)。
等々力渓谷を作った国分寺崖線に沿って、またもや閑静な住宅街を東に歩き、九品仏駅に到達した。
すなわち私鉄二駅分を一周したわけだ。
都区内とは思えない貴重な2箇所と、それらを結ぶ世田谷らしい高級住宅街を堪能した。
ちなみに渓谷の湧水を家で測ったら、pH6.0,電気伝導率232μS,酸化還元電位+341mVであった。
伝導率から硬水といえ、私が今まで測った湧水の中では、吾野湧水(埼玉県)に近い。