正月三が日は、箱根駅伝以外にテレビは見ず、例年関東戦国史の本を読むことにしていて、今回は『戦国武将列伝2(関東編上)』黒田基樹編 戎光祥出版(2022年)を読んだ。
このシリーズは、いわゆるメジャーな戦国大名クラスではなく、そのクラスに至らない国衆レベルの全国網羅集で、関東だけでも上・下2冊になっている。
関東編の上巻は、北条氏康・上杉謙信・武田信玄の戦国大名3傑が揃う前の、足利公方家と上杉管領家との対立から始まり、それら双方が分裂していくという混沌状態の中で生きた土着の武将たちが上巻だけで38の章で紹介されている。
これらの武将レベルは、大河ドラマはもとより、映画や小説の題材にもならないので(小説になっているのは太田道灌くらい)、彼らのリアルな生き様がわからなかった。
いわば、私が一番知りたい部分を集めた本だ。
そういう期待を込めて3日の間、460ページの上巻を読んだが、正直辛かった。
というのも、結局、彼らのレベルって、実現したい国家・社会観があるわけでなく、ただ父祖伝来の所領の維持拡大に汲々としている生涯だから。
その目的のためだけに、あっちについたりこっちについたり、そして親兄弟、親類縁者、主人と家臣の間で骨肉の争いを演じる。
しかも決定的な強者がいないダンゴ状態なので※、互いに勝ったり負けたりで、ちっとも事態が別次元に展開しない。
※:唯一の例外的強者は太田道灌(勝率100%)。逆にいくら負け続けても死なないのが長尾景春。
そのような煮え切らない生涯の例を40人以上(1章につき2人の例も)続けて読むのが辛かったのだ。
それだけでなく、彼らの史料が乏しいこともあって、人物・事績の学術的確認が精一杯で、人間的なエピソードなどが残っていない(これも唯一の例外が太田道灌)のも、読むのが辛い理由。
戦国末期の忍城の成田氏(「のぼうの城」で映画化)のような痛快なエピソードを期待したのだが、見当たらなかった(かように私も”物語”を求める一人だった)。
記録に乏しく、エピソードも残っていないということは、これらの人々が当時の人にとっても印象に乏しかったということの証左かもしれない。
手元にある下巻はしばらく読まないでおき、関東戦国史後半の主人公『北条五代』を先に読もうか。