新型コロナに対するワクチン接種の可否について、ネットでは賛成派(ワク信)と反対派(反ワク)が対立してきた。
私自身は現代医学を信頼し、怪しげな陰謀論は信じず、しかも「基礎疾患のある高齢者」に該当しているので、自治体からのワクチン接種の通知にすべて応じ、計6回のワクチン接種を済ませた。
果して、当日の腕の痛み以外の副反応はなく、家庭や職場周囲の人々が次々とコロナ感染する中、孤然と非感染を維持してきた。
そもそも私は、花粉症などのアレルギーとは無縁な一方、帯状疱疹には罹っている。
すなわち、免疫反応が過敏となった免疫疾患には無縁で、その逆の免疫力低下による体内ウイルス疾患になったので、免疫力は健常者を0とした場合のマイナス側にあるといってよい。
そういう訳なので、免疫力を高める措置には積極的でありたい。
免疫学についてのブルーバックス(講談社)レベルの本は次々読んできて、最新の2023年刊なのが吉村昭彦著『免疫「超」入門』(講談社)。
コロナ禍が一応の収まりを見せた後の本なので、免疫学の最新の知見だけでなく、コロナ禍でのワクチン対応についても専門的立場で論じている。
成書の多くは、免疫(=ワクチン)の効果ばかりが強調されるきらいがあったが、この書ではサイトカインストーム(免疫機能の暴走)など免疫機構がもたらす疾患についても多くのページを割いており、
例えばコロナ禍でのワクチン対応について(もちろんmRNAワクチンの説明を加えて)、
「60歳未満の健康な成人は追加接種を推奨しない」というWHOの宣言は、広く報道されず、このコロナ禍で明らかになったのは、「感染症の専門家といわれる人たちですら免疫学を理解していない」ことがわかったという。
すなわち、免疫学者としての著者の見解では、高齢者や基礎疾患のある人以外のワクチン接種は必要以上の頻度が求められたという(私に関してはこの頻度でよかった)。
こう警鐘を鳴らすのも、著者の研究分野がサイトカインのメカニズムであるためだ。
さらに本書では、免疫学の今後の発展方向として、がん・老化・脳についても論じている。
すなわち、がんの免疫療法(本庶博士のノーベル賞受賞研究)、”慢性炎症”として理解されるようになった老化(免疫老化)、そして精神障害を含む脳障害における免疫(ミクログリア)の役割についての最新の知見を紹介している。
私の「心の多重過程モデル」における心の最深層(心身相関層)である「システム0」に相当する研究領域は、既存の心理学や精神医学そして脳科学ではなく、生命維持のためのホメオスタシス機構を扱う「精神神経免疫学」※である。
※:中枢神経系・自律神経系(循環器系・消化器系を制御)・内分泌系・免疫系、これらの相互作用システムが対象
その中で免疫系は、意識(システム1)や自我(システム2)発生以前のより根源的な”自己認識”システムに他ならない。
すなわち、当モデルは、”心”というものを”意識”以降の中枢機能に限定せず、生命活動とりわけその半分を担う情報処理活動として捉える視点に立っている。
この視点は、アリストテレスに由来する→アリストテレスの『心とは何か』
という理由もあって、心理学の私は免疫学の本を読む。