今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

WHO報告書における原発事故の心理的影響

2013年03月04日 | 東日本大震災関連
前の記事で扱ったWHOの報告書には、心理的影響についても言及されていた(p90-91)。
それによると、福島の事故の心理的な影響は、チェルノブイリ事故と同様に、他の健康への影響を上回る場合があるという。
なぜなら、目に見えない放射線に対する知識不足による恐怖だけでなく、2011年3月11日の過去ではなく、将来にわたる不安のためである。
しかも、放射線被曝に対する不安反応は、身体的健康リスクが懸念される地域を越えて、広域に拡がっている。
これらの不安が、慢性的なストレス反応を引き起し、不安障害や気分障害(うつ病)という精神疾患を引き起す。
また、被災地住民への社会的偏見が問題を悪化させる可能性がある。

以上のような言及を受けて、私なりにまとめてみる。
まずは、将来にわたる不安に対処するためには、正しいリスク評価の情報を得るべきである。
それがこの報告書だ(但し日本語版がなく、あってもかなり専門的なので一般向けの解説版が必要)。
そして、仮りに発がんリスク(発がんする確率)が増えたと評価されるなら、
その分のリスクを下げる行動を積極的にとるべきだ。
すなわち、禁煙、不必要なX線被曝の回避(たとえば胃検診は胃カメラにする)、
デトックス食品の摂取、さらには心身のストレス低減などに、今まで以上に努力する。

また社会的偏見にも対処しなくてはならない。
世界的に拡がっている無知や政治的意図による放射線被曝への過剰反応が、
被災地やその周辺住民の精神的ストレス(それ自体、発がんリスクを増加させる)と
彼らに対する社会的偏見を高めていることに危惧している。

そしてこの偏見は、自分を被害者側にも加害者側にも立たせる。
たとえば、ほんのわずか増えただけでも放射能は致命的に恐ろしいという思いをもつならば、
福島県内の中通りの人は浜通りを、会津の人は中通りを、
栃木県の人は福島県を、中部以西の人は関東以北を、外国の人は日本を忌避する。
実際、姉が教師をしているイタリアのマンガ学校の生徒が、日本(東京)に行こうとしたら、
親に反対されて来日できなかった。

今回の原発事故が、いったいどの地域の人にどのような健康リスクを高めるのか、
現時点で最も信頼できる情報をできるだけ多くの人に共有してもらうことが重要である。

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