今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

システム3:二重過程モデルを越えて②

2015年08月22日 | 心理学

既存の二重過程モデル、すなわち人間の認知−行動のシステム1(速いが不正確)とシステム2(精確だが遅い)を根底で支えるのが身体的なシステム0であることを以前の記事「システム0:二重過程モデルを越えて①」で示した。
ただしシステム0はシステム1,2を支えているのであって「越えて」はいない。
通常の認知−行動現象はシステム1,2の二重過程で話は済む。

ところが、人間はさらにハイレベルに行くことが可能で、そうすることによって日常では得られない認知体験ができる。

それがシステム3だ。

システム3は自分の認知−行動システムそのものを認知するメタ認知作用である。
この作用は、システム1の自動処理に流されず、システム2の妄想的思考にも距離をおける。
すなわち自分が自明視している前提に気づき、思考のとめどない流れに待ったをかける。
これは現象学※であり、マインドフルネス※である。
マインドフルネスであるということはヴィパッサナー瞑想※である。
※それぞれについてはWikiなり他を参考にしてほしい。Amazonで検索すると関連本が紹介される。

システム3は瞑想的態度ゆえに、システム1のような”行動”でも、システム2のような”思考”でもない。
ただただ”観照”する態度である。
自分の経験を、自明視することなく、過剰に解釈することなく、ただ純粋に気づき、実感する。
システム3は日常的に作動しているシステム1,2を停止する。
それによって、見えなくなっていたシステム0(自分の身体性)に直接出会える。
自己という存在に出会える
(そしてヴィパッサナー瞑想の深まりによって、その存在の実態が見えてくるだろう。
そこまでいったら仏教とハイデガーのそれぞれの存在論が融合するだろう…)。 

日常のシステム1,2の代わりにシステム3を根拠に自己の心・経験を再構成すること。
それがマインドフルネスという認知行動療法であり、ヴィパッサナー瞑想という仏道修行であり、現象学という哲学的態度である。
ちなみに、これらの最終目標はそれぞれ異なっているが,相互影響的利点がある。
たとえば現象学の欠点は実践力の乏しさにあったが、マインドフルネス瞑想(ヴィパッサナー瞑想の一部)と融合することによって、日常的に”エポケー(判断停止)”がトレーニングでき、誰でもが「現象の現われ」を虚心に体験できるようになる。

既存のアプローチは、システム1と2(行動経済学、意思決定論)、システム0と3(精神神経免疫学)、システム1と3(マインドフルネス)、システム2と3(現象学、ヴィパッサナー瞑想)というように任意の1対のサブシステム群を扱っているが、それでは人間存在をトータルに観る視点には達しない。
このシステム0,1,2,3の4つのサブシステム(とその相互作用)からなる心のシステムモデルこそ、これからの(認知、社会、臨床)心理学のモデルにしていきたい(むしろ既存の心理学を超えてしまう…が、それでいい)。

今、この心のシステムモデルの構想を論文にしている。
→論文は2016年3月に刊行されたのでpdfで公開する☞「システム0とシステム3:二重過程モデルを超えて」(山根一郎)

☞システム3の応用:「マインドフルネスで歩行矯正」へ

☞モデルの更なる進展「ステム3からシステム4へ」へ


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