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シュレーディンガーの少女 松崎有理

ディストピアを逞しく生きる女性たちを描いたSF短編集。人が65歳で必ず死ぬ世界、肥満者が迫害される健康至上主義の世界、数学を学ぶことが禁止されている世界、サンマが絶滅してしまった世界など殺伐さは色々だが、どれも発想がすごい。著者の本は本書が3冊目、最近の科学トピックや最先端の科学の知見をエンターテイメントに落とし込むテイストが共通している。個人的に一番面白かったのは、サンマが絶滅した世界で1人の小学生が夏休みの自由研究課題でネット検索やAIツールを駆使して焼いたサンマの味を再現しようと奮闘する「秋刀魚苦いかしょっぱいか」。収録された短編で1番短い掌編だが、近年のサンマ漁獲量減少、AIを普通に使いこなす子どもたちという現代的なトピックからこんなに面白い話を生み出す著者の発想力、凄いなぁと改めて感心してしまった。(「シュレーディンガーの少女」 松崎有理、創元SF文庫)
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