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白鳥とコウモリ 東野圭吾

著者の最新刊。本の帯には「新たなる最高傑作」という文字が踊っていて、セールストークとは言え「容疑者Xの献身」に匹敵する名作かもしれないと期待が高まる。ストーリーは、ほぼ解決済とも思える事件について、最初はほんの小さな違和感のようなものが、担当の刑事、被害者の家族、容疑者の家族の視点から克明に描かれることによって、次第に大きく膨れ上がっていく。派手な設定やストーリーの奇抜さといったものはないが、ちょっとした疑問から新たな疑問が生まれ少しずつ物語が見えてくるその緻密さが著者ならではと思う。読後の衝撃度では「容疑者X‥」には及ばない気がするが、結末に至るまでのゆっくりとした展開と少しずつ真相に近づいているというえも言われぬ心地よさは、これまでに味わったことのないものだった。(「白鳥とコウモリ」 東野圭吾、幻冬社)
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オンライン講義 宇宙論④

宇宙論のオンライン講義の4回目で、テーマは「初期宇宙のまとめ」。途中からの参加だが、これまでの講義がどのくらい理解できたかを確認する回になった。講義は、講師の先生が参加者の質問に答える形で進行、質問内容もそれに対する答えもかなり専門的なものが多く、自分のような素人はやりとりを聞いているだけという感じだったが、ひとつだけチャットで質問をしてみたら、とても丁寧に教えてもらえたので有り難かった。印象的だったのは、「宇宙の始まりの点は地球のどちらの方向にあるのか」という質問に対して「中心点があるという考え自体が間違っている」との答えがあったことや、別の話の中で「宇宙誕生から3分後」という言い方は不正確で、正確には「因果律が成り立つ宇宙が光で3分で到達する範囲の大きさだった頃」だとの説明があったこと。普段何気なく当たり前だと思っている座標軸とか時間軸といった感覚が通用しない議論に衝撃を受けた。次回のテーマは未定。
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オンライン漫談 月刊ワンコイデ(8)

毎月1回のオンライン漫談。最初に本日のテーマは「運」との説明があったが、内容の大半は「小湊鉄道キハ40運行記念列車」の搭乗報告。記念乗車券が抽選で当たったという「運」の良さと列車の「運」行をかけたとのことらしい。小湊鉄道の難読駅名クイズ(海士有木=あまありき、飯給=いたぶ)、記念列車内のディープな車内放送、記念列車を撮影する撮り鉄の傍若無人振りなどの話が面白く、とりあえず予想外の鉄道ネタが聞けてこちらも「運」が良かったというところだ。
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探偵は御簾の中 汀こるもの

書評誌で面白いと書いてあったのでネットで取り寄せて読んでみた。帯には「平安ラブコメミステリー」とあり、平安時代の京都の治安を守る検非違使の長官である別当職の妻が夫から色々聞いて京都の町で勃発する怪事件の真相を当ていくいうミステリー短編集だった。舞台が平安時代ということで、真相の究明よりも貴族たちの体面が最優先だったり、とても怪しい陰陽師が出てきたりで、それが何とも可笑しい雰囲気を醸し出している。また本書で最も面白いのは、探偵役の妻とその夫のキャラクターだ。特に妻の方は一周回って昔の人はこうだったんじゃないかと思えてしまうほどの合理主義者でそれがとても斬新。ひとつ難を言えば、昔の人が本名で呼ばれたり役職とか住んでいる場所で呼ばれたりというのがちゃんとそうであったろうという感じで書かれているが、この辺り幅広い読者のために少し妥協してくれてもいいと思った。(「探偵は御簾の中」 汀こるもの、講談社タイガ)
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谷根千ミステリ散歩 東川篤哉

著者のいつも通りの軽めミステリー短編集。他のシリーズのような架空の町ではなく谷根千という実在の町を舞台にしているので場所のダジャレは少ないが、岩篠兄弟の鰯料理専門店とか谷岡さんのタピオカ店とか人名のダジャレが絶好調だ。ミステリーとしては意外にシリアスな事件もあり結構本格的な謎解きが楽しめる一冊。シリーズ化に期待したい。(「谷根千ミステリ散歩」 東川篤哉、角川書店)
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幕間のモノローグ 長岡弘樹

俳優養成学校を舞台にした短編ミステリー。現役の俳優で学校の講師を務める主人公が、役者としての経験と知識を生かして生徒たちを巡る様々な謎を解決していく。ちょうど「教場」の俳優養成学校バージョンという趣きだ。学校を卒業したあとの生徒たちの進路は主役、準主役、ミステリーので犯人役、時代劇の切られ役、着ぐるみを着たヒーロー役など様々で、そうした役柄によって求められる能力や資質は全く違う。本書では、こうした役柄の違いが丹念に描かれる一方、発声法や体の鍛え方といった俳優養成学校での授業内容、動物行動学、社会心理学などの幅広い蘊蓄が味付けとなり、それらが謎の解明に大きな役割を果たす。話の流れから続編が可能かどうか微妙な感じだが、是非期待したい。(「幕間のモノローグ」 長岡弘樹、PHP研究所)
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オンライン講義 数学的思考②

仕事に役立つ数学的思考の講義の2回めの参加。数学的な思考力や感性を試されるクイズをZOOM会議形式で参加者がチャットをしながら解いていく。今回は、コイン並べ、ビンゴゲーム、コピー用紙の工夫、トイレットペーパーなど、とんちクイズや日常生活に関わる問題を通じて、数学的な思考の生かし方を面白く伝えてくれる。月一回の開催だが次回も楽しみ。
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オンライン講演 宇宙学「インフレーション前夜」

宇宙論の講義を「インフレーション後の再加熱」「インフレーション」と聞いてきて今回が3回目、「インフレーション前夜」というタイトル。前の2回とも質問ができるほどしっかりとは理解できなかったが、とにかく流れとしては時間を遡って「宇宙の開闢」までたどり着き、別途視聴している天文学入門との合わせ技で理解を深められそうな感じになってきた。但し、今回の内容はタイトルの「インフレーションの前夜』というよりは「インフレーションがどのように始まってどのように終息したか」という話で、前の2回以上に難解、理解のざっくりさも前回同様にとどまった。一応理解したのは、エネルギー準位が真空よりも少しだけ高い状況でインフレーションが始まったということ、その少しだけ高い状態になる為には「相転移モデル」という仮説が最有力であること、高いところから真空に近づこうとすると摩擦のようなものでしばらくその位置に止まること、最後に真空に近いところに行き着きインフレーションが終息することなどだ。これでインフレーションの「どうして」と「どのように」が分かったところで本講義も一段落。次はこの辺りの解説本を読んでみてどのくらい理解が深まるかを試してみようと思う。
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オンライン講演 天文学入門⑧

前回は質量ゼロの世界で色々な元素が軽い元素から順番に合成され鉄ができるまでの話を視聴。今回は鉄よりも重い元素の生成だが、話はまず宇宙を飛び交う高エネルギー粒子(宇宙線)がCNOに衝突してLi、Be、Bができるところから始まる。次にいよいよ鉄よりも重い元素の生成だが、そのキーワードは中性子が陽子と電子を放出するベータ崩壊。これにはS過程(slow process)とR過程(rapid process)の2種類があり、S過程は赤色巨星の中で持続的に中性子が供給される状態で1〜10万年かけてストロンチウム、バリウム、鉛など原子番号83のビスマス(Bi)までが生成される。一方、R過程の方は、2つの中性子星が合体する際に起きる中性子の大量供給で、1秒程度の間にプラチナ(Pt)、金(Au)などウラン(U)までの元素が生成される。ここまでが自然に存在する諸元素生成の過程で、これらが宇宙で循環しながら色々な星が誕生したり消滅したりを繰り返しているというのが宇宙のサイクルということだ。何故そうなるのかとかは依然として理解不能の部分も多いが、一応これで宇宙の生成の流れは理解できた気がする。講義は次に「太陽」の話に。生まれたばかりの太陽は中心温度10万K表面温度3千Kでそこから重力で収縮と温度上昇が始まり誕生から8000万年後に1000万Kの高温に達した内部で核融合が始まる。太陽ではppチェインによるエネルギー供給が続くが現在の予測では50億年後にppチェインに必要な水素の供給が足りなくなりやがて白色矮星を経て消滅するらしい。次がどんな話になるのかまだわからないが、とにかくついていけるところまでついていこうと思う。
①宇宙線の衝突による核種生成
②鉄よりも重い元素の生成
③宇宙における元素の循環
④太陽
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その扉をたたく音 瀬尾まい子

プロとも言えずアマとも言えぬ状態でギターを弾いてぶらぶらしている青年が1つの出会いをきっかけにして動き出そうとするまでを描いた小説。この青年、最近の小説の主人公にしては珍しく裕福で不自由のない生活を送っていて、明治時代の夏目漱石が描いた「高等遊民」を彷彿とさせる。漱石の描いた青年とこの青年の違いがそっくりそのまま百数十年の日本の変化なのだと思うと色々考えさせられる。中編くらいの長さだが充実した一冊だった。(「その扉をたたく音」 瀬尾まい子、集英社)
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ジェリーフィッシュは凍らない 市川憂人

先日読んだ「半席」が2017年の「このミステリーがすごい」の4位にランクインされていて、そのベスト10を見たら本書が入っていた。その頃に購入したが何故かずっと未読だったので、この機会にと思って読んでみた。キャッチコピーは「21世紀のそして誰もいなくなった」ということで、新型の高性能気球が冬山で遭難、乗客全員が他殺死体で発見されるという歴史改変ミステリーだ。歴史改変といってもそれほど現実世界と大きな違いがないのが何となく面白いし、ミステリーとしてもとても面白い。ちょっと前に「ゾンビがいる世界のミステリー」が大いに話題になったが、本書はその作品の先駆けのような感じで、ある意味ミステリー界に一石を投じた作品と言える気がした。(「ジェリーフィッシュは凍らない」 市川憂人、創元推理文庫)
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2021年本屋大賞

今年度の本屋大賞の受賞作は町田その子の「52ヘルツのクジラたち」。今年は珍しく予想がドンピシャで当たった。とにかく今年のノミネート作品は時勢を反映してか暗い話が多かった。この作品も決して明るい作品ではないが、最後に見える希望の光が他の作品とは完全に一線を画す強さを持っていて印象的だった。
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オンライン講演 宇宙学「インフレーション」

前回の「インフレーション後の再加熱」から時間を遡って、今回は「インフレーションという仮説が何故立てられたのか」というところの解説。前回は「再加熱」という言葉すら初耳だし、何がどういう順番で起きたのかという流れを理解するのが精一杯だったが、今回も全く同じ感じで終始してしまった。宇宙マイクロ波背景放射という最先端の技術で宇宙の果てを観測すると、宇宙はほぼ完全な球体に近い一方、その内部の密度は一様ではないということがわかり、しかも全く別の方向の宇宙の果ての温度が完全に一致するという。因果関係のないはずのものが完全に一致してしまう「地平線問題」、この不思議な現象を説明する現時点での唯一の仮説が「インフレーション」とのことだ。細かい話には全くついていけなかったが、前回理解したと考えた流れは確認できた気がする。次回は、いよいよ宇宙の開闢、インフレーション前夜の話になる。楽しみにしたい。
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オンライン講演 天文学入門(7)

今回は、天文学入門講座の第7回目で、宇宙創成期に宇宙の元素がどのようにして出来たかというお話。詳しい理論は分からないところも多かったが、ビッグバンによって水素、ヘリウム、リチュウムの3つの元素が合成され、その後星ができてその中で鉄までの重い元素が合成されて超新星爆発で宇宙に拡散していったということが分かった。恒星の内部でできる元素は恒星の質量によって異なり、鉄などの重い元素は太陽よりも8倍以上重い星に由来するが、そのように重い星は寿命が数百万年程度と短いという。太陽というちょうど良いくらいの大きさの恒星があって、そこに惑星が生まれ、さらにそこに生物が生まれたという話に何かとても神秘的なものを感じた内容だった。次回のテーマは、今回の続きで「鉄よりも重い元素がどうやってできたか」とのこと。
①ビッグバン元素合成
②重元素合成
③超新星爆発
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海外旅行なんか二度と行くかボケ さくら剛

買うのが少し恥ずかしいくらい品のない題名だが、面白そうなので読んでみた。読み始めると、突然フォントが大きくなったり小さくなったりするし、関西弁のような口調だし、全体的にこれまで読んだことのないような題名通りの下品な感じだが、内容は非常にしっかりしていて、しかも面白い。安易な海外旅行の落とし穴を自らの体験から諌め、海外旅行中に病気になった時の海外旅行保険の有り難さ、安易な地元民との交流の怖さなど、メッセージ性も強い。特に最後の「北朝鮮旅行」の記録は、身をもって体験したことを他の人の参考にしてほしいという気持ちがひしひしと伝わってきて、本当にそうだなぁ、教えてくれてありがとうと本気で思った。(「海外旅行なんか二度と行くかボケ」 さくら剛、産業編集センター)
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