書評、その他
Future Watch 書評、その他
サイン会はいかが? 大崎梢
「配達赤ずきん」「晩夏に捧ぐ」に次ぐ成風堂書店事件メモの第3弾。いろいろ意見はあるだろうが、私としては、この3冊の中でも本書が最も楽しめた。第2作目の「晩夏に捧ぐ」がやや期待はずれだったので、3作目が面白いかどうか心配だったが、出来としては第1作目と同じくらい面白かった。登場人物のキャラクターがこなれてきて特徴が際だってきた分、読み手としては面白さを素直に受け止められたように思う。それにしても本屋さんという仕事は大変だ。家の近くにいかにもやる気のなさそうなおじさんのやっている小さな本屋があるのだが、結構つぼを押さえた品揃えで、行けば必ず2、3冊は読みたい本が見つかる。やる気なさそうに見えて、陰でいろいろ努力しているんだろうなぁと、本書を読んで思った。(「サイン会はいかが?」大崎梢、東京創元社)
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ビリー・ボイド ピピン
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アルウェン リヴ・タイラー
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アンディ・サーキス ゴラム&スメアゴル
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デビッド・ウェンハム ファラミア
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ジョン・ノーブル デネソール
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村田エフェンディ滞土録 梨木香歩
本当に素晴らしい本である。映画のラストのように登場人物の「その後」が淡々と語られる部分は、読み手の心に、登場人物1人1人、場面の1つ1つをしっかりと焼き付ける。絵画をキャンバスに定着させるフィキサチーフのようなものだった。若い主人公、主人公の携わる仕事も始まったばかりの若い学問で、日本という国そのものが若く、本書全体が若さに満ちている。英国人、ドイツ人、ギリシャ人、トルコ人と過ごした短い時間のなかで、回りのものに対する感受性、日常生活のなかでこうしたものを忘れてはいけないなぁ、とつくづく感じた。本書の大きな教訓はもう1つ、異文化との交流における、アバウトであることの大切さである。「そんなものかもしれない」と全てを受け入れていく受容力、すべてはそこから始まるのかもしれない。私自身、感性も理性も年々すこしずつ柔軟さがなくなっていくような気がしていたので、大いに反省した。(「村田エフェンディ滞土録」、梨木香歩、角川文庫)
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漱石先生の事件簿・猫の巻 柳広司
これも、ミステリーYA!の中の1冊。漱石の「我輩は猫である」の世界を舞台にして、軽いミステリーを盛り込んだ面白い作品だ。突発的な事件に飛び込んでいくというよりも、日常見落とされていることがら、謎と思わなければそのままで済んでしまうところに謎を見つけて謎解明のプロセスを楽しむというところも無理がなくて楽しめる。それは、猫が語り手という設定上、ストーリーの展開に対して受身にならざるを得ないことを考えると、手法として間違っていないと思うし、そうした制約のなかで話を綴っていくことのできる技巧もすごいと思う。但し、そのために、事件そのものの魅力とか全体の盛り上がりが今一つで、次も次もという気分、次が待ち遠しいという高揚感に乏しいのは否めない。「猫の巻」とあることから続編が想定されているのだろうが、漱石の世界を舞台にするという本書同様の強い制約の元で、いかに盛り上がりのある話にできるかどうかが次作の課題だと思う。(「漱石先生の事件簿・猫の巻」柳広司、理論社)
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ヴィゴ・モーテンセン アラゴルン
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天国は星空の下 篠田真由美
理論社の「ミステリーYA!」シリ-ズには大いに期待しているし、前に紹介した「カカオ80%の夏」のような新しい作品を読むことができて、その期待に十分応えてくれているとは思うのだが、ややその路線に気になるところがある。それは、若い読者の読書離れを食い止めるためというのは良いのだが、そのために、安易に従来のミステリーとライトノベルの中間的なジャンルというコンセプトにとどまっている作品が混在してしまっていることだ。もっと実験的な作品の紹介の場となることを期待しているのだが、若者が主人公で、学園内で事件が起きて、やや醒めた主人公と2・3人の友達、それに天才的な才能を持つやや謎めいた仲間、こんなライトノベル的な設定の作品が散見されるのが気になるのだ。本書もストーリーは面白いのだが、地の文がどうも「大人が書いた若者言葉」で、主人公の設定も「大人がイメージするところの若者」という感じがしてならない。文章やキャラクターがライトノベル的だがそこまで徹底しておらず、中途半端な印象だ。そこのところが、大変面白かった「カカオ80%の夏」との違いではないか。例を挙げるならば、本書では「一矢報いる」「百聞は一見にしかず」「袋のねずみ」「終わりよければ全てよし」といった慣用句が結構出てくるが、私の知る限り、こうした慣用句やことわざの類を若者が使うことはまずない。それは、もともとそうした言葉を知らないという事情もあるのだが、それ以上にそうした言葉を使うことを恥ずかしいと思っているからのようだ。よく話の中で老婆がでてきて「……じゃ」といった表現を連発するような作品が今でもあるが、実際にそんな語尾をつけて話す人を聞いたことはない。これこそ、ステレオタイプというか、作者の勝手な思い込みのようで、それだけで読んでいて興ざめになる。この作品は、ストーリーも魅力的だし、いくつかの謎が未解決のまま終わっているので、シリーズ化されることは確実だが、私自身は、このままでは主人公がどうも嘘くさくて次も読もうというエネルギーが沸いてこないというのが実感だ。(「天国は星空の下」篠田真由美、理論社)
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ケイト・ブランシェット ガラドリエル
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水銀虫 朱川湊人
この作者の作品は、直木賞の「花まんま」を最初に読んでから、「かたみ歌」「わくらば日記」と読み進め、本書で4作品目だ。最初の「花まんま」で「セピア色の都市伝説」という強烈な印象を植え付けられたせいか、その後の2作も同様の感触で楽しめた。本書についても、同じ路線であっても文句のないところであったが、作者自身はもう少し先に進んでいるようだ。「セピア色」も「都市伝説」敵要素も薄れているが、それでもこの作者の話は本当に面白い。とにかくストーリーの運び方が抜群にうまい。文章もわかりやすい。よく考えると非常に救いのない話なのだが、それでいて後味が悪くない。何故なのかよく説明はできないが、直木賞が生んだ大物ストーリーテラーであることは間違いないと思う(「水銀虫」朱川湊人、集英社)
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地下街の雨 宮部みゆき
本書に収められた短編では、いろいろ不思議な事件が起きるのだが、そこにちゃんとした理由があったり、謎が解明されない不思議のままで終わってしまったりする。それで、別に不満を感じないのは、とにかくストーリーが面白いからだ。普通であれば、謎解きがちゃんとなされる話と、そうでない話では、読むほうの心構えが違う。謎解きがあるのであれば、「この事件で一番得をするのは誰か」などと考えながら読むし、不思議のままで終わるのであればそんなことを考えてもしょうがない。そのあたりがどっちに転ぶか判らないところがこうした短編の面白さかもしれない。読み始めた時点で、作者との駆け引きが始まっている。しかも、この短編集の場合、初めから罠にかかってしまっている方が多かった。特に最後の短編「さよなら、キリハラさん」は、SF小説としても傑作だ。普通の人なら一生に一つ思いつくかどうかというほど面白いアイデアが盛り込まれている。こんな面白いアイデアを短編、しかもややコミカルな話に使ってしまっていいのか、などと思ったりする。こんなところでSFの傑作に出会おうとは思いもしなかった。これも、読み始めた時点ですでに作者の罠にはまっているのである。また、この作品の最初の日常生活の中の音についての記述は本当にうまかった。(「地下街の雨」宮部みゆき、集英社文庫)
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オーランド・ブルーム レゴラス
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イライジャ・ウッド フロド
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