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ざんねんな食べ物事典 東海林さだお

題名から食べ物に関するエッセイ集かと思ってネット注文したが、必ずしも食べ物の話ばかりではなく、雑誌に掲載された色々なジャンルのエッセイを集めた一冊。要は「ざんねんな◯◯」という本が色々話題になっているのでそれにあやかったネーミングということだった。これまでに何冊も読んできた著者の「丸かじり」シリーズは一編が5〜6ページくらいだが、本作のエッセイは15ページと長め。じっくり楽しめていいなぁと思うのとやや冗長だなと感じるのが半々くらいという印象だ。(「ざんねんな食べ物事典」 東海林さだお、文春文庫)
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初夏の訪問者 吉永南央

食器販売を併設したカフェを営むおばあさんが主人公のシリーズ8作目。自分自身や友人の老い、世代の違う周りの人達の変化が緩やかに進む様が独特の静かな文章で綴られていく。このシリーズはおばあさんが主人公だが、全く教訓めいた「おばあさんの知恵」のような言動がないのが特徴。今回は主人公の過去に関係したある事件がメインストーリーだが、これまで主人公の過去についてどんなことが書かれていたのかあまり覚えていないので、こんな波乱に富んだ半生だったのかと少し驚いてしまった。(「初夏の訪問者」 吉永南央、文春文庫)
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胸の振子 風野真知雄

シリーズ第8作。話は主人公の新たな敵との戦いの顛末が中心だが、戦いに決着がつき、しかも日付は大晦日、珍しくとても切りの良いところで次巻に続く。本シリーズもあと残り2巻なので、いよいよこれから舞台は大きく動き始めるのだと思う。すれ違い物語の方はお互いの存在を確認し合うところまで進展。僅かな進展とはいえ読者にとっては待ちに待った瞬間というところだ。(「胸の振子」 風野真知雄、角川文庫)
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ビートルズ 北中正和

ビートルズ真っ只中世代としては今更「ビートルズ」の解説本を読むのもなんだかなぁと思ったが、最近の映画「ボヘミアンラプソディ」でクイーンについて考え直すこともあったし、新しい発見があるかもしれないと思って読んでみた。内容は、ビートルズの初期の楽曲や活動を中心に、ビートルズの楽曲と、他の音楽ジャンル、多様化が進んだ時期のイギリスの情勢、さらにそれに伴う価値観の変化との関係性などの解説だが、読んでみてやはり知らなかったことが沢山あって面白かった。特にビートルズのメンバーが4人ともアイルランド移民の流れを汲んでいるというのには驚かされた。本書はビートルズをあまり知らない世代、真っ只中世代、どちらが読んでも色々な発見がある一冊だと感じた。(「ビートルズ」 北中正和、新潮新書)
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連星からみた宇宙 鳴沢真也

「連星」をキーワードにして宇宙に関するの様々な知見を教えてくれる啓蒙書。これまで宇宙については、その誕生から終焉までのプロセス、恒星の一生、宇宙に様々な元素が生成される過程などを本やオンライン講義で学んできたが、連星については、半数以上の恒星が何らかの形で連星を形成していて太陽のような単独星はむしろ少数派という話は聞いていたし、重い元素の生成に欠かせない中性子星の合体などは連星を大前提にしているのだからその重要性は何となく理解していた。本書はそうした漠然としたところをしっかり解説してくれると同時に、さらに研究者の立場から宇宙の創生以外の研究について、星の質量の測定など多くの宇宙論の進歩に「連星」の存在が欠かせないということを教えてくれる。連星の種類や進化の仕方など「連星」そのものに関する解説も面白く充実した一冊だった。(「連星からみた宇宙」 鳴沢真也、ブルーバックス)
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紅蓮館の殺人 阿津川辰海

著者の本は2冊目。前に読んだ短編集がとても面白かったので大いに期待して読み始めた。読後の感想は、外界から遮断されたクローズドサークル、仕掛けの施された洋館の中で起きる館ものという本格ミステリーの要素を前面に打ち出していて、それなりに楽しく読めた反面、本格ミステリーの負の部分も強く感じさせる作品だったということ。謎解きの肝となるトリックは言葉で説明されてもなかなかイメージできないし、そのトリックを成立させるための設定があまりにもご都合主義。しかも本作では、タイムリミットものという要素を2人の探偵のスタンスの違いを延々と説明する冗長さが邪魔をしていたり、過去と現在の事件のつながりの不自然さ、そもそも建物に施された仕掛けの不自然さが目につくなど、色々な要素を詰め込みすぎたようにも思われたというのが正直な感想だ。(「紅蓮館の殺人」 阿津川辰海、講談社タイガ文庫)
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美姫の夢 風野真知雄

シリーズ7作目。いよいよ幕末の天下騒乱が間近に迫るなか、主人公たちも少しずつその渦に飲み込まれていく。すれ違い物語の方は、突然新しいキャラクターが登場、さざ波を立て読者をハラハラさせる。大ごとにはならずに済みそうな感じだが、このまま丸く収まるかどうかは予断を許さない。次巻から最終巻までネットで購入できたので、あとはじっくり最後まで楽しみたい。(「美姫の夢」 風野真知雄、角川文庫)
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落語 一之輔桂宮治二人会

人気落語家春風亭一之輔と真打になったばかりの若手落語家桂宮治の二人会。古典落語ばかりだろうとは思ったが、前後左右空席の通路側の席が予約できたので、この機会に人気の2人を聴いておこうと思って行ってみた。思った通り落語5席全て古典落語で聴いたことのない演目は2席だけだったが、聴いたことのある演目でも噺家によって印象が違うし面白くなるんだなぁと思いながら楽しく時間を過ごせた。通常お開きの時に出口に掲げられる「演目表」がないので係の人に聞いたら「掲げると人が密集するので明日Twitterにあげます」とのこと。帰りの際の離席も密にならないように3列ずつ順番に退席など、徹底した感染予防対策に好感が持てた。(10月17日、神奈川県立音楽堂)

①開口一番(春風亭いっ休)「まんじゅうこわい」
②春風亭一之輔 「噺家の夢」
③桂宮治 「親子酒」
④お仲入り
⑤桂宮治 「つる」
⑥春風亭一之輔 「心眼」
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異形のものたち 中野京子

古今東西の美術作品で表現されている「異形のもの」を人獣、蛇、悪魔、キメラなどのカテゴリーに分け、それが描かれた美術作品の見方や歴史的背景などを教えてくれるエッセイ風の解説書。言葉などでしか伝わっていないものの可視化を試みる様々な美術家の努力とか妄想のようなものが伝わってきてものすごく面白い内容。但し、非常に残念なのは掲載されている作品の掲載の仕方が雑なこと。絵の左右に解説を入れたいがために、大半の絵画が左右見開きになっていてその真ん中部分が見えなくなってしまっていたり歪んでしまっていたりしている。詳しく見たければちゃんとした美術書を見れば良いのかもしれないが、著者の本の良さの一つはあまり知られていないマイナーな作品にもスポットを当ててくれているところにあるのでちゃんとした図版で見ようと思ってもそう簡単ではないし、そもそも気軽に読めるのが新書の良いところのはず。本書の良さが図版の扱いで随分損なわれてしまっている気がした。(「異形のものたち」 中野京子、NHK出版新書)
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落語 一之輔・コラアゲン二人会

人気落語家春風亭一之輔と漫談のコラアゲンはいごうまんという異色コンビの二人会。大きなホールでの開催は2回目。コロナ禍前から楽しませてもらっていたイベントだが、前後左右空席の通路に面した端の席が予約でき、ようやくこうして生で見られるようになったのが嬉しい。オープニングトークでは「平成の小室さん」というびっくりする告白話で盛り上がり、次の古典落語も一之輔師匠ならではの面白さ、さらに落語のまくらの小三治師匠の思い出話、落語界の逸材林家やま彦の話も楽しかった。仲入り後の漫談は1時間に及んだが、親の葬式の大変さを改めて思い起こさせてくれるとても味わい深い内容で、時間がたつのを忘れて聞き入ってしまった。この二人会は来年の3月と9月の2回既に開催が決定しているとの告知があり、今から楽しみだ。(10月14日、横浜にぎわい座)
①オープニングトーク
②春風亭一之輔 猫の災難
③コラーゲンはいごうまん
 オカンとボクとときどき合掌
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夏の終わりの時間割 長岡弘樹

大好きな作家の短編集。読み始めていつも通り短編の名手と言われる著者の作品を堪能していたのだが、途中でアレっと思って解説を見たら、本書は「救済 SAVE」という単行本の改題作品で実は自分も既読だったことが判明、しかもつい3年前に読んだばかりの本だった。このまま読み続けるかどうか迷ったが、そのまま読み続けることにした。謎解きをメインにしたミステリーならばやめていたかもしれないが、この短編集はミステリー要素が少なく再読しても面白いと思ったからだ。同じ出版社による文庫化なのになぜ改題したのか理由は不明だが、著者の新刊が待ち遠しい読者に向けて、「もう一度これを読んで待っていてね」というメッセージかもしれないと好意的に解釈することにした。(「夏の終わりの時間割」 長岡弘樹、講談社文庫)
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心臓と左手 石持浅海

警視庁警部がお酒を飲みながら語る解決済みの事件について、主人公がちょっとした疑問から本当の事件の姿をあぶり出すという趣向の短編集。捕まった犯人は犯人で間違いないのだが、その動機や別に隠された犯罪の存在が提示されるなど、どの短編も思わぬ展開に驚かされる。このシリーズはかなり前に一冊読んでとても面白かった記憶があるのだが、何故か他の作品を未読のまま放置していた。あと長編が一冊と短編集が一冊残っているようなので楽しみだ。(「心臓と左手」 石持浅海、光文社文庫)
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久遠の檻 知念実希人

本書はシリーズ12作目。登場人物の掛け合い漫談と医療ミステリーというテイストはこれまで通りだが、最初に提示される謎はこれまでの作品の中でも1、2を争うほど不可解なもの。歳をとらない少女、死んだはずの少女の復活などなど、これらの謎を医学的な知識で解き明かせるとはとても思えなかったのだが最後には見事に解決してみせる。さすが本当のお医者さんならではの発想と論理思考だなぁと思う。医学にしてもAIにしても最先端の科学が悪用されることの恐ろしさを改めて実感。本書の前に読んだ著者の作品がほとんど医学的要素のないミステリーだったので作風の変化かもしれないと思ったのだが本書を読んで少し安心した。(「久遠の檻」 知念実希人、新潮文庫)
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宵闇迫れば 風野真知雄

妻はくノ一シリーズ第6作目。本作の第1話から第5話までは主人公たちの話にはあまり大きな出来事がなくやや停滞気味だったのだが、最終話で敵と味方の形勢大逆転とも言うべき驚愕の事実が2つ次々と明かされる。一見ご都合主義のように思える展開だが、これまでにちゃんと色々な伏線はあったし、不思議だなぁと思っていたところも上手く説明がつく。またしてもしてやられた感のある展開だ。さらに最終話の最後に全く唐突に不思議なものが登場、謎のまま次巻へ続く。(「宵闇迫れば」 風野真知雄、角川文庫)
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ボヘミアンラプソディーの謎を解く 菅原裕子

映画「ボヘミアンラプソディー」のヒットに前後して、ネットなどで広まった「ボヘミアンラプソディーはフレディのカミングアウトソング」という噂の真偽、出所、社会的背景などを考察した一冊。自分自身はクイーンの大ファンではないが、映画がすごく面白かったので、気になって読んでみることにした。自分はそういう噂があること自体知らなかったが、映画を観た時の直感としてこれはカミングアウトだろうなぁ、カミュの異邦人の影響を受けているなぁ、と2つのことを感じたのを記憶している。噂の真偽は別にして、噂にはゴシップを好む人間の暗い部分と、今はそんなに苦しまずに済む世の中になったよという明るい部分の両面があるという著者の指摘は鋭い。そうした壁が低くなったからこそ、素人の自分でもそうした匂いを感じることができたのかもしれない。もう一つこの本の面白かったところは本書が刊行されるまでの経緯。ダメ元で出版社に原稿を送り一旦ダメ出しされたが諦めず、紆余曲折を経て刊行できたという。(「ボヘミアンラプソディーの謎を解く」 菅原裕子、光文社新書)
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