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漫談 漫談の真髄

ダメじゃん小出とコラアゲンはいごうまん、スタンドアップコメディの二人会。ダメじゃん小出はオンライン視聴を含めて20回ほど視聴しているし、コラアゲンはいごうまんは横浜にぎわい座での一之輔との二人会に何度か参加しているが、この2人の組み合わせは初めて。最初に2人のオープニングトークがあった後、それぞれが「師匠」というテーマで45分ほどの長尺の漫談を披露してくれた。連休明けの平日夜ということで後ろの方の席に少し空席があったが、期待通りの楽しい時間を過ごせた。なお、コラアゲンはいごうまんは持ち時間を大幅にオーバーすることがあるので途中でお尻が痛くならないかと心配だったが、客層が高齢者ばかりで夜も遅いということをちゃんと考慮してくれたようで、時間通りに終わってくれたのが有り難かった。
(演目)
①オープニングトーク
②コラアゲンはいごうまん
  広島太郎という路上生活者の話
中入り
③ダメじゃん小出
  アメリカ人のジャグリングの師匠の話
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謎の香りはパン屋から 土屋うさぎ

本屋さんで偶然見つけた本だが、帯をよく見てみたら「このミステリーがすごい大賞」受賞作と書いてあってちょっとびっくりした。内容は、パン屋さんでアルバイトをしている漫画家志望の大学一年生が職場でのちょっとした謎を解き明かす、よくあるお仕事小説的なコージーミステリーだ。短編ごとにクロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパンといったお馴染みのパンが登場してパンに関するトリビアを知ることができるのも楽しいし、主人公がパン屋さんの仲間やお客さんのちょっとした秘密を推理していくのも楽しくて、読んでいて気持ちがとても良かった。著者の略歴を見ると本書の主人公と同じく漫画家としても作品を世に出しているらしく、著者自身と重なる部分も多い気がする。本書の続編でも良いが、デビュー作である本書の次の作品が楽しみだ。(「謎の香りはパン屋から」 土屋うさぎ、宝島社)
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ことばの番人 高橋秀実

何人もの校正のプロたちにインタビューをして「校正のあり方」を語ってもらうことにより、「言葉とは何か」を考えていくという内容の一冊。言葉というものの正誤は時代によって変化していくもので、彼らが参照する辞書の内容もそれに従って変化していく。ある校正のプロは、こうした変化を確認するために版や刷の異なる広辞苑を100冊以上、言海を270冊も所有しているという。そうした変化は辞書に載っている単語だけでなく助詞の使い方や表記の仕方にも及ぶし、さらに文学作品では、敢えて一般的ではない表記をしたり、確信犯的に間違った表記をする場合もある。また、言葉の使い方や漢字の表記は、行政によって効率化や教育的思惑から標準語という形で歪曲されることもある。こうした要素が、ある意味単純な間違い探しと思われがちな校正という作業の背景に無数に存在しているという。氷という漢字は本当は「ニスイに水」だった、校正の専門会社がある、AIに校正をやらせてみた、人体中での遺伝子複製の際に校正を担うDNAポリメラーゼという校正を行う仕組みがある、アメリカ占領軍から提示された日本国憲法案の日本語訳を巡る国会内でのやりとりなど、興味深いびっくりするようなエピソード満載の一冊だった。なお、本書は著者の遺作だが、あとがきに著者の奥さんの病気の話が書かれていて、人生どうなるか分からないものだと痛感した。(「ことばの番人」 高橋秀実、集英社インターナショナル)
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死の貝 小林照幸

書評誌で絶賛されていたノンフィクション。本書には、副題に「日本住血吸虫症との闘い」とあるように、明治期に山梨、広島、及び九州南部のみでみられた謎の風土病(後に日本住血吸虫症と判明)について、その発症の原因や感染ルート(中間媒体のミヤイリガイなど)を特定し、さらに治療法、予防法を確立して完全に制圧するまでの多くの医師、研究者、行政らの壮絶な闘いが描かれている。まず巻頭の一枚の写真を見てこの病気の苛烈さに驚かされる。そして、遺体の解剖が罪人の遺体しかできなかった時代(死亡した患者の遺体の解剖ができなかった時代)、電子顕微鏡のない時代に、病気の原因を突き止めていくまでの地道だがドラマティックな物語に圧倒される。その後ようやく発症の原因が門脈に寄生する全く新しい寄生虫(日本住血吸虫)であることが突き止められるのだが、そこに至るまでの、研究のために死後の解剖を希望した患者の話、感染ルート特定のために愛猫を検体として差し出す医師など、本当に涙なしには読めない話の連続だ。さらに話は治療薬の探究、予防方法の模索(溝渠のコンクリート化、熱湯消毒、PCPナトリウムなど殺貝剤による消毒、水田から果樹園やゴルフ場への転換、虫を媒介する農耕用牛馬から機械への転換など)へと続いていくが、その過程で昭和天皇による研究者への激励、レイテ島での米兵大量感染の教訓から対策を強力に推進した戦後のGHQ、揚子江流域での大量死に直面していた中国の周恩来首相の日本への協力要請といったエピソードが続く。いずれのエピソードも驚きの連続だし、日本での研究成果が中国やアフリカなど世界中の風土病との闘いに役立っていくのが感動的だ。そして、本書に関して一番驚くのは、これが執筆された1990年代に本書の著者がまだ20代だったという事実だ。当時は懸命にこの病との闘いに臨んだ医師や学者の一部がまだ存命で、本書こそ彼らへのヒヤリングが可能だった最後のタイミングで書かれたという事実に圧倒される。(「死の貝」 小林照幸、新潮文庫)
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未整理な人類 インベカヲリ

知人に勧められた一冊。写真家でノンフィクション作家という著者のエッセイ集だが、これがかなり衝撃的な内容だった。それぞれのエッセイに統一的なテーマは特にないようだが、一貫しているのは、各エッセイに著者自身も含めて「変なことをしてしまう人々」が何人も登場すること。著者自身の「不幸の手紙」「電柱に書かれた落書き(鉄柱詩)」コレクションの他、不可解な収集癖犯罪者、道端のお地蔵さんに服を着せる人などがテーマのエッセイがあるし、メインテーマ以外でも随所にそうした人々が登場する。その他、「東京拘置所のランチのコッペパンが絶品」「集合住宅空き巣被害の9割は101号室」「厚さに比べて重たい本が売れる」「普段不気味な声で鳴くキョンは捕獲される時だけ可愛い声で鳴く」といった犯罪絡みや真偽不明の不思議なトリビアも満載、不思議な感じの面白さを堪能した。(「未整理な人類」 インベカヲリ、生きのびるブックス)
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寄席 お笑いぱっちり倶楽部

写真倶楽部に所属する落語家や漫才師たちによる年に一度の寄席。自分は昨年に引き続き2回目の参加。開口一番を含めて落語が4席(全て古典落語)、その他スタンドアップコメディ、紙切、動物モノマネなど色物4組、ナイツの漫才、トータル9組が出演、3時間近い長丁場だった。昨年は長すぎて途中で退席したが、今年は頑張って最後まで楽しんだ。ザ•ニュースペーパーとナイツはさすがの面白さ、その他の動物モノマネ、紙切も軽く観ていられて楽しかった。写真倶楽部座談会では、お互いがそれぞれが持ち寄った作品(今年のお題は「爆笑」)の感想などを話し合って中から優勝作品を決める形式で、結果は2年連続で江戸家招きねこ師匠の作品が優勝。来年のお題は「推し活」とのこと。来年も忘れずに参加したい。

①開口一番 笑福亭ちづる みそ豆
  豆のつまみ食い→おかわり
②落語 古今亭今いち 手紙は笑う
  恋文の代筆→花札こいこい
③スタンドアップコメディ ザ•ニュースペーパー
  岸田首相、小泉進次郎モノマネ
④動物モノマネ 江戸家招き猫
  ウマ
⑤謎かけ川柳 仲八郎
⑥落語 立川談幸 片棒
  三兄弟、葬式の出し方
中入り
⑦紙切 林家喜之輔
  大谷翔平、横浜風景、招き猫
⑧写真倶楽部座談会(お題「爆笑」)
優勝江戸家招きねこ(2年連続)
⑨漫才 ナイツ 
⑩落語 三笑亭夢太郎 置き泥
  新米泥棒、来月の晦日も来てくれ
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漫才 寄席漫才の底力

浅草や鈴本などの寄席で活躍し、漫才協会の副会長を務める人気漫才コンビ、ロケット団と宮田陽昇による漫才とトークの2時間。横浜にぎわい座での公演は5回目とのことだが、自分は昨年に続いて2回目の参加。平日の夜なので7割くらいの入りで、観客のほぼ全員が高齢者。漫才は高齢者を意識したネタ中心でそれぞれの持ち味が出ていて面白かったが、それ以上にトークが普段TVなどでは聴くことのできない内輪の話が満載で楽しかった。次回(6回目)が10月11日という告知があり楽しみだが、できれば夜ではなく昼公演がありがたいと思った。
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シュレーディンガーの少女 松崎有理

ディストピアを逞しく生きる女性たちを描いたSF短編集。人が65歳で必ず死ぬ世界、肥満者が迫害される健康至上主義の世界、数学を学ぶことが禁止されている世界、サンマが絶滅してしまった世界など殺伐さは色々だが、どれも発想がすごい。著者の本は本書が3冊目、最近の科学トピックや最先端の科学の知見をエンターテイメントに落とし込むテイストが共通している。個人的に一番面白かったのは、サンマが絶滅した世界で1人の小学生が夏休みの自由研究課題でネット検索やAIツールを駆使して焼いたサンマの味を再現しようと奮闘する「秋刀魚苦いかしょっぱいか」。収録された短編で1番短い掌編だが、近年のサンマ漁獲量減少、AIを普通に使いこなす子どもたちという現代的なトピックからこんなに面白い話を生み出す著者の発想力、凄いなぁと改めて感心してしまった。(「シュレーディンガーの少女」 松崎有理、創元SF文庫)
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ラグビー 横浜キャノンイーグルスVSクボタスピアーズ

今季4度目のラグビー観戦。大好きなデクラーク選手が出場するというメールでの通知があったので観に行った。今回は、ほぼ中央の前から4列目と絶好の席で、これまで以上に迫力のあるプレーを近くで堪能できた。試合は一進一退の展開ながら前半はイーグルスがわずかにリード。寒さ対策として携帯カイロを持参したが、身体が冷えてきたのでハーフタイムに入ったところで帰宅した。とにかく風が強くてしかも舞っている感じで、キックの名手田村選手らもすごく苦戦していた。帰ってTV録画を観たらイーグルスが逆転負けしていた。今季のホーム最終戦ということで、来季を楽しみにしたい。
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漂流老人ホームレス社会 森川すいめい

精神科医でホームレス支援の活動をしている著者が、日々の活動で出会ったホームレス、一緒に活動をしている仲間たちの困難な状況を伝える内容の一冊。突然の解雇、アルコール依存症、認知症、統合失調症、知的障害など様々な理由でホームレス化を余儀なくされた人たちへの様々な冷たい仕打ちや末路が、何十もの事例で紹介されている。読み進めていて強く感じたのは、ホームレスの人たちの困窮の要因が様々であるにも関わらず、善意悪意を問わず支援の仕方が「ホームレス」という現象面だけで括られた支援に留まっていることの問題点だ。これはホームレス支援だけでなく様々な福祉活動や行政の取り組みに言えることだし、著者が本書で一番伝えたかったことも多分そういうことだと思った。(「漂流老人ホームレス社会」 森川すいめい、朝日新聞出版)
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その復讐、お預かりします 原田ひ香

(更新を再開します)
人気作家の最新文庫化本。本屋さんに行くと目立つところにたいてい著者の本が置いてあり、著者の本にはハズレがないという経験則からか、未読の作品を見つけるとつい買ってしまう。本書の内容は、著者独特のありそうでなさそうな不思議な仕事のお仕事小説で、今回は他人に裏切られた依頼者の復讐を請け負いその無念を晴らすという探偵の物語。どんな技を使って復讐するのかと思えば、ほとんど何もしないのだが、それでも鮮やかに解決してみせる。他人に対する恨みは恨む側の当人をも傷つけてしまうし、復讐心というものは時間に任せたり心の持ちようでかなり何とかなるということを教えてくれる、清々しい読後感の一冊だった。(「その復讐、お預かりします」 原田ひ香、双葉文庫)
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