書評、その他
Future Watch 書評、その他
パフォーマンス ダメじゃん小出 新春18キップ
ダメじゃん小出の鉄道ネタ単独ライブ。彼のパフォーマンスは10回以上観ているが「新春18キップ」は2回目3年ぶり。お客さんも待ちに待ったという感じで完全に満席で、そのほとんどが私のような高齢者だった。演目は、横浜らしく東横線を事件の被疑者に見立てた捜査会議コントから始まって、色々な電車内で流れる音楽をノコギリを楽器に見立てて再現する小出らしい大道芸、現在開催中の鉄道のヘッドマークのスタンプラリー体験談など盛りだくさんで時間を忘れてパフォーマンスを堪能した。次回は5月開催とのこと、忘れずにチケットを入手したい。
(演目)【演題は私がつけたもの】
①東横(あずまヨーコ)捜査会議
②ミュージックソー
③ヘッドマークスタンプラリー顛末記
休憩
④鉄道ニュース
⑤午前10時の神様
(演目)【演題は私がつけたもの】
①東横(あずまヨーコ)捜査会議
②ミュージックソー
③ヘッドマークスタンプラリー顛末記
休憩
④鉄道ニュース
⑤午前10時の神様
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夜のエレベーター フレデリック・ダール
50年以上前に刊行されたフランスのミステリー。刊行当時欧米では大ヒットし映画化もされた作品ながら、日本では翻訳されていたにも関わらず書籍化されていなかった幻の名作とのこと。事件は、クリスマスの晩にパリ郊外で起きた殺人事件。昔の作品だけに、叙述トリックとか、時間が行ったり来たりとか、語り手が途中で変わるといった最近のミステリーでは当たり前のようなテクニックは皆無で、時系列通りにわずか半日の出来事が語られる。トリック自体は読んでいておおよそ見当がついてしまうような単純なものだが、話が二転三転して行き着く先が何とも物悲しい心に残る作品だった。(「夜のエレベーター」 フレデリック・ダール、扶桑社文庫)
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光のとこにいてね 一穂ミチ
著者の本は2冊目。幼い頃の少しだけ出会った二人の少女がその後も再会や別れを経験し、その中で互いを思いやったり嫉妬したり怒ったりしながら関係を深めていく。人と人との繋がりの深さは、家族とか友人という枠組みや関わりを持った時間の長さとは必ずしも一致しないという話だ。また、主人公たちの境遇や人生の岐路における選択はある意味かなり極端なものだが、誰しもがその中に自分との類似性を感じてしまうところが著者の小説の魅力だろう。自分にはあまり馴染みのない世界の小説だがそれでもこれからますます目の離せない作家だなぁと感じた。(「光のとこにいてね」 一穂ミチ、文藝春秋社)
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くだらないものがわたしたちを救ってくれる キム・ジュン
「線虫」という生き物を対象にして生命の仕組みを解き明かそうと日々研究に没頭する韓国の研究者による一般向けのエッセイ。生物の進化、遺伝、病理などの分かりやすい説明とともに、自身の研究生活の様子が語られる。研究対象に何を選ぶかが研究者にとってはとても重要らしく、「線虫」は、飼育が簡単(何日か放置しても死なない)、小さい(場所を取らない)、一生が短い(失敗してもすぐに立ち直れる)、安い(入手が簡単)などの利点があるとのこと。また、見た目が人と全くちがうという特徴は、大量死させることの罪悪感が小さいという利点はあるものの、人間に直接役立ちそうにないので研究費の確保が困難という難点があるらしい。生物学の歴史で出てくる実験材料が何故えんどう豆とかショウジョウバエなのか、本書を読んでよく分かった。なお、本書の研究生活の記述では研究費の確保に四苦八苦する様子が何度もでてくる。また、ゲノム地図の活用の容易化やオルガノイド技術の進歩などここ数年の世界の研究の成果によって、研究すべきあるいは研究できる事柄が飛躍的に増加しているが、そこに立ちはだかるのがやはり研究費の問題とのこと。韓国や日本は、欧米・中国に比べて研究費の制約が大きすぎて、その格差は広がる一方らしい。日本の研究開発とか基礎研究における多くの問題点を浮き彫りにしてくれる一冊でもある。なおこの本は題名が何だか抽象的なことしか書いていない啓発本のようで、ものすごく損をしていると思う。(「くだらないものがわたしたちを救ってくれる」 キム・ジュン、柏書房)
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変な絵 雨穴
著者の本は2冊目。本書は、事件関係者が残した絵に秘められた謎を読み解くことで事件の真相に迫っていくという趣向のミステリーだ。絵自体がダイイングメッセージになっていたり、書いた人の深層心理を浮かび上がらせたりで、前作よりもバラエティに富んだ内容。本書も前作同様、謎解きはエンタメ要素が強いが、事件そのものはとんでもなく悲惨でやりきれなくなるくらいだ。ひとつ内容とは関係なく気になったのが、このシリーズの一作目と本書で出版社が違うこと。両方とも売れ行きが良い本らしいので、どうして変わってしまったのか少し気になった。(「変な絵」 雨穴、双葉社)
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爆弾 呉勝浩
色々な賞を総なめにしている一冊。読む前から期待は大きかったが、それを超える面白さだった。些細な罪で捕まった容疑者が、警察署内での取り調べ尋問中に都内で起こる時限爆弾事件を次々と予想して的中させる。犯人であることはほぼ間違いないような状況だが、のらりくらりとした態度と言動で取り調べの警察官を翻弄する容疑者。この容疑者と取り調べの警察官とのやりとりが大半を占める内容だが、飽きるどころか著者の話術にどんどん引き込まれていってしまった。さらにその容疑者が過去に起きた警察内の不祥事の関係者の名前を口にすることから事態はさらに混沌としていく。真犯人は誰か、その動機は何か、過去の事件との関係は何か、最初から最後まで息をつかせぬ面白さだった。(「爆弾」 呉勝浩、講談社)
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バカと無知 橘玲
格差の拡大、各種の差別、SNSでの誹謗中傷等、世界中で見られる諸問題について、最新科学の知見を元に解説してくれる一冊。権威を引きずり落として喜ぶキャンセルカルチャーの世界的蔓延、教育の平等を否定するようなダニングクルーガー効果等、色々なことを教えてくれる内容だ。一時期流行りのように言われていた「褒めて伸ばす教育」について、自尊心を植えつければ成績が向上するという考えは因果関係が逆だったのではないかという指摘も説得力がある。本書は6年前に読んだ「言ってはいけない」という本の続編とのこと。前作を読んだ時にも感じたのだが、こうした内容の本がほかにあまり見当たらないのは何故なのか、一体世の中の多くの社会学者や心理学者は何をしているのかという疑問が強く湧き上がる。自分がアメリカにいた頃、ポリティカルコレクトという言葉がしきりに言われていたが、その言葉が揶揄しているものが何なのかよくわかってきたような気がした。(「バカと無知」 橘玲、新潮新書)
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オンライン落語 古今亭駒治
オンラインで古今亭駒治師匠の独演会を視聴。数えてみたら彼の落語をオンラインで聞くのは今回が11回目。多分三遊亭白鳥と並んで最もたくさん聴いている落語家だと思う。演目は、野球、競馬、鉄道などがテーマのバラエティに富んだ新作落語4席だったが、接続が悪くてライブで視聴できたのは後の方の3席、アーカイブもないようなので少し残念。聴けた3席のうち2席は初めて聴く演目で、それぞれ味があって楽しめた。
(演目)
①不明(野球落語?)
②カツノキセキ(競馬落語)
③すももの思い出(駄菓子屋の話)
④鶯の鳴く街(鉄道落語)
(演目)
①不明(野球落語?)
②カツノキセキ(競馬落語)
③すももの思い出(駄菓子屋の話)
④鶯の鳴く街(鉄道落語)
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厄災の絵画 中野京子
古今東西の厄災をテーマにした絵画についてのエッセイ。ノアの大洪水神話から20世紀のスペイン風邪まで様々な厄災を画家がどう表現したのかを分かりやすい解説で教えてくれる。やはりこの時期興味深いのは、ペスト、天然痘、コレラといったいったパンデミックの記述だ。天罰だというナイーブなものから、被害を大きくした原因と思われるものへの痛烈な批判など、そのメッセージは様々だ。著者が最後に記しているように、今のコロナ禍を画家たちが今後どのように表現していくのかとても興味深い。(「厄災の絵画」 中野京子、日経プレミアシリーズ)
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スイーツレシピで謎解きを 友井羊
高校を舞台にしたミステリー。著者の料理を巡る学園ミステリーは2冊目で、本書も前に読んだ作品同様、シュークリームの皮が膨らまないのは何故かとか、ケーキの味がおかしいとか、事件そのものはちょっとした謎なのだが、その裏に潜むいじめや悪意はかなり深刻。スイーツに関するうんちく話として気楽に読める内容ではなく、むしろイヤミスに分類される一冊のような気がした。(「スイーツレシピで謎解きを」 友井羊、集英社文庫)
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人間たちの話 柞刈湯葉
著者の本は4冊目だが、どれも期待通りの面白さだ。本書では、生命とは何かを考えさせられる表題作や、ジョージオーウェルの「1984」のパロディのような「たのしい超監視社会」の2編が印象に残った。また、巻末の「No Reaction」のポップなオチには大笑いした。著者の本全般に言えることだが、物語の面白さと著者の科学的知識に翻弄されてしまい、どこまでが科学的事実でどこからが著者の妄想なのかが判然としなくなってしまう。これがSFの魅力のひとつなんだなぁと実感させられる。(「人間たちの話」 柞刈湯葉、ハヤカワ文庫)
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