書評、その他
Future Watch 書評、その他
音楽会 野呂愛美コンサート
前半はクラシック&自作曲のピアノ弾き語り、後半はシャンソン&カンツォーネと、幅広いジャンルの曲を聴かせるコンサート。固定ファンが多いようで、ほぼ満席。ピアノの弾き語りで紅白出場を目指しているとのこと。高齢者が多い観客の年齢層を考慮してかカンツォーネはジリオラ・ティンクエッティなど60年代のナツメロ。
大相撲 横浜アリーナ場所
横浜アリーナ初の大相撲巡業。8:00開場だったが11:00頃に行って見物。幕下取組をやっていて、その後がアトラクションの相撲甚句、初切。この2つを間近で見られた。当日配られた取組表に横綱白鵬の名前がなかったので、三本締め問題の謹慎で休場かと思っていたら土俵入りに登場、会場が沸いた。それにしても土俵に一番近いタマリ席の狭さには驚いた。イス席にして良かったというのが正直な感想。
パラダイス山元の飛行機の乗り方 パラダイス山元
1日に11回飛行機に乗ったり一年間に1024回乗ったりと、ひたすら飛行機に乗りまくる著者のエッセイ。鉄道ファンがいるように飛行機ファンがいてもおかしくはないが、それにしても明らかにやり過ぎという気がするが、読んでいると何だかそれも有りかもという感じになるから不思議だ。しかも、飛行機に乗るとひたすら機内食を食べまくるという。飛行機に乗ると必ずベルト着用サインが消えると同時に寝ることに心掛け、食事や飲み物は断り、着陸サインが出るまで寝ていられるのを幸せと感じる自分とは正反対の著者の言動に共感する点は全くないが、それでも極端な飛行機愛は読んでいて何故か面白い。少なくとも何かに熱中できる著者が羨ましく、自分も何かそういうものを見つけられたらと思ってしまうのだ。(「パラダイス山元の飛行機の乗り方」 パラダイス山元、新潮文庫)
名古屋駅西喫茶ユトリロ2 太田忠司
「名古屋メシ」を題材にしたコージーミステリーの第2弾。軽く読めるご当地小説で、登場する店の周辺などの感じは良く分かるし、出てくる名古屋メシもだいたい知っているので、今回も気楽に楽しめた。唯一「おこしもん」というお菓子は、名前は聞いたことがなかったが、ネットで画像検索したら、確かに子どもの頃に見た記憶のあるお菓子が出てきて、「あれをおこしもんって言うんだ」と納得。まだまだ名古屋独特の食材は沢山ありそうなので、続編にも期待したい。(「名古屋駅西喫茶喫茶ユトリロ2」 太田忠司、ハルキ文庫)
展覧会 印象派からその先展
印象派からフォービズム、キュビズムまで、抽象派の直前までの作品、画家を網羅した展覧会。各画家それぞれ4〜6枚、バランスよく展示されていた。昔から少しだけ点描の入ったシスレー、ピサロが好きだが、やっぱりこの2人が良かった。
落語 春風亭ぴっかり☆林家つる子二人会
女流人気落語家の二人会。前半が春風亭ぴっかりの新作落語2本で、後半が林家つる子の古典落語一本。新作のうち1つは先日聞いたばかりの春風亭白鳥作「任侠流山動物園シリーズ」からの一本。落語の合間の2人の掛け合いが面白かった。また林家つる子は鬼気迫る語りで風格のようなものを感じた。
音楽 甲斐よしひろ
自分の学生時代によく聞いた甲斐よしひろのライブ。吉田拓郎よりも少しだけ黒い楽曲、声、演奏が魅力。今日はステージ横の一番前の席で堪能。新旧バランスの良い選曲でアンコールを含めて11曲中知っている曲が3曲。満席でやはり同世代の人が多いが、親子連れや若い人も結構いた。ノリノリのステージで、個人的にも落ち込むことがあっのだが少し元気が出た。本当にカッコいいスーパースターだ。
もっと言ってはいけない 橘玲
昨年のベストセラーの第2弾。知能と遺伝の関係についての最近の色々な科学的成果や発見を紹介しつつそれが意味するところを腹蔵なく語るという内容は前作と同じ。人種と居住地域別の知能指数の平均値の一覧表が掲載されていて、その内容と同時に、この分野の研究が「タブー」のように言われながらもここまで進んでいるという事実に驚かされる。本書の肝は、ある地域に住むある人種の知能指数は「その人種の長い歴史」を基礎にしつつも、その地域の「緯度(住みやすさ)」「人口密度(人との接触の多さ」「経済基盤(狩猟か農耕か)」などによって「極めて短期間で変化する」ということだ。白人中心社会のアメリカという逆境の中で知能は白人と同じ程度とされるアジア人が経済的に成功している背景、知能の高さイコール幸福な生活とは限らない現実などの解説はとても考えさせられる。(「もっと言ってはいけない」 橘玲、新潮新書)
ロシアとアメリカどちらが本当の悪か 高山正之
今回は、いつもの中国韓国に加えて、過去の自国の黒い歴史を棚に上げて綺麗事を言うアメリカが標的に。あまり過去を腐してもと思うところもあるが、本書を読み進めていくと、確かにそういう面はあるという気になってくる。それにしても、著者は米中韓に関する黒い歴史の在庫をどのくらい持っているのか。著者はそれを小出しにしているが一度全部を時系列の一覧データにして欲しい。何度も過去を掘り返すのは著者が最も嫌う手法のような気がする。(「ロシアとアメリカどちらが本当の悪か」 高山正之、新潮文庫)
能スポ 能町みね子
関東各地の風変わりなスポットを街歩きするエッセイ集。目的地は色々だが、そのばしょのセレクトと文章がとにかく面白いのは前作通り。鶴見線沿線や横浜中村町などの家の近くもあれば、新宿とか東長崎など少し電車に乗れば行けるところなどもあり、とにかく直ぐに行ってみたくなるところばかりだ。本書においても、著者の言葉の選び方の的確さ繊細さには改めて感心させられる。また、番外編の今はなきJR岩泉線の全駅踏破の旅は言葉に尽くせないほどの面白さだ。(「能スポ」能町みね子、講談社文庫)
モダン 原田マハ
ニューヨーク近代美術館ーMomaで働く人たちを描いた短編小説集。彼らの日常と2001年の同時多発テロ、2011年の東日本大震災という2つの出来事が絡みながらストーリーが展開していく。彼らの自分で企画した展覧会への熱い思いが伝わってくるという同時に、美術館のキュレーターの仕事がどういうものか、1つの展覧会が実現するまでにどういう苦労があるのかなどを自然と学べるのが嬉しい。(「モダン」 原田マハ、文春文庫)
麦本三歩の好きなもの 住野よる
20代の図書館員の女性の日常を描いた著者の最新作。読み終えて、本作はこれまでの著者の作品とは少し趣が違う気がした。どう違うかは説明が難しいのだが、何かこれまでのような誰もが共感できるテーマの普遍性が後退し、読者を選ぶようなかなり私的な分野に足を踏み入れてしまっているような、しかも自分はその中に入れてもらっていないような感じがしてしまった。本作が、たまたま意図的にターゲットの読者層を定めた作品だったのか、今後著者の作品がこういう感じになっていくのか、次の作品はそれを見極めるものとなる気がする。(「麦本三歩の好きなもの」 住野よる、幻冬社)
ローマへ行こう 阿刀田高
著者の本は学生時代に何冊か読んで面白かったという記憶がある。久し振りに著者の本が本屋さんで平積みになっているのを見かけたので読んでみることにした。読んだ感想は何もかもがレトロっぽいということだ。登場人物の名前、考え方、ストーリー、出てくるアイテム、文章そのもの、全てが最近書かれた小説とは違うレトロな感じを醸し出している。巻末の「初出誌」を見ると書かれたのはいずれもここ10年のことで、ことさら古い作品を集めた訳でもないらしい。また、本書の短編は、結末がはっきりしないものや不思議が不思議のままで終わるものばかり。「余韻を残して読者に解釈を委ねる」と言えば聞こえは良いが、ちゃんとしたオチがなくて良いのであればいくらでも物語は作れるといった批判は避けられないだろう。人気作家の小説であればそれでもニーズがあったという時代の遺物かもしれないが、逆に常に新しいサプライズを求めて疲弊してきている出版業界へのアンチテーゼと言えるかもしれない。(「ローマへ行こう」 阿刀田高、文春文庫)
本屋大賞の結果
本屋大賞は「そして、バトンが渡された」。数年ぶりにノミネート作品全部を読むのをやめたら、未読の作品が受賞した。ちょっと残念な気もするが、本命と対抗に推した作品がそれぞれ2位3位だったので、そのことはちょっと嬉しい。
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