書評、その他
Future Watch 書評、その他
オンライン漫談 月刊ワンコイデ第5号
大好きな「ダメじゃん小出」のオンライン漫談。1月の横浜にぎわい座での公演を楽しみにしていたが、緊急事態宣言の発出で自粛せざるを得なかったので、待ってましたという感じだ。やはりこんな時はオンラインが本当に有難い。今回のテーマは「働くおじさん」。内容はコロナ禍の昨年4月から学童保育の非常勤先生になったということでその体験談だが、子どもたちの前で漫談をするわけではないだろうが、とにかく毎日彼の話を聞ける子どもたちが羨ましいというのが正直な感想。この月刊ワンコイデは正味30分で気軽に聞けるのはありがたいが、もっとじっくり聴きたい気もする。
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スマホ脳 アンデシュハンセン
スウェーデンの精神科医によるスマホ依存の恐ろしさを教えてくれる一冊。世界中の脳科学や臨床実験を元にスマホが人に与える悪影響や、その悪影響を軽減するためにちょっとした運動をすることが大切だということを具体的にわかりやすく教えてくれる。スマホを机に置くことを許可するかしないか、朝に少しだけ体を動かす習慣を取り入れるかどうかでテスト結果が大きく異なるという実験結果などはかなり衝撃的だし、IT企業がどのようにして人々の注意力や集中力を散漫にさせるようにしているかなどは読んでいて非常に怖くなってくる。自分のためにも次世代のためにもとても参考になる内容だった。(「スマホ脳」 アンデシュハンセン、新潮新書)
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元彼の遺言状 新川帆立
今年の「このミステリーがすごい大賞」受賞作。帯に書かれた推薦文を読むと、主人公のキャラに惹かれたという意見や緻密な構成がすごいという感想など沢山の賛辞があって、読む人によって色々な魅力を感じさせる作品だということがわかる。自分としては、かなり複雑な構成と登場人物の多さにもかかわらず、スピード感を持って読ませ続け最後にちゃんと納得させてもらえたなぁという感じだった。主人公のキャラだけで十分楽しいので、続編も多分楽しく読めると思う。(「元彼の遺言状」 新川帆立、宝島社)
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B級グルメで世界一周 東海林さだお
世界各地の料理に関するエッセイ集。週刊朝日に連載されたこれまでのコラムをアジアオセアニア、アフリカ、ヨーロッパなど地域ごとにまとめたもので、古いものだと30年以上前のものとのこと。それだけ古いとさすがに、当時はちょっと珍しかった料理が今はごく一般的なものになっているという具合に、日本の食卓事情の変化を感じさせたりして、かえって面白かった。
(「B級グルメで世界一周」 東海林さだお、ちくま文庫)
(「B級グルメで世界一周」 東海林さだお、ちくま文庫)
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ブロークンブリテンに聞け ブレイディみかこ
2018年3月から2020年9月に雑誌に掲載されたエッセイをまとめた一冊。EU離脱、王室の色々なスキャンダル、コロナによるロックダウンと、イギリスが大きく変貌していく様をバラエティに富んだ話題をベースに解説してくれる内容だ。特にEU離脱とコロナ禍によってイギリスの古い階級概念が崩壊して新しい分断が深まっているという指摘は著者ならではのものだし、そうしたシリアスなテーマと対極にある「エモジ」の話はユーモアの殻を被っているが昨今のイギリスの変貌を如実に表しているようで興味深い。(「ブロークンブリテンに聞け」 ブレイディみかこ、講談社)
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無脊椎水族館 宮田珠己
全国の水族館で展示されている無脊椎動物や変な魚の解説とその写真からなる一冊。とにかくそれらの姿が奇妙すぎて驚きの連続。どうしてこんな姿になってしまったのか不思議でならないし、生物の進化とは一体何なのかを考えさせられてしまう。「ヒトデは足が多いほど凶暴」とか「カブトガニには眼が7つ」といったなんとも言えないトリビアも満載で楽しい。著者の「近頃人気のダイオウグソクムシの奇妙さに驚いている場合ではない」という意見にも深く納得。著者は前に読んだ本で「海岸で石ころを拾う」ことの楽しさを教えてくれたが、著者の石ころ趣味と無脊椎動物趣味、どちらが先だったのかが気になるところだ。(「無脊椎水族館」 宮田珠己、本の雑誌社)
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マンガ認知症 佐藤眞一
認知症の専門家と認知症患者の介護を経験したことのある漫画家の合作による解説本。マンガの部分は事例紹介のような形でそれを専門家が詳しく解説してくれていて、認知症とは何か、認知症の典型的な諸症状、介護側の心構えと実際のポイントなどを分かりやすく教えてくれる。何となくそうだろうなぁということを専門家の文章ではっきり言ってもらえることで、介護側の身体的精神的負担が随分軽くなるような気がする。自分の親の介護ばかりでなく、自分自身もいつ認知症になるかもしれないという状況で、色々考えさせられる一冊だった。(「マンガ認知症」 佐藤眞一、ニコニコルソン、ちくま新書)
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サキの忘れ物 津村記久子
大好きな作家の最新短編集。全く関連のない短編が9つ収録されているのだが、何か一つのくくりでは説明できない、これらの作品全部で著者自身ですという感覚になる独特の世界だ。真っ当だが何かに踏み切れないもどかしさを醸し出す主人公、どこにでもいるなぁと思ってしまう嫌な奴という構図の話が多いのはいつも通りだが、本作を読んで気づいたのはその主人公たちが何かを凝視していること、何かに耳を澄ませていることが多いということだ。それこそが作家というものの本質であり、作家自身の世界を見せてくれる源泉なのだと感じた。収録された短編の中では最後まで正体が明かされない「行列」、ハラハラドキドキの「隣のビル」が特に印象的だった。因みに「真夜中をさまようゲームブック」はおそらく最短コースだったんじゃないかと思うが、それも作者の策略なのだろうか。(「サキの忘れ物」 津村記久子、新潮社)
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奇界紀行 佐藤健寿
写真家のによる写真と文章からなるエッセイ集。とにかく世界中の奇妙な景色や建物などの写真が満載で、写真を見ているだけで楽しいし、誰かに「これ見て見て」と言いたくなる。文章と写真の対応が全く書かれていなので、この記述に対応する写真はどれだろうとか、この写真について書かれているのはどこの文章だろうとか考えてしまい、ややもどかしいところはあるが、写真が凄すぎるのでまあしょうがないかなという気分にすらなってくる。風景や建物だけでなく、チェルノブイリの現在の様子とかエスキモーの食事風景とかの写真もかなり衝撃的だった。(「奇界紀行」 佐藤健寿、角川文庫)
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アンパンの丸かじり 東海林さだお
おなじみのシリーズ。シリーズの半分くらいしか読んでいない気がするが、どれを読んでいてどれを読んでいないかは自分でもこのブログの記事検索が頼りという状況。既読でないのを探して時々読むのが楽しい。今回も未読のものでネット書店で在庫ありを探してきて購入。読み始めると、東日本大震災直後に書かれたものだった。今回面白かったのは、豊富なメニューのビアホールで最もビールに合わないツマミを探す話、災害用の非常食だけでフルコースの食事が楽しめるかの検証など。空弁体験記もなるほどなぁという感じで面白かった。(「アンパンの丸かじり」 東海林さだお、文春文庫)
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どもる体 伊藤亜紗
聴衆として参加したビブリオバトルで出会った一冊。本書は「吃る」という行為に関して分かっていること、分かっていないこと、表面的な事象の裏にある独特で多様な事情などを多角的に教えてくれる解説本なのだが、読んでいるとそれが単純に治るとか治らないとか言えるようなものではないことがわかってくるし、そうかと言って「個性」と割り切ることもできない曰く言いがたいものであることも分かってくる。本書で紹介されている「連発→難発→言い換え」「工夫→乗っ取り→自動化」という対処法と新たな問題の連鎖を示す2つの図式はとてもわかりやすく記憶に残る。(「どもる体」 伊藤亜紗、医学書院)
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汚れた手をそこで拭かない 芦沢央
自分のブログを検索してみる著者の本は8冊目ということだが、そんなに読んでいるかなぁという感じがする。多分読むたびに色々な面を見せてくれるものの、その通底に流れている独特の雰囲気が著者独自のものなのでそんな感じになるのかもしれない。それと、この著者の作品は読むたびにもっと読みたくなる気がする。短編5つが収録された本書は、全部ではないが「何かをを取り繕おうとして事態をさらに悪化させてしまう」という怖い話が並んでいる。題名の意図が見えてきたところで5作目終了となり、今回ももう少し読みたいなぁと感じてしまった。個人的には、自分の失敗を子どものせいにしようとあがく小学校の先生の話が、悪あがきは所詮無駄という教訓が強烈で印象的だった。(「汚れた手をそこで拭かない」 芦沢央、文芸春秋)
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たかが殺人じゃないか 辻真先
年末恒例の色々なミステリーランキングで2020年のナンバーワンに選ばれている一冊。著者の年齢が88歳という高齢なことも話題になっているらしい。著者については全く知らなかったが、舞台が馴染みのある名古屋ということもあり、とりあえず読んでみた。内容は、戦後まもなくの名古屋の新制高校を舞台にした本格ミステリー。本格ミステリーの部分は特にどうということはないが、本書の真骨頂は、何と言っても終戦後の地方都市の混乱と復興、終戦を境にした価値観の180度転換に右往左往する人々の様子が克明に描かれていることだ。著者の略歴をみると名古屋出身とあるし、ちょうど主人公の年齢とも重なっていて、まさに著者自身の体験と重ねて書かれていることがわかる。名古屋と縁のある自分としては、栄町とか武平町とか大曽根とか名古屋市民にはお馴染みの地名が沢山出てくるし、小学校の時に社会で習った100メートル道路建設などの話もあって、よみながら、自分の生まれるほんの10年前日本はこんなだったんだという思いが募った。
(「たかが殺人じゃないか」 辻真先、東京創元社)
(「たかが殺人じゃないか」 辻真先、東京創元社)
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京都深堀さんぽ グレゴリ青山
どんな本か全く調べずにネットで購入したら、京都出身の漫画家による京都の穴場案内という感じの本だった。数年前にベストセラーになった「京都ぎらい」を読んでから、京都人の発言や文章に接するとどうしても京都人の「上から目線」や「陰湿な仲間意識」がその発言や文章に潜んでいるのではと邪推してしまうようになり、今回もそんな気分にさせられるのかなと心配したが、本書に関してはそれがなかったので面白く読むことができた。「京都人は餃子が好き」という場面でも「京都人は意外と庶民的なものが好きでしょ」という感じでは書かれていなかったし、「山科は京都か」というくだりもごく自然に書かれていて「またやっている」という感じではなかった。色々なお店や商店街の紹介も、それほど美味しそうなものでも取り立てて珍しいものではなく、どんな地方にもありそうなものばかりで、特別感のないところがかえって京都案内として新鮮だった。(「京都深堀さんぽ」 グレゴリ青山、小学館文庫)
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2020年のベスト10
昨年は、コロナで家にいることが多く本を読む時間もたくさんあったはずなのに、読んだ本の冊数は逆に大幅に減少し、2010年以降で最も少なくなってしまった。オンライン落語を聞いたりゲームをする時間は逆に増えていると思うし、購入した本の数もあまり変わっていないので、一番の原因は本屋さんに行く機会がなくなってしまい見つけた面白そうな本を今読みたいという意欲が損なわれてしまったからではないかと思う。その結果、未読の本がどんどん積み上がってしまっている。そんななかで昨年のマイベスト10を考えてみた。
①法廷遊戯 五十嵐律人
②流浪の月 凪良ゆう
③熱源 川越宗一
④メインテーマは殺人 アンソニーホロヴィッツ
⑤カラスの教科書 松原始
⑥パラスター 安倍暁子
⑦番号は謎 佐藤健太郎
⑧息吹 テッドチャン
⑨武漢日記 方方
⑩透明人間は密室に潜む 阿津川辰海
①と⑩は新人作家のミステリーだが、とにかく両方ともすごい作家が現れたなぁと感心してしまった。今一番次の作品が読みたい2人。②はライトノベル出身の作家だが、これまで読んだ3冊が全て面白かった。③は自分の祖父がアイヌ研究家だったという個人的な思い入れもあり夢中で読んだ。④は今年一番の海外ミステリー。⑤は鳥類学者の解説本だが、鳥類学者の書いた文章は面白いという説が本当だなと思った一冊。⑥は書評誌で2020年の年間ベストワンで確かに面白かった。話が東京オリンピック前までなのでオリンピックが延期になった後の続編がとても気になる。⑦はトリビア満載でとにかくへぇそうだったのかの連続だった。⑧は海外SFで一番面白かった。⑨はロックダウン下の武漢の様子を伝える内容。コロナについて多角的に見る材料をいっぱい教えれくれた。
2010年132,2011年189,2012年209,2013年198,2014年205,2015年177,2016年218,2017年225、2018年211、2019年155、2020年128
2020/12/31
読んだ本 2355
観劇など 127
①法廷遊戯 五十嵐律人
②流浪の月 凪良ゆう
③熱源 川越宗一
④メインテーマは殺人 アンソニーホロヴィッツ
⑤カラスの教科書 松原始
⑥パラスター 安倍暁子
⑦番号は謎 佐藤健太郎
⑧息吹 テッドチャン
⑨武漢日記 方方
⑩透明人間は密室に潜む 阿津川辰海
①と⑩は新人作家のミステリーだが、とにかく両方ともすごい作家が現れたなぁと感心してしまった。今一番次の作品が読みたい2人。②はライトノベル出身の作家だが、これまで読んだ3冊が全て面白かった。③は自分の祖父がアイヌ研究家だったという個人的な思い入れもあり夢中で読んだ。④は今年一番の海外ミステリー。⑤は鳥類学者の解説本だが、鳥類学者の書いた文章は面白いという説が本当だなと思った一冊。⑥は書評誌で2020年の年間ベストワンで確かに面白かった。話が東京オリンピック前までなのでオリンピックが延期になった後の続編がとても気になる。⑦はトリビア満載でとにかくへぇそうだったのかの連続だった。⑧は海外SFで一番面白かった。⑨はロックダウン下の武漢の様子を伝える内容。コロナについて多角的に見る材料をいっぱい教えれくれた。
2010年132,2011年189,2012年209,2013年198,2014年205,2015年177,2016年218,2017年225、2018年211、2019年155、2020年128
2020/12/31
読んだ本 2355
観劇など 127
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